新型コロナ関連死のグリーフ(悲しみ)ケアにむけて 2021.2.5

イスラエルでは、この1年の間に、新型コロナで死亡した人が5000人を超えた。このため、メディアでは、もう死者の詳細をすべてとりあげることがなくなっている。

また通常は、それぞれの葬式の後、シバと呼ばれる7日間の喪に服す期間が持たれる。この間、親族縁者、友人たちが家族を訪問し、遺族と悲しみを共にするというのが、ユダヤ教の習わしである。ズームでシバを行っている場合もあるが、感染予防の観点から、これらもほとんど行われないままになっているという。

ユダヤ教(聖書の天地創造の神を基盤とする教え)を基盤とするユダヤ人にとって、「命」は最も神聖なものである。いかに高齢であっても、命の価値に違いはなく、「死んだほうがその人のためにもよかったのだ。」という考え方はない。

アミット・イズラエリさん

このため、新型コロナで家族を失った人々のグリーフケアを助けようと、社会活動を推進するグループのボランティア会員の一員、アミット・イズラエリさんが、亡くなった人を社会的にも覚えて、家族と悲しみを共にしようとするサイト「リクマ」を立ち上げた。

ちょうどイスラエル防衛省が運営する戦死者を覚えるサイトと同じようなもので、新型コロナで亡くなった人の名前や年齢、出身地、その人の人生が短く描かれている。インターネットサイトなので、遺族は、いつでも書き込みをすることができる。

本名を出している人もいるが、名前は出さず、年齢と住んでいた町と、その人の人生を短く表示している場合も多い。ほとんどは、80歳代、90歳代である。「お父さん、いなくなってさびしいよ」という書き込みもある。これまでに、376人分がアップされている。

izkor-covid19.co.il/

*イスラエル軍戦死者を覚えるサイト:特定の人を選んで、ろうそくを灯すことができる。

www.izkor.gov.il/en/

<石のひとりごと>

イスラエルでいつも感心させられたことは、イスラエル人の若者の多くは、なんらかの形で、社会の役にたつことをめざしているということである。
自分は、社会とどうつながるか、どんな足跡を残していけるかということを考えているのである。

今回紹介した、リクマを立ち上げたアミット・イズラエリさんは、社会活動を推進するボランティアを育てる組織の教師の一員である。この組織では、イズラエリさんのように、社会活動の教師として訓練を受けた1300人がいるとのこと。

イスラエル人は通常、家族を非常に大事にするが、家族を築いていくこともまた、社会のため、国のためにもなるという意識があるようだった。民族絶滅の危機を通ってきたユダヤ人ならではのことかもしれない

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。