感染爆発中も9月1日新学期開始:250万人の子供達が登校 2021.9.2

ראש הממשלה נפתלי בנט בפתיחת שנת הלימודים תשפ"ב בבית הספר המאוחד בירוחם צילום: חיים צח / לע"מ Photos By : Haim Zach / GPO

250万人の子供たち登園・登校

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イスラエルでは、1日の感染者が1万1000人を超える日が続いている。死者も1日に20人を超える日が続いていることから、ぎりぎり2日前まで論議が続いたが、予定通り、9月1日、幼稚園児から12歳まで250万人の子供たちが、登園、登校し、新学期を始めた。

全児童に簡易検査キットを配布し、陽性者が学校に来ないように徹底するということにはじまり、年齢に応じて、ワクチン接種の段階や様々な条件をあげて、非常に細かい、具体的な数字を伴う、感染予防対策が指示されていた。

また、特に感染が拡大している赤信号地域については、登校に制限が設けられた。たとえば、中学生では、ワクチンを受けたか、感染後回復した生徒が70%に満たないクラスは、オンラインになる。結果的に21万人の子供たちは登校できなかったが、全体でみると90%の子供は学校へ行くことができた。

大きな矛盾として指摘されているのは、36000人の教師、アシスタントが、まだワクチン接種を終えていないという点である。いわば、見切り発車ともいえるが、見切り発車は、イスラエルでは珍しいことではない。

新学期が始まる9月1日、ベネット首相は、教育相とともに、南部の学校を訪問。「登校を続けられるように最善を尽くす」と語った。しかし、必ずそうなるとは約束しなかったとのこと。

登校する子供たちやその親たちは、久しぶりに登校する喜び、通常の生活に戻れたようなよろこびはあるものの、不安もありという複雑な思いを語っている。しかし、長期にわたって子供が学校へ行かないことがよくないことはわかっているので、おおむね、政府のこの措置を受け入れているもようである。

ベネット首相は、今もロックダウンはできるだけ避けるとし、学校生活だけでなく、来週から始まる新年、ヨム・キプール、仮庵の祭りと続く例祭を家族で祝えるようにするとの目標を変えていない。

www.timesofisrael.com/as-kids-head-back-to-class-bennett-says-no-guarantees-schools-will-stay-open/

今後、子供たちの間で感染が拡大するか否か、大きな賭けだとも言われているが、保健省のアシュ・コロナ担当は、科学的なデータからの結論であり、賭けではないと主張している。現実として、子供たちの間でしばらくは感染が拡大すると予想されているが、どの程度になるかは、蓋をあけてみないとわからないとのこと。

www.ynetnews.com/article/hyv445hbt

イスラエルの感染状況:保健省データより

イスラエルでは、感染爆発がおさまらず、24時間の新規感染者数が火曜水曜と、1万1000人を超え、水曜は1万1187人と記録を更新し続けている。陽性率も7.92%と高い。

入院患者は1109人。このうち重症者は666人。人工呼吸器依存者が149人とこちらは、若干減少に転じているが、10万人あたりの感染者は、世界でもトップクラスなので、重症者もまだ増える可能性が高い。

EU諸国などから、イスラエル人の入国を拒否する国々も出てきている。

datadashboard.health.gov.il/COVID-19/general?utm_source=go.gov.il&utm_medium=referral

世界でも最速にワクチン接種をすすめたイスラエル(2回完了者549万人/930万人)で、なぜそこまで感染者が増えるのか。

世界では、ワクチンせずに、自然抗体で対処する方が、より効果的であるとか、また、抗体依存性感染増強で、抗体に対抗するウイルスが次々出てきて、感染を悪化させるとして、ワクチンに警鐘を鳴らす意見も決して小さくない。

現状として、それもまた完全に否定できないだろう。イスラエルの専門家も、「我々はコロナについて、何も分かってないとへりくだらなければならない」と言っているように、イスラエルも手探りなのである。

