目次
今年のプリムは、反司法制度改革に反対する市民たちのデモが、拡大する中でのプリムであった。社会の中にこの改革に反対する人々が拡大する中、政府は、来週にも法案の最終可決に進む可能性もあり、イスラエル軍の中の予備役兵たち、さらには、エリート将校たちからも反対を表明する人々が出ている。
反対派の予備役兵たちは、この法案が可決された場合は、以後、政府に出動を命じられても、応じないと表明している。国の存続にかかわる事態にであることから、8日、ハレヴィ参謀総長は、軍の将校たちとの緊急会議を行った。
エリート予備役パイロットらが反司法改革法案で任務拒否:通信大臣が「地獄へ行け」と非難
政府が押し進める司法制度改革法案への反対派、教育、医療現場や子供達にも拡大している中、イスラエル軍の中でもこの運動が拡大し、予備役兵数百人が、国から動員令があっても応じないと表明していた。
その後、閣僚のスモトリッチ財務相が、「フワラ(西岸地区でイスラエル人2人が殺害されるテロが発生した町)は、壊滅すべきだ。」と過激な発言をし、国内外から激しい避難をあびた。スモトリッチ財務相は、その後これを撤回、謝罪もしたが、心にあるからこそそんな発言が出たのであり、もはや取り消すことは不可能である。
こういう発言をする大臣のいる政権が、司法制度改革を通じて、ブレーキをかけられなくなることは受け入れられないとして、イスラエル空軍の中でも最もエリート部隊と目されている第69飛行隊予備役飛行隊の予備役40人中、37人が、この制度に反対する文書に署名して政府に提出した。軍は通常、政府の方針にそって動くものなので、こんな過激な政府の命令には従えないと言っているのである。
この予備役将校たちは、かつてシリアの核施設を破壊する作戦を遂行したエリート中のエリートである。さらに、これに続いて、陸軍の精鋭、マグラン偵察部隊400人の予備役隊員も、同様の文書に署名して、ギャラント国防相に提出した。名前は不明だが、海軍からも同様の動きがあったとのこと。
これほどの人々が今、政府から動員があっても応じないということは、イスラエルにとっては非常に深刻な事態である。国会の論議の中では、政府の中からも、「彼らは敵ではない。私たちの兄弟なのだ」と一致を呼びかける声も出た。
しかし、この動きを強力に批判した閣僚もいた。リクードのシュロモー・カルヒ通信相は、国の防衛を放り出すことに怒りを発し、プリムのメッセージを引き合いに出して、次のようにツイッターでも発信した。
「彼らは彼らこそが支配者になろうとしているのだ。私たちは、今、政権を担っているのは、今こそ立ち上がって司法制度改革をするためなのだ。支配者たち(反対勢力)の前に立ち上がらなければならない。あなた方(予備役兵たち)がいなくても、国は守れる。あなたたちはどうぞ地獄へ行ってください。」
この投稿は、1日で100万人が見て、大きな物議となった。
ハレヴィ参謀総長が予備役将校たちと緊急会議:命令が“合法的”なら国を守る義務は遂行する
こうした事態を受けて、イスラエル軍のハレヴィ参謀総長は、予備役将校たちと緊急会議を行った。そこで、国の招集を拒否するということは、軍人として赤線を越えているということで合意した。
しかしながら、イスラエル軍は、その価値と合法性に基づいて任務を遂行するとも付け加えた。
今後、緊急事態に、イスラエル軍は一致できるのだろうか。軍が、政府と一致しないという、こんな事態は確かにこれまでにまったくなかった事態である。
政府は、4月5日からの過越の祭りの前、来週にも1回目を可決通過した法案の採択に進む可能性があるとのニュースが出ていたので、反対派の行動も今後、さらに活発化していくだろう。
実際、今日9日には、ネタニヤフ首相が、イタリアへ公式訪問に出発する日だが、首相を乗せるエルアル航空では、首相専用機をを操縦するパイロットを探すのに苦労していた。また、エルサレムの首相官邸から空港までは、ヘリコプターでの移動になるという。反対派が、首相の動きを妨害しようと構えているからである。
日本時間の今夕からこの動きは活発化する。市民と警察が大きな衝突にならないよう祈る。
ヒズボラが嘲笑:イスラエルは終わりに近づいている
歴史的にも内部分裂が最も、イスラエルの外敵を喜ばせることになり、最悪、イスラエルが国を失うことにもなってきた。
案の定、ヒズボラのナスララ党首は6日、演説の中で、「イスラエルは終わりに近づいている」と語った。
また、極右政党のベン・グビル国内治安担当(警察庁担当)が、パレスチナ人テロリストに死刑を課す法案を出し、1回目採択でが可決したことについて、「おろかなことだ。これでジハード(殉教)への思いが高まって、さらにテロが増える」と述べた。
www.timesofisrael.com/nasrallah-recent-events-in-israel-show-nation-is-nearing-its-end/
石のひとりごと
司法制度改革問題は、今の所はまだ、人々の日常生活を変える事態にはなっていないが、じわじわとイスラエルの根幹を揺るがす事態になりつつあるのかもしれない。
イスラエル社会の分断は今、単に司法制度改革に反対かどうかの問題でなく、社会の中で、「宗教的右派のユダヤ」という概念と、「リベラルなイスラエル」という概念のどちらに属するのかという、もっと本質的な問題になりつつあるとの分析が出ている。
どういうことかというと、左派世俗は、実質イスラエルを発展、運営してきた層であり、主に労働層である。一方右派ユダヤ教層は、これまでからも政府を動かしてきたのではあるが、実質的には、前者に支えられてきたという現状がある。
今の問題は、本質的には、この対立であり、自分はどちらに所属するのかでの分裂だということである。この2陣営については、究極的には、神を中心とするのか、人間を中心とするのかという分断にまでも到達していくことになる。
だからこそ、どちらの側もが、真剣にイスラエルの存続にとって、自分こそが正しい道だと確信しているので、妥協は不可能なまでに難しいということである。
本来なら、神を中心にした方がよいのではあるが、現時点では、その人々の動きこそが、イスラエルに混乱をもたらしたということであり、彼らが、イスラエルの選ぶべき道とはとうてい言えない状況にある。
早速ヒズボラが、指をさしたこでもわかるように、ユダヤ人同士が争う姿は、周囲の敵たちに蔑まれる結果になる。イスラエルが国を失うのは、まさにこういう時である。
結局のところ、最たる問題はどちらの側にも主が不在となっている事ではないだろうか。今、主が、ネタニヤフ首相と、全イスラエルに、自分の主張ではなく、主を見上げる心を与えてくださり、この危機の打開する道へと導いてくださるように。
主は、言われる。「やめよ。知れ。わたしこそ神。わたしこそ国々の間で、あがめられ、地の上であがめられる。(詩篇46:10)