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イスラエルでは、先週から全国の学校を中心に、24時間の新たな感染者が毎日100人を超えるようになっており、新型コロナの第二波が懸念されている。
こうした中、これまでのコロナ対策で、司令塔路して先手を打つ対策を指揮してきたバル・シモン・ドーブ長官が辞任。次にチェジー・レビ長官に引き継がれる予定となった。
また、次なる感染の波に向けて、ネタニヤフ首相とガンツ氏が合意の上で、警察が感染予防対策を監視できる法案、緊急コロナ特措法案を国会に提出した。成立すると、警察が個人宅にいきなりはいって、感染予防を行っているかをみて、守っていない場合は逮捕もできるという法案である。
まだ法案にすぎないが、人権があやぶまれるとして、テルアビブでは、大きなデモも発生した。
24時間感染者最大133人へ急増:学校幼稚園90校以上休校
イスラエルでは、感染者数がいったん落ち着いてから先週、再び増加に転じて第二波かと思われる事態になっているが、保健省によると、5日(金)1日の感染者数が133人と、先週増加しはじめてからの1日の増加数としては、最大を記録した。
現時点で、陽性のまま患者と数えられる人は2227人。重症者は30人で、このうち23人が人工呼吸器に依存している。こうした重傷者が次々と死亡していっており、現時点での新型コロナによるイスラエル人の死者は、291人である。
この二度目の感染者増加は、主に大学を除く中高生、小学校、幼稚園の間で拡大しており、5日までに304人の教師、学生の陽性が確認され、90校以上が休校になっている。これにともない、濃厚接触者で感染疑いとされ、自宅隔離になっている人は1万3000人を超えた。
感染者が増加していることを受けて、エデルステイン保健相は、濃厚接触者は、症状がなくてもすべて検査する方針を固めた。HMO(日本で言えば保健所)が、ドライブスルーなどで、日々1万から1万3000人のPCR検査を行っているが、マンパワーはぎりぎりだ警告を発している。
保健省は、感染は学校だけの問題ではないとして、第二波を食い止めるために、全国一斉休校を推奨している。
しかし、感染者数は多くても今の所、重症化する人や死者はでていないことから、ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント教育相は、一人でも陽性者が出た学校は休校にするとの方針は継続しながら、今の所、全国一斉休校の必要はないと判断している。また、学校以外の経済活動の規制解除は予定通りすすめられている。
www.timesofisrael.com/133-new-infections-reported-over-past-day-5-more-schools-closed/
アラブ統一政党議員感染で国会一時休会
アラブ統一政党のサミ・アブ・シャヒダ議員の運転手が、新型コロナ陽性であることが判明。シャヒダ議員と、アラブ統一政党議員のほとんど全員は1日から自主隔離を行っていた。しかし、3日夜、シャヒダ議員が陽性であることがあきらかになった。
このため、クネセト(国会)は、4日に予定されていた会議をすべて延期とし、関係者の不要不急意外は、国会に来ることを控えるよう指示した。しらべによると、感染が判明する前、シャヒダ議員は、複数のミーティングに参加していたが、パーソナル・ディスタンスのルールなどを守っていなかったという。
www.ynetnews.com/article/SknoHZLhL
このほか、首相府の職員で、先週土曜、ネタニヤフ首相の記者会見を準備していた技術者が、新型コロナに陽性であることが判明。一時ネタにタフ首相も3度目の隔離になるかとも懸念されたが、その後ニュースがないので、首相は陰性であったものと思われる。
保健省長官交代:チェジー・レビ保健省長官推薦
3月から5月にかけての新型コロナウイルスとの戦いを導いたモシェ・バル・シモン・トーブ保健省長官は、5月12日、イスラエルは他国のような惨状からまぬかれることに成功したとの達成感を表明し、長官の任務を終えると発表。これからは、新しい保健相と保健省長官に期待すると述べた。
www.timesofisrael.com/health-chief-who-led-israels-response-to-pandemic-announces-resignation/
これを受けて、新政権のエデルステイン保健相は、アシュケロンのバルジライ病院長のチェジー・レビン教授(64)を保健省長官に推薦。政府の同意が得られたらレビ氏がシモン・バル・トーブ長官の後を継ぐことになる。
レビ教授は、2007年までイスラエル軍の軍医長として従軍。第一次レバノン戦争を戦ったほか、コソボ、ザイール、ケニア、マケドニア、トルコ、ルワンダでイスラエル軍が実施した人道支援に参加、もしくは指揮したベテラン軍医である。
その後、保健省で勤務したのち、2012年からは、ガザからのロケット攻撃を受けてきたアシュケロンのバルジライ病院の院長に就任。ガザからのロケット攻撃に備えて、病院を強化するなどの政策を実施した。軍人であり、医師でもある長官ということである。
www.timesofisrael.com/civil-service-commission-clears-nomination-of-new-health-ministry-director/
*第二波が来た時人々は政府にどこまで従うか
今、感染者が増加しているが、重症化したり死亡する人が少なく、規制解除もすすめられていることもあり、メディアを見る限り、どうにも前のような危機感はないようである。
これについて、Yネットは、長いロックダウンの後で、人々の心が前とは違ってきていると指摘する。人々がロックダウンに疲れ果てたか、今後大きな感染になっても、政府の指示に従わない空気があるというのである。
たとえば、イギリス人は、少し日本人に似て、権威に従う傾向にあるが、それでも調査によると、次に感染の波が来ても、政府の指示に従わないだろうと答えた人が10%にのぼったという。ということは、イギリス人よりはるかに独立心旺盛なイスラエル人なら、もっと多くの人が、政府の指示を尊重しない可能性がある。
今は、司令塔となる長官の交代の時期でもあるが、コロナ危機については、これからどこへどこへむかっていくのか。どうにも司令塔不在(の空気?)との分析が出ている。
www.ynetnews.com/article/ryktv4Ln8
物議呼ぶ緊急コロナ対策法案
社会のコロナに対する空気が変化する中、ネタニヤフ首相とガンツ防衛相は、国会に対し、30日間、10ヶ月を上限に、緊急事態宣言を出すことを可能にするコロナ対策法案を提出した。
この法案が通って、政府が緊急事態宣言を発動すると、警察が個人宅へ抜き打ちに入って、感染予防策をまもっているかどうかを捜査し、逮捕もできることになるという。
恐怖政治のようなこの法案については、広く懸念が表明され、テルアビブでは、4日、これに反対するデモも発生した。
ガンツ防衛相は、どのような対策も国会に報告することになるので、懸念は不要と説明したが、大きな反発を受けて、警察の個人宅に入る権限を削除するなど、内容の変更をせまられている。この法案に関する審議は、7日に行われる予定。
www.timesofisrael.com/government-to-soften-contentious-emergency-virus-bill-after-vast-criticism/