神の奇跡を覚えよう:ハヌカのあかりを灯すエルサレム 2021.11.29

Amos Ben-Gershom (GPO)

11月28日はハヌカの第一日目であった。イスラエルでは、街のあちこちに大きな9枝のハヌキア(メノラーろうそくたて)が設置されている。旧市街はじめ、敬虔なユダヤ教徒の家の前には、ハヌキアが入った小さな箱が設置され、28日の夜から5日夜まで毎夜、一本づつろうそくを灯していく。

嘆きの壁では、ベネット首相が、大きなハヌキアに1本目のあかりを灯した。ヘルツォグ大統領は、ヘブロンのマクペラの洞窟(アブラハムとサラ、イサクとリベカ、ヤコブとレアの墓とされる洞窟)で、ハヌキアに1本目のあかりをともした。パレスチナ人から脅迫があったが、イベントは無事に終了している。

*ハヌカで記念すること

ハヌカが記念するのは、かつて、異教の民、ギリシャに奪われ、至聖所にたるまで汚されたエルサレムの神殿を、ユダヤ人のマカビー一族が奪回し、聖めなおしたことである。(マカバイ戦争:紀元前168年〜紀元前141年)

この時、神殿には、聖所でも使えるとされる聖なる油は1日分しかなかった。しかし、火は奇跡的に8日間燃え続けたと伝えられている。

この時、実際には通常の油でもいいなら、1日分以上、十分あったという。ただ神殿で使えるほどに聖なる油は1日分しかなかったということである。

スーパーラミレビ
ちょっとおしゃれバージョン

マカビー一族はただ物理的に神殿を取り戻しただけでなく、聖なる神への恐れ、神への敬意を回復させたということである。神はこれを喜ばれたとユダヤ教は教える。

ユダヤ人たちは、この油を記念して、ハヌカの間は、スフガニヤと呼ばれる揚げパンを食べる。

中に赤いあっさりしたジャムが入っているものが基本だが、最近では、非常におしゃれなものが出ている。この時期、イスラエルでは町中にカラフルなスフガニヤが出回る。

このスフガニヤには一点、大きな問題がある。非常にカロリーが高いと言う点だ。一つで一食分以上のカロリーがあるともいわれている。ノンオイル・スフガニヤなども売り出されて、意味なし?みたいなのもある。

値段は、スーパーのもので、4つ12シェケル(450円ぐらい)、ケーキ屋さんだと、一つ8-10シェケル(300ー350円)から14シェケル(500円強)

以下は28日夜のエルサレムの様子:旧市街の城壁にもハヌカのハヌキアの絵が投影されている。

www.facebook.com/JerusalemDateline/videos/4557663314314772

ベネット首相:イスラエルは小さい国だが現代世界のマカビー・希望は消えない

ベネット首相はツイッターでハヌカのコメントを発表した。ベネット首相は、ハヌカが2200年前だけのことではないと語り、イスラエルの民が、様々な苦難を経て今もなお存在することから、いかなる苦難にも決して負けない。希望は終わっていないと呼びかけている。

また、イスラエルは、苦難から立ち上がっただけでなく、先進国になっている。イスラエルは小さく、人数も少ない。しかし、小さい国ながら、世界を苦難から解放する現代のマカビーだとも語っている。私たちには信仰がある。大胆さがある。敗北を受け入れることもない。

希望は絶望に、光は闇に打ち勝つ。小さい光が闇を打ちくだく。私たちの光が消えることはないと語っている。

石のひとりごと

写真:Yad Vashem

エルサレムのヤドバシェムには、ナチスの旗を背景に置かれているハヌキアの写真がある。そのハヌキアの現物も保管されている。この写真が撮影された1932年、ヒトラーが政権を握る直前、まさにユダヤ人は大虐殺の暗闇に向かおうとしていたときであった。そんな時でもユダヤ人はハヌカを祝ったのであった。

最終的にナチスは、ユダヤ人を絶滅させることはできなかった。終戦からわずか3年後にイスラエルは独立した。今では、アメリカはじめ、世界の大国の首脳たちが、イスラエルやユダヤ人たちにむけてハヌカのメッセージを出すようになっている。

たしかにイスラエルを打ち砕くものは、コロナであれ、なんであれ、今後も現れないだろう。そうして世界は、最終的には、暗闇の中に一点だけ光っているイスラエルの周りに集まってくるのかもしれない。聖書には次のように書いてある。

・・多くの国の民、強い国々が、エルサレムで万軍の主を尋ね求め、主の御顔を求めるために来る。」万軍の主はこう言われる。「その日には、外国語を話すあらゆる民のうちの十人が、一人のユダヤ人の裾を固くつかんで言う。

「私たちもあなたがたと一緒に行きたい。神があなたがたとともにおられると聞いたから。」(旧訳ゼカリヤ書8:22-23)

今、イスラエルがコロナ問題で、世界に先駆けて動いているイスラエルの様子が、日本をはじめ、世界でも注目されるようになっている。この聖書のことばも、なんとなく想像ができる時代に入ったかのようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。