IDFとの衝突でパレスチナ少年(12)死亡:葬儀中にも死者 2021.7.30

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西岸地区の衝突続く

西岸地区でパレスチナ人とイスラエル軍との衝突が続いている。

28日、西岸地区、ヘブロンとベツレヘムの間に位置するパレスチナ人居住地ベイト・ウマールで、複数のパレスチナ人が、街の入り口付近にあるイスラエル軍駐屯地の周辺に、穴をほって何かを埋めている様子がみられた。その後、パレスチナ人たちは車で去っていった。

イスラエル軍が何を埋めたか、確認に行くと、ビニールに入った新生児の遺体が埋められていた。その後、同じような車が来たため、兵士たちは、逮捕しようとして威嚇射撃したところ、車が逃走したため、兵士が車に向かって銃撃を放った。

ところが、この車は、新生児を埋めた者たちの車ではなく、子供3人と父親の車であった。イスラエル軍の銃撃で、モハンマド・アル・アラミ君(12)が負傷。パレスチナ自治政府保健省の発表によると、モハンマド君は、搬送先の病院で死亡した。

モハンマド君の葬儀は、ベイト・ウマールで29日に行われた。しかし、その最中に、この時にも近くにいたイスラエル兵への投石から暴徒になり、イスラエル軍は、催涙弾、ゴム弾など実弾よりは致死能力が低い武器で対応した。空中への威嚇射撃も行った。しかし、この時の衝突で、パレスチナ人がまた1人死亡した。

死亡したのは、シャウカット・カリル・アワッドさん(20)ヘブロン周辺では、最近、種族間での抗争が頻発しており、治安がかなり悪化しているというう。それに関係するかどうかは不明だが、イスラエル軍との衝突も増えており、ヘブロンとその周辺での死者は4人に上っているという。

この葬儀での衝突で、葬儀も妨害され、用意されたテント内はめちゃくちゃになったという。モハンマド君の父親ムアヤド・バハッド・アル・アラミさんは、「モハンマドは死んだが、私も死んだのだ。」と深い悲しみを語っている。

ムアヤドさんは、イスラエル国内で働く許可証を持っているが、息子がイスラエル兵の銃撃で死亡した後は、この許可を失うことになる。うらみをもっている父親は危ないと判断されるからである。

イスラエル軍は、この一連のことについて調査をすると言っているが、兵士が罰せられることはほぼないとみられる。イスラエル兵は、パレスチナ人が憎くてころすわけではないのだが、紛争地帯ではこういう事態にもなってしまう。憎しみの連鎖が終わらないということである。

www.timesofisrael.com/palestinians-say-man-shot-dead-in-clashes-during-funeral-for-boy-killed-by-idf/

シーカ・ジャラのパレスチナ住民撤去裁判は延期か

5月中、イスラエル国内のアラブ系市民との間に紛争となり、またガザとの紛争のきっかけにもなったのが、東エルサレムのシーカ・ジャラの住民立退問題である。この住民たちの立ち退きが法的にも決定し、立ち退き支持が出るとみられる裁判は、紛争後に遠近されたが、それが来週火曜に予定されている。

対象となるみこみのパレスチナ人は4家族。しかし、不安定なパレスチナ情勢から、ベネット首相は、6ヶ月は延期するとみられている。

www.timesofisrael.com/bennett-govt-weighing-6-month-delay-for-sheikh-jarrah-verdict/

石のひとりごと

バイデン政権、またベネット政権、さらにはパレスチナ自治政府もイスラエルとの交渉再開に前向きだと言われている。

しかし、こうしたパレスチナ人との衝突は、イスラエルを攻撃する正論として利用され、ヒズボラや、ハマスからの攻撃、国内アラブ系市民の暴動や、国外の極左のイスラエル攻撃に利用される可能性になる。対処は慎重にならざるをえないだろう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。