イスラエルでは、先週、有力野党党首で、元IDF参謀総長のベニー・ガンツ氏と、戦時内閣オブザーバーの一人、エイセンコット元IDF参謀総長が、戦時内閣を離脱すると発表していたが、これを受けて、16日夜、ネタニヤフ首相は、戦時内閣を解散すると正式に発表した。
戦時内閣は、ハマスとの戦争に効果的に対応するためにガンツ氏が提案したもので、ネタニヤフ首相、ギャラント防衛相、ガンツ氏の3人からなり、そのオブザーバーとして、エイセンコット元IDF参謀総長、ダーマー戦略顧問、シャス党(ユダヤ教政党)のデリ氏で構成されていた。
今回、発案者であったガンツ氏とIDF関係者2人が離脱したため、ネタニヤフ首相は、これを存続する意味がないと考えたとみられている。今後は、ネタニヤフ首相とギャラント防衛相と、以前よりも小さい委員会のようなもので、戦時下のイスラエルを導いていくとしている。
ガンツ氏が、戦時内閣に離脱を決めたのは、ネタニヤフ首相は、極右勢力やユダヤ教勢力からの圧力という、政治的な事情から、決断すべき時に決断せず、イスラエルにとって有害な存在になっているとの判断からだと言っていた。9月には、総選挙をして、新たな政府にすべきだとも主張している。エイセンコット氏も同様の声明を出していた。
その後、これまで戦時内閣に入っていなかった極右政党のベングヴィル氏が、加わることを要求していたが、ネタニヤフ首相は、これにはとりあわず、戦時内閣を解散すると正式に発表したということである。
ガンツ氏が言うように、ネタニヤフ首相は、宗教シオニスト的な考えを持ち、パレスチナ人に強硬な姿勢を崩さない極右政治家と、ユダヤ教超正統派政党に、政権の存在を支えられているため、どうしてもその人々の主張を聞かなければならないところに立っている。
そうした極右的な考えや動きが、国際社会からの孤立を招く悪循環になっているのである。さらに、この戦時下にあって、ネタニヤフ政権は、ユダヤ教イシバ(神学校)に所属する者は、26歳から従軍免除になるが、それを21歳まで引き下げる方向で検討に入っている。これには国内からも世俗派の市民たちから激しい怒りを買うことになっている。
しかし、国内には、右派を支持する人は増える傾向にもあり、本当のところ、何がイスラエルにとって最善かはわからないともいえる。なお、ガンツ氏と、エイセンコット氏の2人が離脱しても、ネタニヤフ首相の連立政権は、国会議席120議席中64議席と、まだ過半数を維持できている。