南レバノンからミサイル34発・ガザからロケット弾44発:イスラエル軍反撃中 2023.4.7(日本時間16:00pm)

ガザのロケット弾を迎撃するアイアンドームApril 7, 2023. April 7, 2023 (Photo by MOHAMMED ABED / AFP)

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南レバノンからミサイル34発:イスラエルは南レバノンのハマスへ反撃

過越の祭日6日午後、イスラエル北部に向けて、南レバノンからミサイルが34発発射された。迎撃ミサイルが25発撃墜したが、少なくとも5発がイスラエル領内に着弾した。

被害にあったのは、西ガリラヤ地方の国境地域、シュロミの住宅地にも着弾し、男性が破片にあたって負傷。女性1人がシェルターに駆け込もうとして転んで負傷した。いずれも軽傷とのこと。

www.timesofisrael.com/israel-hits-hamas-tunnels-weapons-sites-in-response-to-rocket-attacks-from-gaza-lebanon/

この直前に、レバノンの過激派ヒズボラが、イスラエルの治安部隊が、神殿の丘のアルアクサモスク内部に入ったことを批判。“いかなる手”を使っても、これに対処するとの声明を発していたことから、当初、ヒズボラによるものと考えられたが、直接の声明は出ておらず、否定したとの情報もあった。

レバノンからのミサイルは、2021年5月に親パレスチナ組織から6発(後の情報では9発)が発射されたが、これほどの規模の攻撃がレバノン側から来るのは2006年のレバノン戦争以来である。

mtolive.net/レバノンからロケット弾6発:全部イスラエルに/

6日夜には、南レバノンからミサイルがさらに2発、上ガリラヤ地方のレバノンとの国境メトゥラにむけて発射された。被害はなし。

イスラエルは、攻撃はハマスによるとして、ガザへの空爆を行っていたが、7日朝4時すぎ(日本時間午前10時過ぎ)には、南レバノンのミサイルを発射したとみられる地点への空爆を実施した。

ベイルートから南、イスラエルとの国境に近いツールでも爆撃が報告されており、発射されたイスラエルのミサイルは30発を超えるとみられる。

なお、ミサイル攻撃を受けているイスラエル北部には、このような攻撃を経験したことがない新移民や、ウクライナやロシアから戦闘を逃れてきた移住者も多数住んでいる。

移住省は、ワッツアップによる新移民のメンタルケア・ホットライン(ロシア語、フランス語、スペイン語、英語、アラム語)を開始したとのこと。

www.jpost.com/health-and-wellness/article-738659

ガザからもロケット弾:イスラエルはガザへも反撃

イスラエルからは、緊急閣議が行われ、攻撃は、南レバノンのパレスチナ難民キャンプにいるハマスによるものと断定。6日午後、ガザのハマスの武器庫と地下トンネル2本への空爆を実施した。この時、ハマスは、対空ミサイルで反撃してきたとのこと。

以下はガザへの反撃の空爆を行うイスラエル軍の様子

これに対し、ガザからは、再びロケット弾が発射され、アシュケロンでもサイレンがなった。南部地域に続いて、テルアビブに近い、リション・レチオンでも公共シェルターが解放された。

昨夜だけで44発のロケット弾やミサイルが、ガザからイスラエルに向けて発射されたが、迎撃ミサイルが撃墜しなかったもののうち、1発はスデロットに着弾。14発が空き地に着弾した。南部住民は、シェルターで夜を過ごした。

以下は着弾したスデロットの家屋の様子。人的被害は報告されていない。

以下はスデロットでのサイレンで逃げる人々の様子

イスラエル治安閣議:全体像から攻撃はハマスと

Amos Ben-Gershom (GPO)

イスラエルでは、ネタニヤフ首相が、ただちに治安閣議を招集。方針について協議した。

現在、イスラエルでは、ガザからのミサイルに加えて、神殿の丘での暴動、西岸地区での衝突に、イスラエル国内アラブ系地域でも衝突が発生している。その中での南レバノン地域からのミサイルの雨ということである。

問題は、いったい何が起こっており、だれを非難し、どこへ反撃をするかであった。南レバノンを実質、支配しているのはヒズボラだが、パレスチナ難民キャンプもあるため、ハマスなど過激なパレスチナ組織による可能性もある。レバノンだからといって、ただちにヒズボラへの反撃をすることは危険であった。

元イスラエル軍諜報部のアモス・ヤディン氏によると、イスラエルは2006年の第二次レバノン戦争で、ヒズボラについては、ヒズボラだけをたたいても意味がないことを学んだという。次回、ヒズボラと対峙する時は、レバノン全体を滅ぼすほどの戦闘になり、それはそのまま中東全体の戦争に発展することを意味する。

特にここ数週間、イスラエルは、シリア領内のイラン関連施設を継続して攻撃しており、イラン革命軍顧問2人が死亡して、シリアやイランとの対立もエスカレートしている。その背後にいるロシア、中国をもまきこんで、中東から世界戦争の発端になる可能性も出てくる。

今、ヒズボラが、イスラエルへ攻撃を否定しているのは、次回のイスラエルとの対峙がそこまで深刻になることを十分、理解して、エスカレートを避けようとしているも考えられた。

そこで、最終的な閣議決定は、南レバノンから34発のミサイルについては、その地域にいるハマスによるものとの判断とし、ハマスへの攻撃をおこなっているということである。この方針に基づき、ガザだけでなく、南レバノンへも攻撃を開始したが、ヒズボラへの攻撃ではないと強調する形である。

ハマス指導者ハニエ:パレスチナ人はイスラエルのアル・アクサモスク攻撃をゆるさない

イシュマエル・ハニエDalati Nohra/Lebanese Official Government via AP)

その後、レバノンのベイルートに滞在するハマス指導者の一人、イシュマエル・ハニエは、エルサレムのアルアクサモスクに、イスラエルが野蛮な攻撃をすることを見過ごすことはないと発表。レバノンからのミサイル攻撃を認めた形となった。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/in-beirut-haniyeh-says-palestinians-will-not-sit-idly-by-amid-israeli-aggression/

レバノンのミカティ首相:領内からイスラエルへの攻撃が実施されたことを非難

レバノンのミカティ首相は、自国領内からイスラエルへの攻撃が行われたことを非難。いかなるエスカレートも受け入れないと述べた。しかし、レバノン自体は国が崩壊しかかっており、このような声明は、ほとんど意味はないだろう。

これからどうなる?:全方面でエスカレートする?ヒズボラ、イランも巻き込むか?

イスラエルの治安部隊が、ラマダン中にエルサレムのアルアクサモスクに突入したということに加え、ガザと南レバノンにミサイル攻撃で反撃を行っているということである。ラマダン中だけに、今後、エルサレム、アルアクサモスク、西岸地区やあらゆる国境線、また国内のアラブ人との衝突など、あらゆる方面で、暴力のエスカレートが懸念されている。

さらに、南レバノンを支配するのは、ヒズボラなので、いくらハマスによるものとはいえ、ヒズボラが知らなかったはずはない。ハマスが、高度のミサイルを独自で持てるとも考えにくい。ということは、その背後にいるイランが知らなかったということもありえないわけである。

イスラエルとイランはもうすでに、水面下での戦闘状態にあることから、この一連の出来事の背後にイランの策略があるとの指摘もある。大きなことにならないうちに、この“水面下”の戦闘で、とりあえず、今回も一段落してくれたらよいのだが。。今日は、イスラムの礼拝日の金曜日である。

エスカレートが強く懸念される。ともかくも、沸騰している事態の沈静化の祈りが必要である。

www.jpost.com/middle-east/article-738631

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。