27日午後5時:3回目ロックダウン開始 2020.12.26

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1日感染4000人:変異株も国内で感染か

イスラエルのコロナ感染は、12月中旬から明らかな増加に転じ、24日の24時間での新規感染者は4000人を超えた。24日に実施された検査10万2596件の陽性率は、4%。実効再生産率(1人が感染させる人数)は1.26(超正統派地域は1.7)であった。

24日現在の有症者は、3万3338人。このうち、917人が入院。527人が重症(感染者の2%弱)、133人は人工呼吸器依存となっている。死亡率は、0.9%で、今週は毎日14−25人が死亡。これまでの死者総数は3186人となった。

25日、国会では、議員にコーヒーを出す職員に陽性者が判明。これに先立ち、議員2人、報道官、その他職員8人にも陽性が判明。自粛中である。しかし、今、国会を閉鎖できないので、議会は続行している。

今、感染力が強いと懸念されている変異型コロナウイルスは、イスラエルで6例みつかっていた。その後、チャンネル13が伝えたところによると、テルアビブ郊外の病院で、変異株が疑わしいケースが49人みつかった。

さらに南部でも19人見つかったが、複数は海外に出ていないので、すでに国内で変異株コロナの感染拡大が始まっている可能性もあると懸念されている。

www.timesofisrael.com/49-suspected-cases-of-new-virus-variant-reportedly-found-at-israeli-hospital/

<3回目フル・ロックダウン開始:おそらく2週間では終わらない>

これまでのイスラエル政府の規制は、医療と経済の間で、二転三転する上、非常にわかりにくい状況が続いていた。しかし、感染拡大が収まらないことを受けて、25日、国会は、27日(日)午後5時から、3回目のロックダウンを実施すると発表した。

期間は、来年1月6日までの2週間の予定だが、もし感染者数が1日1000人以下、実効再生産率が1以下にならなかった場合は、延長するとのこと。保健省で新しくコロナ担当を引き継いだナフマン・アシュ氏は、おそらく延長することになるとの見通しを語っている。

しかし、国民へのワクチン接種が急速のすすめられており、近々パンデミックの脅威は終わるとの見通しからアシュ氏は、イスラエルでは、これが最後のロックダウンになると希望とともに国民に厳しい規制を課した形である。

www.timesofisrael.com/virus-czar-lockdown-will-probably-be-extended-beyond-two-weeks/

以下の規制の内容。破った際の罰金は500シェケル(1万5000円)で、これまでのロックダウンより厳しくなっている。

1)海外から入国

①イスラエル人は、すべて入国から2週間、ホテルで隔離
②外国人はすべて入国拒否

2)ビジネス関連

①食糧、薬品、電気関連など必要不可欠なものの販売以外の店は閉鎖。
②ビジネス、レジャー施設は閉鎖。美容院含む一対一のサービス業も閉鎖。
③動物園、国立公園も閉鎖
④車の教習、小グループツアーも禁止(死海、エイラットでのみ許可されていたツアーも28日まで)
④レストランのデリバリーはOKだが、テイクアウェイは禁止

3)職場

①リモートワークで出社は10人まで。社員10人以上の会社の場合、出社は50%まで

4)個人生活

③外出は、ワクチン接種など許可された理由がない場合は、自宅から1000メートルまで
④自宅以外の家に入ること禁止(離婚家庭で子供が親の家を行き来するのはOK)

4)教育関係

①幼稚園児(1−4年生)は、放課後クラブも含め登校OK
②11−12年生も登校するが、授業はカプセルで(1人の教師が担当するのは4カプセルまで)
③5−10年生は、互いの間に距離をおくこと

www.jpost.com/health-science/on-the-way-to-coronavirus-lockdown-what-you-can-and-cannot-do-653273

直前買い物に走る市民

週明けからロックダウンに入るとの知らせで、人々は25日(金)、いっせいに必要な食糧などの買い出しに出た。テルアビブのカルメル・マーケット、エルサレムのマーケット、マハネイ・ヤフダや、モールが大混雑になる様子が伝えられた。

