イスラエルでは、3月17日の総選挙に向けて、主に右派ネタニヤフ陣営と、左派労働党ヘルツォグ・リブニ陣営が激しい論争を繰り広げている。
選挙名簿が出そろった時点では、ネタニヤフ陣営の支持率が落ちて、ヘルツォグ陣営が優勢だった。しかし、先月、イスラエル軍がイランとヒズボラの前哨地点とみられる地点を攻撃して以来、再び右派ネタニヤフ陣営が逆転するに至った。
この攻撃で、「イスラエルには危機がある。左派のようにパレスチナ側への譲歩をしていたのでは危ない。思い切った防衛をする政府が必要だ。」と考える国民が増えたためである。しかし、ヘルツォグ陣営も、まだまだ負けていない。
次なる論点は、ネタニヤフ首相が、アメリカ議会の招きに応じて訪米し、総選挙2週間前の時点で、議会でイランに関する演説をするかどうかという点である。
<アメリカとの関係が崩れる!?>
今回の議会への招きは、ホワイトハウスのオバマ大統領から出たものではない。
オバマ大統領は、イランの核兵器問題について、これまで伸ばし伸ばしになっていた交渉期限”目標”3月を遵守する方針を明らかにしている。課題は残るが、何らかの譲歩点をみつけて、この問題に一応の区切りをつけたいということである。
いったん、イランとの合意が成立してしまった場合、これを覆すことは不可能である。ネタニヤフ首相は、オバマ大統領と対立する議会に訴えてでも、イランとのいかなる譲歩も成立させないようにしたいと考えているのである。
しかし、ホワイトハウスの方針に反する演説を、ホワイトハウスに対立する議会で行うということは、完全にオバマ大統領に反旗を翻すことを意味する。
実際、ネタニヤフ首相がアメリカを訪問する際、オバマ大統領は面会しないと伝えている。バイデン副大統領も、他の予定ということでネタニヤフ首相には会わない方針である。
イスラエルでは、「決断を下すのはオバマだ。議会ではない。ネタニヤフ首相は、アメリカを敵にまわしてイスラエルを危機に陥れようとしている。」といった意見まで出ている。
時期が選挙2週間前ということも問題とされる。イスラエルだけでなく、アメリカ国内でも、双方の内政干渉になりうるとする意見が出ている。しかし、いずれにしてもネタニヤフ首相は訪米するつもりのようである・・・。