過越最終日も全国ロックダウンへ 2020.4.14

出展:GPO

ロックダウン再び

世界では、感染者が192万人を超え、死者も11万9000人を超えて、12万人に近づいている。ニューヨーク、イタリア、スペイン、イランなど、これまで壮絶な感染拡大と戦ってきた地域では、新たな感染者の数は減りつつあるものの、死者は増え続けており、まだ油断はまったくできない状況である。

イスラエルも新たな感染者数は、1万1586人。この24時間で13人が死亡して死者は116人となった。人工呼吸器依存者は132人。

イスラエルでの失業率は、25.8%と、もはや経済の崩壊の限界にある。幸い、国民が自宅での隔離に協力的で、新たな感染者が落ち着いてきていることから、イスラエルでは、過越の後に徐々に経済活動の再会が議論されはじめている。しかし、当然ながら、まだ油断は禁物だ。

ネタニヤフ首相は、過越の最終日を含む14日(火)午後5時から、16日(木)朝5時までのロックダウンを発令した。通常なら、15日の日没になると、人々が種ありのパンの購入に走るので、これによる”密”を避けるために16日朝までにしたとのこと。

ネタニヤフ首相は、「今、我々は、この災害が来る前の日常を忘れなければならない。次の時代へ進めるのは、ワクチンができてからだ。しかし、ワクチンは今はまだない。今後は、最も大切なもの、命を守るということを基準に、制限付きの生活を続けなければならないだろう。」と述べた。

www.timesofisrael.com/netanyahu-announces-fresh-nationwide-lockdown-for-end-of-passover/

言い換えれば、イスラエル軍国内治安部のタミール・ヤダイ長官が入ったように、「この事態からの脱出戦略」ではなく、「この事態に慣れる戦略」を考えるべきということである。

www.timesofisrael.com/idf-general-we-dont-need-an-exit-strategy-we-need-a-coping-strategy/

新型コロナは完全無差別:元チーフラビと9人の子供の母逝く

この週末中、死亡した人の中には、元イスラエル・チーフラビ(スファラディ・1993−2003)のラビ・エリヤフ・バクシードロン(79)が含まれていた。エルサレムの病院に搬送されたからわずか5日後のことであった。

ラビ・バクシードロンは、2003年、今のアシュケナジーのチーフラビ・イスラエル・メイール・ラウとともに、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世をイスラエルで迎えたラビである。同時に、2012年に、不正にラビの認証を警察官らに与えたとして訴えられた他、2017年にも汚職で執行猶予と罰金の対象になっていた。・・・が、死亡したとなると、ラビ・メイールも、ネタニヤフ首相も、ラビ・バクシードロンの功績を讃えるコメントを出している。

本来なら、葬儀は大群衆になるところだが、アシュケナジー・チーフラビと、家族を中心に20人ほどが、ソーシャル・ディスタンスのルールにのっとって、寂しい葬儀を行った。また、ユダヤ教では、通常、故人の死後7日間は、知人友人たちが集まって家族の悲しみを支える習慣がある。しかし、新型コロナの影響で、これもできなくなっているとのこと。

www.timesofisrael.com/former-chief-rabbi-bakshi-doron-laid-to-rest-in-front-of-handful-of-mourners/

上記ラビが死亡した前日には、ベイトシェメシュ在住のマザル・ダレルさん(53)が、新型コロナで死亡した。9人の子供の母で、基礎疾患のない健康な人だった。

アルーツ7によると、マザルさんの家族は、律法に非常に忠実な家族だという。にもかかわらず、マザルさんは、よりにもよって、過越初日、セダーの夜に、病院に搬送され、そのわずか3日後に死亡した。ベイトシェメシュの超正統派社会には、非常に大きな衝撃になっているとのこと。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/278552

新型コロナとはいったい、なんだろうか。元チーフラビも、9人の子供の母親も、新型コロナには、なんの区別もない。日本では、まだこの疫病に関する本当の恐ろしさが、伝わっていないような気がする。今、本当に主の前に、だれもがへりくだらなければならない時である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。