目次
司法制度改革法案2件目来週決議か:反対デモ再燃
新政権になって以来、ずっと問題になり続けている司法制度改革案。現在、政府は、改革につながる2つ目の法案―司法が政府の人選や政策が“合理的”でないと判断する際に、これを却下する権利を無くする(実際には“合理性”の基準を決める)法案を国会今季中(7月末まで)に成立させようとする動きにある。
このいわゆる「合理性法案」は、すでに国会で1回目の可決を通過しており、正式発表ではないが、2回目、3回目の決議を明日日曜、月曜で行い、火曜日には、法律として成立させる計画とみられている。このスケジュールで法案が可決した場合、国会を延期しない限り、結果について論議をする時間はない。
別項で紹介するが、ネタニヤフ首相は、水曜、合理性法案は、民主主義を立て上げるものだと市民に訴えるビデオを発表し、法案決議を中止する意向はないということを明確に表明した。これを受けて、反対派は、20日、テルアビブで大規模な反対デモを行った。この時、警察との衝突で、15人が逮捕された。
www.timesofisrael.com/at-least-15-arrested-as-protests-turn-fiery-after-pm-doubles-down-on-overhaul/
さらに、この熱波の中、21日、テルアビブから、エルサレム(約70キロ)を歩くという法案反対デモ行進を開始した。途中で参加する人々もあり、デモ隊は1万人にまで膨れ上がった。昨日金曜日にはエルサレムまで、徒歩で4―5時間のショーレッシュという地点に到着した。デモ隊は、そこで共に安息日入りの祈りを捧げ、そのままキャンプしている。
本日、安息日明けに、エルサレムの国会、首相官邸に向けて行進を再開する。その後も主催者は、無期限で国会前で寝泊まりしながら、この法案に反対を表明する意向とのこと。明日からのデモは、エルサレムだけでなく、テルアビブで最大、また全国でも行われると予想されている。
IAFパイロット400人含む予備役1142人が反対に署名:ギャラント防衛相が反対尽力と
司法制度改革案が出て以来、特に物議となっているのが、イスラエル軍予備役兵たちが、独裁政府の招集には応じないと表明している点である。兵士が政治問題で本来の任務を放棄することに賛否両論出ている。
3月に問題となった最初の法案審議の時、招集をボイコットするとして反対を表明した空軍予備役パイロットは1000人を超えていた。戦闘機に乗るベテランパイロットの招集拒否は、非常に深刻な問題である。ギャラント防衛相は、政府に法案の停止を警告。政府はギャラント氏を解任する事態となった。
すると、市民60―70万人が反対したほか、全国的な学校や病院も含む労働ストとなった。国が麻痺するのを受けて、ネタニヤフ首相は、この法案の審議を過越休暇以降に延期すると発表した。ギャラント国防相には、復帰を命じた。
今回、2案目の法案に反対する表明した予備役兵は、1142人で、このうち、空軍パイロットは400人以上と伝えられている。以前より少ない数字である。
それでも1000人を超える予備役兵が、政府に従わないと表明していることは看過できない事なので、ギャラント防衛相が、再びネタニヤフ首相に停止の進言をするかどうかが注目されている。
*司法制度改革法案の経過
司法制度改革法案の最初の大規模な混乱は3月に、政府が、最高裁人事を決める委員会を政府関係者が多数になる法案を提出したところから始まった。これについては、上記のように軍予備役の反対、大規模な国民の反対を受けて、決議はいったん棚上げとされた。
その後、最高裁人事を決める委員会の国会議員2人を決める選挙が行われたが、2人とも与党側の議員が選ばれると目されていたところ、なんと、1人は野党議員が先に選ばれた。
これは与党の中に、野党議員に投票した議員がいたということを意味する。与党は国会過半数なので、必ず勝つはずだからである。与党にとっては大きな打撃だった。その後、過越休暇後もこれについては、審議がされたような報道はない。
しかし、政府は、別の法案、今問題になっている合理性法案を出してきて、今の問題に発展しているということである。
石のひとりごと
司法制度改革法案。今のネタニヤフ政権が昨年末に就任して以来、ずっと続いている問題である。右派たちがこれに賛同する一方、左派、世俗派たちは、イスラエルの根本である民主主義が揺らいで、国の性質も変わってしまうと反対し続けている。この人々のうちに見えるのは、愛する祖国への想いである。
しかし、ニュースはよく見なければならない。今夜からのデモがどうなるのかを見なければならないのではあるが、現段階で、デモに参加する人の数は、最初の時より、かなり減っているように思う。
また左派系メディアのハアレツ、またどちらかというと左派中道?とみられるTimes of Israel は、司法制度改革のデモについての記事を常にトップに置いているが、その他のどちらかといえば右派?系のメディアは、不思議なほどにデモの報道が小さくなっている。
さては、ネタニヤフ政権側から、あまりとりあげないように手回しされたのかどうかだが、今夜から始まる全国的なデモのレベルやそれを取り上げる記事の大きさが、どの程度になるか注目されるところである。
この問題について、現地で聞くと、一般大衆の多くは、ある程度の司法改革は必要と考えているが、やりすぎはよくないと答える人が多い。この人々は、今進んでいる司法制度改革に懸念と高い関心を持ってはいるが、デモには参加するほどでもないという感じである。
また、デモについては、その現場に行かなければ、日常生活にほとんど影響はなく、こうした中でも通常の日常が続いているということである。