また、空港では、2週間の隔離にならないよう、ロックダウンまでに帰国するイスラエル人の入国が相次いだ。

人間、考えるもので、イスラエルでは、このロックダウンが始まるまでも、屋内での集会は20人までとなっていた。このため、超正統派の中には、最近、国交がはじまった、UAE(アラブ首相国連邦)で結婚式をするという流れが始まっていた。

以下の記事では、ドバイで150人で結婚式を擦る様子が伝えられている。UAEにはすでに5万人以上のイスラエル人が、このコロナ禍の中、旅行に出かけていたのであった。これもしばらくは不可能になる。

www.ynetnews.com/article/H1UtH8R2w

24、25日はクリスマス恩赦?屋外で集会許可

上記のような規制が始まる直前のクリスマス。政府は突然、屋外なら100人まで集会を許可すると連絡を飛ばした。このため、全国のキリスト教会や、一部のメシアニックの教会も、久しぶりに集会の時を持つ事ができた。

エルサレム在住で、中東問題に詳しいクリスチャン・ジャーナリストのヨエル・ローゼンバーグ氏によると、イスラエルにいるクリスチャンは約18万人(78%アラブ人)。ほとんどは、カトリック、ギリシャ正教、シリア正教、ロシア正教などのほか、コプト教など。

プロテスタントの福音派アラブ人クリスチャンは約4000−5000人とみられ、ナザレ、ハイファなど北部ガリラヤ地方に住んでいる。

ユダヤ人でキリストを信じるメシアニック・ジューと呼ばれる人々は約3万人。教会はイスラエル国内に300あるという。

1948年の独立当時でわかっているメシアニックジューは23人だったとのこと。今は伝道だけでなく、両親がメシアニックという人も増えて、イスラエル社会でも無視できない存在になっている。

www.allisrael.com/full-lockdown-looms-but-israeli-government-allows-church-congregations-to-meet-for-prayer-on-christmas-day

そうしたメシアニックジューの教会の一つ、エルサレム・アッセンブリーでは、25日、政府からの突然の”恩赦”を受けて、近くのラマット・ラヘルの屋外で、久しぶりに皆が集まって、イエスの誕生を覚える礼拝が行われた。

ロックダウンによる経済打撃は25億シェケル(750億円)

当然ながらロックダウンには経済への打撃が伴う。週ごとの損失は25億シェケル(750億円)にのぼると試算されている。もし2週間延長され流可能性も考えると、最終的な損失は、50−100億シェケル(1500億から3000億円)にのぼると試算されている。

www.timesofisrael.com/israelis-rush-malls-markets-in-final-days-before-third-lockdown-begins/

イスラエルでは、パンデミックが始まってから倒産したビジネスは7万5000件。3回目のロックダウンで、あらたに7500のビジネスが倒産すると懸念されている。

www.timesofisrael.com/lockdown-will-shutter-7500-additional-businesses-report-says/

失業率は、12月初頭、10月の18%を記録して以来、13万人が復職できたことから、14.6%に改善していた。このときの失業者は60万3000人(中央統計局)であった。3回目のロックダウンで、また失業する人が増えることになりそうである。

なお、イスラエルでは、失業保険があるが、自営業者にはない。日本と同様、収入源をすべて失った人がさらに出てくるということである。しかし、今は、ワクチン作戦と並行して、短期の強力なロックダウンを行うことで、早くパンデミックを終えることが、早い経済の回復になると、ネタニヤフ首相は確信を込めて語っている。

www.timesofisrael.com/unemployment-drops-as-businesses-return-from-lockdown/

しかし、今回のロックダウンについては、特に教育部門で子供達が登校を続けられることと、家から1000メートルしか出られないこととの矛盾が指摘されている。親は子供たちを学校へと登下校させなければならないからである。中小企業からは、こんなロックダウンは必要なのかと批判が相次いでいる。

www.timesofisrael.com/business-owners-seethe-over-third-nationwide-lockdown-demand-compensation/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。