世界初・イスラエルでコロナ第5波想定シミュレーション 2021.11.12

デルタ・ドリルにおけるベネット首相Haim Zach (GPO)

日本でも新しく成立した岸田内閣が第6波に備えた対策を急いでいるが、イスラエルでも規制緩和が続く中、第6波に備えたシミュレーション、“デルタ・ドリル”が行われた。世界でも初の動きである。

イスラエルのコロナ現状と規制緩和の実際

イスラエルでは、9日のデータで、ブースターワクチン3回目接種を終えた人が、400万人を超えた。2回終わった人は、570万人。感染は減少を続けており、現時点での重症者は、148人にまで減少している。各地の病院は再びコロナ病棟を閉鎖する方向にある。

ガリラヤ医療センタースタッフ

コロナ中枢病院の一つとして活躍してきたガリラヤ医療センターでは、コロナ病棟が4つあったが、そのうちの最後の病棟をここ数日のうちに消毒、閉鎖する見込みだという。

ナハリヤの病院では453人を治療してきたが、その半数はアラブ人であったとのこと。第4波だけで64人を看取っているが、こちらも、冬にむけて、コロナ病棟を閉鎖し、一般病棟に戻すことになっている。

www.timesofisrael.com/after-beating-back-4th-wave-galilee-hospital-jubilantly-closes-last-covid-ward/

社会全体での行動規制も徐々に緩和されている。屋外での集会は制限を解除し屋内での制限も緩和された。エルサレムアッセンブリーでは、全員が集まっての礼拝(200人程度)ができるようになったことから、オンラインでの同時配信は停止となった。

海外からの旅行者も11月1日から始まっている。ワクチン接種を2回、終えている人からなるグループ(40人まで)は、カプセルでの移動を条件に、隔離なしに旅行を楽しんでいる。ワクチン接種の条件について、当初は、2回目接種が終わって半年以上経過している人は、3回目接種を条件としていた。

しかし、それでは、実際にイスラエルに旅行で来ることのできる人はかなり限られるとの声も出て、最終的には、2回まで接種が終わっていれば、入国を可能としたのであった。個人の旅行者についても、条件つきで認めるとのことであったが、実際どうなっているのかは、まだ明らかな情報はない。

www.timesofisrael.com/israel-okays-entry-of-tour-groups-without-third-vaccine-dose-under-restrictions/

さらには、先月ベネット首相がロシアのプーチン大統領と会談した際に約束した通り、今月中旬から、ロシア製ワクチンのスポートニクによるワクチンも承認する。スプートニクは、WHOもまだその有効性を確認していないワクチンである。

第6波に備えたデルタ・ドリル

上記のように、イスラエルでは、外国人の入国にもかなり開放する方向にある。しかし、欧米では感染が再び拡大の勢いを見せている。特にドイツでは11日、1日の感染者が5万人を超え、これまでの最高を記録した。

こうした中で、イスラエルでは、外国人観光客の流入を認める“開国”に進んでいるわけである。イスラエルは、11日、ベネット首相の指示で、最悪のシナリオ、第5派到来にむけた全国レベルのシミュレーション・ドリルを行なった。

このドリルは、ウイルスを監視する科学者たちの情報に基づき、新たな動きが出てきた際には、政府と軍、医療機関が協力し、統一した動きの中で、感染拡大を最小限に抑えられるよう、準備しておくことである。シミュレーションは、今のデルタ株パンデミックの次ということで、「オメガ・ドリル」と名づけられた。

司令室はエルサレムに置かれる。新たな変異株の登場が見られると、規制、隔離、教育や移動の制限にむけた決断の流れや、国内のあらゆる政府高官たちの動きを想定。指示系統を決めておく。現場を統制するのは軍である。

ベネット首相は、「まだ次の変異株が出てきているわけではないし、出てこないことを希望する。しかし、デルタ株が突然現れたように、もっと感染力があり、今のワクチンが効かないようなウイルスが出てくるかもしれない。だからそれに備えておくのだ。」と語った。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/israel-holds-national-drill-to-prepare-for-future-covid-variants/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。