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コロナ危機でも新移民来る
イスラエルは、ユダヤ人の含め、諸外国からイスラエルへの入国を停止している。しかし、ユダヤ人の新移民者が来ることは拒んでいない。
このため、コロナ危機が顕著になり始めた3月1日から4月中旬にかけて、800人がイスラエルへ移住した。このうち500人はロシアからで、感染が顕著になっていたフランスからの移住もあった。この他、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカ、アメリカからも到着した。
4月に入ってからは、過越までに250人が予定されていたが、エチオピアからの73人のフライトはキャンセルとなったため、日程の振替が予定されている。
過越が終わった後の先週は、世界でも感染が最も著しい、アメリカ東海岸からの24人が、ネフェシュベネフェシュの手配で到着した。
新移民たちは、到着後、指定の施設で2週間の隔離生活を送ってから、それぞれの居住予定地に向かうことになっている。
ディアスポラのユダヤ人と新型コロナ危機
1)ニューヨーク市(メトロポリタン)のユダヤ人
ニューヨーク市(メトロポリタン)には、全住民の約9%にあたる176万人のユダヤ人が住んでいる。イスラエルの次にユダヤ人が多い地域である。この地域が今、新型コロナ・パンデミックで最も大きな被害を受けている地域である。
ニューヨーク市では、4月19日のデータで、23万6743人が感染、1万3362人が死亡となっている。単純計算であれば、ユダヤ人が、1000人以上死亡している可能性がある。
ニューヨークでは、病院でコロナと診断されて死亡した人だけでなく、自宅で検査もされないまま死亡するケースが増えている。
ボローパーク、ケンジントン、オーシャン・パークウェイなど、特に超正統派の多い地域では、3月1日から4月13日にかけて、心臓発作などでの救急車の出動要請が、通常2件のところ、27件。グリーンポイントとウイリアムスバーグでは、例年なら1件のところ、16件と例年の10倍以上となった。この人々は死亡しているのだが、おそらくは、新型コロナに関連した死者であるとみられている。
www.timesofisrael.com/at-home-deaths-spike-in-brooklyn-jewish-neighborhoods-during-pandemic/
ニューヨーク市で、現在、最も死亡率が高いのは、ニューヨーク市北部で、ユダヤ系住民が多いロックランド・カントリーであるニューヨークタイムスは、ここの住民は、ソーシャル・ディスタンスを守っていないと伝えた。
www.nytimes.com/2020/04/08/nyregion/coronavirus-rockland-monsey-jews.html
そのロックランドの中でも得に超正統派が多い町モンゼー(住民の34%)では、昨年、ハヌカを祝っていたラビ宅に、大きなナイフを持った男が侵入し、ラビ・ニューマン(72)が殺害されるという反ユダヤ主義による暴力事件が発生している。
www.timesofisrael.com/in-some-european-jewish-communities-getting-coronavirus-carries-a-stigma/
新型コロナ感染に関して、ユダヤ人居住地の問題が、大きく注目されすぎているとの指摘もあり、今後、反ユダヤ主義暴力が、悪化していくのではないかと懸念されている。
ヨーロッパのユダヤ人
ヨーロッパのユダヤ人人口を多い順に見ていくと、①フランス45万人、②イギリス29万人、③ドイツ11万人、④オーストリア11万人、⑤ハンガリー4万七千人。となっている。コロナ危機で最も被害が大きかったイタリアのユダヤ人人口は、2万7500人、またスペインは。1万1700人であった。
ヨーロッパのユダヤ人社会で、コロナの被害が、特に大きいのはイギリスで、ハアレツ紙によると、3月26日の時点で、ユダヤ人465人が死亡した。これはイギリスのコロナ死者の5%にあたる。
石のひとりごと
新型コロナ危機が世界を大きく揺すぶっている中、ユダヤ人がイスラエルへ帰還していたことに驚かされた。とはいえ、新型コロナ感染に関しては、おそらく、イスラエルが今は、どこの国よりも安全との評価もあるので、このまま、ユダヤ人の移住はさらに進んでいくかもしれない。
中世の時代の黒死病(ペスト)では、ユダヤ人が疫病の原因になっていると根も葉もない噂が広がり、ヨーロッパ各地で、激しい反ユダヤ主義暴力が発生するようになった。今回も、イスラエルを含め、ヨーロッパ、アメリカでも、ユダヤ教超正統派たちの間で、感染が拡大する傾向が指摘されている。
今後、経済危機から世界恐慌にまで発展していくと、貧困や道徳の低下から、反ユダヤ主義に発展する可能性が懸念されている。ユダヤ人は、これまでにもまして、できるだけ早く、イスラエルへ帰還する方がよさそうである。