親司法制度改革・親ネタニヤフ首相デモも20万人:反司法制度陣営と歩み寄り進捗なしか

デモ当日 終盤午後9時前ぐらい

親司法制度改革・親ネタニヤフ首相改革デモ:初の20万人で存在主張

過越に始まり、ホロコースト記念日、戦没者記念日、建国記念日と、一連の祝日、例祭が終わった翌日の27日、エルサレムでは、右派支持者たちが、ネタニヤフ首相と、その政権が提示する司法制度改革に賛成を訴えるデモを行った。

これま3ヶ月以上つづいてきた大規模な反司法制度改革、反ネタニヤフ首相デモと正反対のデモである。初めて行われたデモだったが、エルサレムの国会周辺に20万人ともみられる大群衆だった。

国内には、政府の改革を支持する市民も少なくないということを主張した形である。しかし、この日を前に、ネタニヤフ政権の閣僚たちが、「100万人デモだ」と参加を呼びかけ、参加者のために、旗や、全国に1000台のバスを用意するなと、デモの資金も提供していたとの情報もある。

27日夕方に始まったデモは、午後11時ぐらいまで続き、参加者は20万人?と伝えられている。現場は、文字通り、イスラエルの旗の海となった。イベントでは、司法制度改革の発起人であるレビン法務相、宗教シオニスト党スモトリッチ氏が演説したが、ネタニヤフ首相がデモで演説することはなかった。しかし、後でツイッターで参加者への感謝を伝えている。

www.timesofisrael.com/in-show-of-force-200000-urge-govt-not-to-abandon-overhaul-amid-compromise-talks/

この日、筆者が現場に着いたのは、夜9時を回ってからであったので、群衆が近くの電車に押しかけていたところだった。文字通りおしくらまんじゅう状態であった。

遮断されていた周辺交通が開放されたのは夜11時ぐらいだっただろうか。混んでいることなど全く気にしないイスラエル人なのであった。また、どこからかはバスが出ているだろうと、歩いてちらばっていく人々がみられた。

親司法制度改革・親ネタニヤフ首相だがその思惑はさまざま:一般人と子連れ参加者たちも

こちらのデモでは、国民の過半数は、ネタニヤフ政権に投票したのであるから、それをひっくりかえすことこそが、民主主義の崩壊だと訴えていた。司法制度改革については、来週にも審議が再開されるとの予想もある中、「すぐにも可決せよ。ネタにタフ首相は、野党に屈してはならない。」と訴えた。

また、現在の司法制度では、最高裁の裁判官を最高裁自身が決定しており、人権を最優先にする左派の影響を受けすぎる傾向にある。政府がテロリストに対する強力な法案を考えても、必ず却下されてしまうので、それこそ、イスラエルにとっては危険な状況だと訴えた。

参加者は、反司法制度改革のデモと同様に、過激右派だけでなく、ごく一般の市民たちも参加していたが、キッパをつけた正統派や、黒服の超正統派たちも多くみられた。

ユダヤ教政党支持者は、西岸地区からも来ていたとのこと。ユダヤ教政党は、政治的なことではなく、「トーラーの国」の設立を訴えていた。

ユダヤ教徒たちは、夜に大群衆状態であるのに、キッパをつけた、かわいい幼児を連れている人も少なくなく、幼稚園児や小学生も多くみられた。ティーンエイジャーの若者も多くいて、かなり興奮しているグループもあった。

超正統派らしく?、この群衆の中でさえ、貧しい人への献金を呼びかけているテーブルをいくつかみかけた。

一般庶民の中では、白髪の高齢女性がいたので、聞くと、73歳だという。昨年アメリカから一人で移住してきて、今はヘブライ語教室ウルパンに通っているとのことだった。社会で何が起こっているかもよく研究して、このデモに参加することを決めたという。

デモでは、少なくとも3時間以上、群衆にもまれていたことになる。日本では、介護保険の利用も始まるであろう年齢だが、全く現役であった。

2日後には反司法制度改革・反ネタニヤフ・デモ:こちらも20万人?

親ネタニヤフデモの2日後の29日、安息日明けには、17週連続(4ヶ月以上)となる反ネタニヤフデモが、全国で行われた。こちらも20万人とみられている。イスラエル社会の分断を強調したような週末であった。

www.timesofisrael.com/ahead-of-17th-week-of-protests-leaders-slam-pro-overhaul-rallys-severe-incitement/

大統領官邸での交渉・進捗なし

国が分裂する勢いにあることから、少し前からヘルツォグ大統領が、妥協点を探すようにと呼びかけ、官邸にて、両陣営代表を招いての交渉を行わせている。これまでに5回行われたとのこと。

話し合いでは、1回に1項目だけを話し合うようにしているとのことだが、政治的なところから、超正統派の徴兵義務に至るまでかなり幅広い内容となっており、ガンツ氏によると、どの項目においても、まだ合意にいたるような結果は出ていない。いわば国のありかたそのものを問う話し合いだということである。

www.timesofisrael.com/gantz-no-progress-in-talks-with-government-on-judicial-reform-compromise/

しかし、いつまでも話し合いをしているわけにはいかない。この話し合いでは、特に超正統派の徴兵や税金に関する話し合いも含まれており、この問題で合意できなかった場合、5月末までに予算を可決できないということになり、結果、政府は解散ということにもなりかねない。

そこで、政府は、超正統派と交渉し、この問題についての交渉は秋まで延期することで合意したと伝えられている。

www.timesofisrael.com/haredi-parties-said-to-back-down-from-demand-to-pass-idf-draft-law-before-budget/

石のひとりごと

デモへの参加が、親司法改革勢、反司法改革勢ともに20万とはいえ、総人口972万人(ユダヤ人714万人)という視点でみれば一部といえる。実際のところ、どうなのか。筆者の知人たちは皆、司法制度の改革は必要だが、今提案されている改革案はよくない、という意見であった。いわば、双方の意見の真ん中である。

また、今の政府がこれほど重要な改革をこれほど急速にすすめることにも懸念を表明する人もいた。これまで、ネタニヤフ首相を支持してきたが、今は支持できなくなったという人もいた。

また、子育て真っ最中の夫妻は、そんなことにはかまっていられないという様子であった。まあ、そういうものであろう。。

イスラエルの中に入ってしまうと、いったい何が起こっているのか、逆に把握しにくくなる傾向もあるような気がする。外からとりなすということは、やはり一理あると思った。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。