イスラエルでは、3日(日)、大学や短期大学など高等教育機関で新年度が始まった。イスラエルでは、秋の例祭で新年を迎えるので、この時期に新年度となる。
今年は、戦争になってから2回目の新年度である。Ynetによると、昨年度は、本来学生であるはずの5人に1人が、予備役兵として兵役についており、約7万人が大学に戻れなくなっていた。今年も同じぐらいになると予想されている。
Ynetによると、今年は、ヘブライ大学から2000人、テルアビブ大学から1600人、アリエル大学1900人、ベン・グリオン大学1700人、バルイラン大学1700人、テクニオン1000人以上とのこと。専門分野である工学部、医学部、法学部からも予備役に出ている。
一方、大学への入学希望者にも変化が出ているという。長引く戦争で、PTSDを患っている人も多い。心理学やソーシャルワーク、理学、作業療法を学ぼうとする学生が増えている。
また、実際面での活躍を希望してか、テクノロジーやエンジニア関連、医学部への志望者も増えている。アイアンドームなど、イスラエルを今守っている迎撃ミサイルは、アメリカのMITとも対等に立つテクニオンの技術である。国への貢献意識の高さを思わされる。
戦争での活躍も考えてか、アラビア語とその文学を希望する人が40%、イスラム教と中東研究を希望する人も31%増えているとのこと。敵だからと敬遠するのではなく、それを学んで理解しようとする。イスラエル人らしい動きだと思う。
www.ynetnews.com/article/hytzwjn11jl
しかし、今世界では、イスラエルの研究機関や研究者に対するボイコットが拡大しているとのこと。先日、京都大学へ行く機会があったが、日本でも学者の間では、イスラエルに関する情報は、おおむねネガティブとのことであった。
石のひとりごと
イスラエルは、好きで戦争しているのではない。戦争などまったくやりたくないのに、させられているのである。大事な知的能力を持った若者たちは、本当に学びたいと思っている。
筆者の友人は、イスラエルの大学で日本語を教えているが、前学期に教えたテクニオンの学生が、「ガザでの予備役から今日戻ったので、またカタカナの練習帳を提出できていません。でも必ずやります」と連絡があったとのこと。どんな状況でも学ぶことを諦めない姿勢に頭が下がりますと言われていた。
ホロコーストサバイバーのツェグレディ・ヤーノシュさんが、ホロコーストの最大の損失は、人命とそれ以上に、知的財産とその成長の機会が失われたことだと言っていた。それはユダヤ人だけのことではなく、世界全体にとっての損失なのである。
イスラエルからは、世界に貢献する技術力が、あふれるほどに存在している。にもかかわらず、世界はイスラエルを非難し、イスラエルの研究者をボイコットする。それは、自分で自分の首を占めているようなものだと思う。