いずれにしても、ワクチンだけでは解決にならないということはすでに、皆が納得していることなので、マスクの着用、手洗い他、治療薬の開発に期待が向けられている。

なんとも恐ろしいことではあるが、何もせずに、自然抗体を期待するというのは、リスクが大きすぎるというのが、イスラエルの考え方である。今の段階では、以下のような結果から、ともかくもワクチン接種を進めることで、国全体の感染者や重症化、死者を減らそうと考えている。

1)ワクチン接種していない人の間で感染と重症化の可能性が高い

10万人あたりでみた有症患者数
スクリーンショット イスラエル保健省https://datadashboard.health.gov.il/COVID-19/general?utm_source=go.gov.il&utm_medium=referral

単純に感染者(無症状、有症)の数でいくと、感染者数も重症者数も、ワクチン接種を終えている人の方が、接種していない人よりも多いという結果になる

しかし、これをそれぞれ10万人あたりにしてみると、圧倒的にワクチン接種していない人の方が、感染者数、重症数ともに多いことがわかる。

これは、ワクチン接種完了者の総数が、未接種者総数よりも多い、つまり分母が大きいので、たとえ感染者総数が身接種者よりも多かったとしても、その割合でみれば、逆転するということである。

2)ワクチンの効果は時間とともに弱くなるので3回目必要

感染者の動向を見ると、8月ごろから最初にワクチン接種を受けた60歳以上の人のあいだで、感染者数が急増した。ワクチンによって作られた抗体の量が減っていることもわかった。このため3回目接種が始まったが、今少しづつ、60歳以上の重症数が減ってきている。

このため、イスラエルでは、急いで、60歳以下の人々にも3回目接種を開始。範囲を12歳以上にまで拡大して3回目接種を実施。これまでにすでに235万人以上が3回目の接種を完了した。少しづつだが、重症者数は減少に転じる日もではじめている。

一方、3回目接種完了後に感染した人が14人発見されたとの報告が出ていおり、今後に影を落としている。

www.timesofisrael.com/tv-14-israelis-who-got-3rd-shot-later-infected-with-covid-19/

3)6-11歳へのワクチン接種は要検討

ベネット首相は、まだワクチン接種をしていない6-11歳の児童へのワクチンについては、今はまだ、アメリカの発表を待つとの姿勢を表明した。ワクチンの長期的な副作用がまだ未知ということは、子供への接種は特に慎重にしなければならない。

しかし、ベネット首相は、おそらくすぐにもアメリカはこれを奨励すると予想しており、その時はイスラエルもすぐに6-11歳児への接種を開始すると言っている。

石のひとりごと

世界はなんとも恐ろしいことになってきているようである。今から10年後、20年後、どうなっているだろうか。イスラエルの今の決断が、祝福となるのか、呪いとなるのかは、今の時点では、だれにもわからないということである。

それでもチャレンジするというところが、神とたかったヤコブを思い出させる。その必死に負けて、主がヤコブを祝福されたように、今のイスラエルも祝福してくださるように祈る。

ヤコブは、ひとりだけ後に残った。するとある人が夜明けまで彼と格闘した。ところがその人は、ヤコブに勝てないのを見てとって、ヤコブのもののつがいを打ったので、その人と格闘しているうちに、ヤコブのもものつがいがはずれた。

するとその人は言った。「わたしを去らせよ。夜が明けるから。」しかしヤコブは答えた。「私はあなたを去らせません。私を祝福してくださらなければ。」その人は言った。「あなたの名はなんというのか。」彼は答えた。「ヤコブです。」

その人は言った。「あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたは神と戦い、人と戦って、勝ったからだ。」ヤコブが、どうかあなたの名を教えてください。」と尋ねると、その人は、「いったい、なぜ、あなたがわたしの名を尋ねるのか」と言って、その場で彼を祝福した。(創世記32:24-30)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。