極右ベン・グビル国内治安相が神殿の丘にシナゴーグ建設意欲表明で物議 2024.8.28

National Security Minister Itamar Ben Gvir, left, visits the Temple Mount in the Old City of Jerusalem, May 21, 2023. (Courtesy: Minhelet Har Habayit)

神殿の丘にシナゴーグ!?

神殿の丘は、2000年前以前は、ユダヤ教(聖書)に基づく第一神殿と第二神殿があった場所である。

しかし、その後、イスラエルはローマ帝国によって崩壊。ユダヤ人は世界に離散していくことになった。

その後、イスラム教が起こり、今、神殿の丘にあるのは、イスラム教の黄金のドームである。

場所の名前は、イスラム教徒にとっては、神殿の丘ではなく、「ハラム・アッシャリフ」である。

この場所は、1967年の六日戦争で、イスラエルが奪回したが、1000年以上もイスラムの聖地でもあったことから、アラブ諸国との取り決めで、「現状維持」の原則が定められることとなった。

それによると、イスラム教徒以外は、定められた時間にだけ訪問が許され、その際に聖書や祈りの書をもちこんだり、祈りとわかる方法で祈ることも禁止とされた。

ただし、治安については、イスラエルの警察(国境警備隊)が責任を持って守るという、微妙な「現状維持」が続けられてきたのであった。

その繊細な、場所に極右政党オツマ・ヤフディ党首ベン・グビル氏が、国内治安相(警察担当)という立場にありながら、ユダヤ教徒として、何度も訪問し、その度に物議になっている。

26日に神殿の丘を訪問した際、「ユダヤ人もここで祈る権利がある。イスラム教徒は嘆きの壁で祈れるのと同じだ。」と述べ、記者から「ではあなたは、神殿の丘にシナゴーグを建てたいのか」と言われると「そうだ、そうだ」と何度も繰り返した。

www.timesofisrael.com/cabinet-ministers-warn-ben-gvir-endangering-israel-with-reckless-temple-mount-moves/

これは、決して言ってはならない文言、タブーである。幸い、パレスチナ人との暴力的な衝突にはならなかったが、この様子を見て慌てたのが、イスラエル政府とアメリカだった。

ネタニヤフ首相は、ただちに、神殿の丘にシナゴーグを建てるという案は、イスラエル政府のものではないとの声明を出した。(ベングビル氏の名前は出さず)

バイデン政権は、「イスラエルは、今、イラン、ハマス、ヒズボラと戦わなければならず、団結するべき時である。

ベングビル氏は、この大事な時に、地域安全補償の混乱を招き、イスラエルの安全を弱体化させている」と、かなり厳しい批判声明出した。

www.timesofisrael.com/us-ben-gvir-sowing-chaos-undermining-israels-security-with-temple-mount-remarks/

イスラム教メッカがある本場、サウジアラビアは、ベングビル氏の発言は受け入れられないと一蹴する声明を出した。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/saudi-arabia-denounces-ben-gvir-for-saying-hed-support-synagogue-on-temple-mount/

しかし、ベン・グビル氏がこうした態度であるので、最近では、極右ユダヤ教徒たちが、グループで神殿の丘に上がって、倒れ込み、大声で祈るという行為にも及んでいる。

この祈り方は、かつて、この場所に、第一、第二神殿があった時代のユダヤ人の祈り方である。

また、ベングビル氏と同じ政党で、国宝を管理する省庁のアミハイ・エリヤフ大臣が、神殿の丘のガイド付きツアーを開始する計画を発表。警察庁も承認したと言っている。(ベングビル氏は警察庁管轄)

国家によるプロジェクトであるということは、費用(200万シェケル)も国持という流れである。しかし、これは明らかに、現状維持を破る動きである。

神殿の丘に対するこうした動きについて、ネタニヤフ首相は、反対の声明はだしてはいるが、阻止する動きには出ていない。

極右勢力がないと立ち行かない今のネタニヤフ政権。その弱さを利用されていると批判する声もある。

www.timesofisrael.com/heritage-ministry-to-fund-temple-mount-tours-amid-far-right-push-to-alter-status-quo/

石のひとりごと

ユダヤ教の右翼たちの最終的な目標は、第三神殿を建てることである。ベングビル氏と極右勢力の大胆な動きを見て、ちょっと緊張を覚えた。時代はいよいよ、終末に向かって動いていくのだろうか。

日本では、今、歴史上最強とも言われる台風が来ており、人間の技術力では、その動きの予想もできない状態にある。

異常気象が急速に進んでいることからも、聖書が言う終末の時代に近づいている気配を感じさせられないだろうか。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。