イスラエルの通貨シェケルの高騰が止まらない。17日のレートで、1ドルが3.07シェケルと26年来の高さとなった。
日本円では、考え方が逆になるが、1シェケルが37円である。実質的には、1シェケル40円とみるべきだろう。
こうなると、軽いランチとして、ファラフェルのサンドイッチとコーラ1本の値段は、安く見積もっても1500円。
レストランで食事すると、たとえば、比較的リーズナブルな店でハンバーガー1品と飲み物、チップ入れて95シェケルとして、3800円である。家賃は、ごく普通の家でも一月15万円以上になる。税金を入れると月17-18万円だろう。
このシェケル高の傾向は、輸入業者にはよいニュースである。輸入品が安くなるからである。実際イスラエルでは、今は、輸出より輸入が多くなっている。また、コロナ後が見え始めた今、海外旅行が好きなイスラエル人にとって、シェケル高は好都合であろう。
一方で、輸出業者への負担が懸念され、新たな倒産や解雇の要因になる可能性が懸念されている。
また、強いシェケルは、コロナ後にイスラエル旅行を計画している外国人にとっては、厳しく、足枷になる可能性もある。コロナ後にどのぐらいインバウンドの観光業が回復するのか、この分野については、まだ先行きは暗そうである。
<シェケル高の背景と今後の見通し:イスラエル経済強し>
Times of Israelによると、シェケル高は、昨今、イスラエルに流入するドルが増え、その分シェケルの供給が追いついていないということを意味する。
その要因として、外国人がイスラエル国債をドルで購入するケースが増えてドルの流入が増えていること。また、イスラエル人で海外投資で利益を得た人が増え、シェケルに換金しようとして、シェケルが不足するなどである。
さらに、ハイテク企業への投資は、今年9月の時点ですでに過去最高となる178億ドル(2兆円強)を記録。これは、過去最高を記録した2020年度の投資総額を、すでにこの時点で71%も上回っているとのこと。
今年中に投資額は350億ドルから400億ドルになるとの見通しもある。こうした背景からも、ドルが過剰になる傾向にあった。
このため、イスラエル銀行は、ドルを買い取るという市場介入を行なってきた。今年1月には、今年中に300億ドルを購入すると発表。この発表により、若干シェケル高を抑えることができたという。しかし、この額(300億ドル)は10月27日の時点で、すでに達成してしまった。
www.timesofisrael.com/bank-of-israel-to-buy-30-billion-in-forex-in-2021-to-curb-shekel-rise/
イスラエル銀行が、この先もドルを購入する可能性はあるが、まだ明確にしていないことから、心理的な要素(ドルを保持することに不安)もあいまって、シェケル高騰につながっている可能性があるとのこと。
加えて、今、世界的にアメリカドルの価値が下がっていることも、シェケル高に拍車がかかっているとみられている。
輸出業者への打撃を見なければならないが、それも別の方法での救済が可能とも言われイスラエル全体としては、現時点ではよい傾向と分析されている。こうなると、イスラエル銀行が積極的に介入しない可能性もあり、シェケル高はしばらく続くとみられる。
結論からすると、イスラエルの経済は、全体的に見ると強いということである。