1日感染者1348人:重症者113人:厳しいジレンマに立つ政府 2020.7.9

コロナ内閣の会議 出展:Koby Gideon (GPO)

イスラエルでの感染拡大は、重症者、死者も増え始めて、もはや収拾がつかない様相になりはじめた。医療機関への重圧が増加して、検査数もこなしきれなくなりつつある。

一方、政府は、ロックダウン寸前といいながらも、経済の疲弊からロックダウンすることはできず、感染が進んでいる9地域の一時封鎖を検討していると報じられた。しかし、地域の反発もありで、それもまだ実施できないでいる。

市民からは、政府の政策のまずさへの批判や、訴えるとの声も上がり始めている。加えて、8日、「政府はもはや私の進言を必要としていない。」として、保健省のシーガル・サデツキー保健部長官が辞任を表明した。

www.timesofisrael.com/top-health-ministry-official-quits-warns-israel-heading-down-dangerous-path/

さらには、リブリン大統領も政府に明らかの方針が見えないと政府を批判する声明を出した。

www.timesofisrael.com/rivlin-criticizes-government-for-lack-of-clear-coronavirus-doctrine/

新規感染者・重症者急増

イスラエルでは先週から1日の感染者が1000人を超えている中、7日、24時間で1348人とこれまでで最多を記録した。これにともない、症状が出ている患者は、1万4875人と急増。重症者も、7日は86人であったものが、8日夜には113人と急増している。

重症者の中で人工呼吸器依存者は、39人。死者は、1日に2−4人増えており、8日で344人となった。

*ベニー・ガンツ防衛相隔離へ

8日、ベニー・ガンツ防衛相が、自主的に隔離に入った。日曜に、一緒にいた家族の一人が後に陽性であることがわかったからである。ガンツ氏自身の健康に問題はなく、隔離した場所からの執務は継続する。

なお、土曜からは、警察を束ねる国内治安省のアミール・オハナ氏も、自主的に隔離に入っている。濃厚接触者には入らないものの、連絡を取り合うことの多い国境警備隊総司令官が陽性であることがわかったからである。しかし、オハナ氏の検査結果は陰性であった。

www.timesofisrael.com/gantz-enters-quarantine-after-coming-into-contact-with-coronavirus-carrier/

封鎖前に脱出する住民:ベイタル・イリット

エルサレム南部に位置する、西岸地区入植地のである超正統派の町、ベイタル・イリットでは、住民6万人のうち、280人の感染が明らかとなった。住民の16%が感染していることになるが、これは全国平均の倍以上である。

このため、政府は、8日午後1時からこの地域を1週間の予定で封鎖すると発表した。すると、それまでにこの地域を脱出しようとする住民たちの車で、長い渋滞が発生した。

住民たちは、ほんの一部の感染者ファミリーのために、町全体を封鎖することに反発している。ベイタル・イリット住民のダナ・ヴァロンさんは、「閉鎖は、感染を悪化させるだけだと思う。」と語った。

www.ynetnews.com/article/B1u4WB7kP

ベイタル・イリットのメイール・ルービンステイン市長も、封鎖には反対を表明。感染している人だけを市から(医療機関などへ)出す計画があると述べた。これについては、政府が合意しなかった。

www.jpost.com/breaking-news/beitar-illit-mayor-against-lockdown-will-turn-us-into-a-covid-19-hotspot-634234

*マスク着用監視の警察と住民のトラブルも

政府が厳しくマスクの着用を監視しはじめたので、住民と警察の衝突もあった。ホロン在住のデービッド・ビトンさん(24)は、マスクをしていないということで警察に暴力的に連行され、留置所に5日間、入っていたと国会で表明した。その様子はSNSでもアップされている。

警察はビトンさんが、職務質問の際に、身分証明を出さなかったからだと反論している。

www.timesofisrael.com/man-says-he-was-beaten-by-police-and-jailed-for-four-days-for-not-wearing-mask/

新たに9地域封鎖案:反発で実施できず

ネタニヤフ首相は、これ以上感染が広がる場合は、再びロックダウンになると言っていたが、経済の悪化から、ロックダウンは難しいといえる。そのため、政府は、感染が急増している9地域を短期的に封鎖する案を、コロナ国会委員会に提案した。なお、現時点でも複数の一部の町は封鎖におかれているので、あらたに9地域ということである。

9地域とは、エルサレム、ブネイ・ブラック、ラナナ、モデイーン・イリット、ベイト・シェメシュ、キリアット・マラキ、ロッド、ラムレ、アシュドドとなっている。

www.jpost.com/israel-news/coronavirus-restrictions-nine-cities-on-committees-scope-amid-spike-634389

しかし、それぞれの市長は、それぞれの状況により、どのように封鎖を実施するかを検討しているが、一部を封鎖するという町や、封鎖継続の指示を守らない方針を打ち出す町など、様々である。要は、政府が、経済を優先して政策を打ち出していないので、地方がそれぞれの考えを出すという、日本と同じ様な様そうになっていると思っていただいたらよい。

9都市の封鎖は9日から施行される予定であったが、8日夜に話がまとまらず、結局封鎖はまだ実施されていない。

www.jpost.com/israel-news/coronavirus-restrictions-nine-cities-on-committees-scope-amid-spike-634389

医療機関圧迫・検査数削減避けられず?

イスラエルでは、無症状の人が感染を拡大しているとして、膨大な数のCOR検査が日々行われている。有症者はいうまでもなく、濃厚接触者も全員けんさするので、感染者が増えているということはそれだけ検査を要する人の数も増えているということで、6日の検査数は、2万5127件にのぼった。

これはエデルステイン保健相の指示なのだが、保健所にあたる機関が、人手がもう限界だとチェジー・レビ保健省長官に陳情したとのこと。

イスラエルでは、たとえ陰性の結果が出ても、それから14日間は自宅隔離しなければならないため、そういう人々全員に検査をする必要があるのかとの声が出ている。

www.timesofisrael.com/health-ministry-said-set-to-reduce-testing-as-system-overwhelmed-by-outbreak/

一方で、30分である程度の結果がでる検査キットが開発されたので、これを利用し、世界にも販売する時ではないかとの声もある。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。