北部国境でイスラエル軍1万3000人が対ヒズボラ軍事訓練:イラン情勢との関連は? 2022.12.15

Troops of the IDF's 99th division during a drill in northern Israel, December 1, 2022. (Israel Defense Forces, file)

突然の大規模訓練

パレスチナ人との衝突が厳しい状況にあるが、それより危険な状況にあるというのが、北部国境のヒズボラとの対立である。イスラエル軍は、11日夜から3日間の軍事訓練「暑い冬2」を予告なしに行った。

訓練に参加したのは、兵士8000人と予備役兵5000人とかなり大規模である。今回の訓練は、突然の事態でもすぐに動けるようにする訓練であったとのこと。

ヒズボラは、イランの傀儡で、その支援により、イスラエルに向けて15万発のミサイルの準備を終えている。本格的に打ち込んで来たら、イスラエルに飛来するミサイルは1500から3000発とも予想されている。

www.timesofisrael.com/idf-launches-snap-drill-with-thousands-of-troops-simulating-fighting-in-north/

ヒズボラ結成から40年

ヒズボラが結成されたのは、40年前の1982年である。レバノン生まれのハニン・がダールさんは、ワシントンポストが開催したヒズボラ40周年を考えるシンポジウム(12月2日開催)で、過去を振り返って次のように語っている。

かつて南レバノンには、パレスチナ人たち(PLO)が居座り、住民には迷惑であった。彼らと戦うイスラエルが来た時、レバノン市民は歓迎したという。しかし、イスラエルが占領者になっていったので、今度はヒズボラが、レジスタンスとし指示されるようになった。

しかし、ヒズボラもまた暴力を振るうようになり、イスラエルとの不必要な戦争をするようになった。2000年にイスラエルが南レバノンから撤退したあとは、政治にも影響力を及ぼすようになった。イランの支援で、高度な武器を持つようになり、レバノン市民はもはやヒズボラを指示していないと語っている。

www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/hezbollah-turns-40-implications-groups-internal-regional-and-strategic-shifts

イランの動き:ロシア最大の軍事支援国にみる危険性

ヒズボラはイランの支援を受けているので、イラン情勢の影響を大きく反映することになる。そのイランだが、女性のヒジャブの付け方を指摘された女性が死亡したことに端を発する激しい反政府でもが、今も全国で続いている。政府は暴力的に弾圧しており、2人目を公開絞首刑にしたといったニュースも入っている。(BBC)

www.bbc.com/japanese/63953328

イランの人権活動家通信(HRANA)によると、これまでに当局に殺された人は、未成年63人を含む450人。1万8173人が拘束されているとのこと。

また、イランの最高指導者ハメネイ師については、その姪であるファリデー・モラドハニさんが、世界にむけて、今のイラン政府と断絶するように、YouTubeで呼びかけた。当局はファリデーさんを拘束したという。

jp.reuters.com/article/iran-women-idJPKBN2SI030

こうした中、イランは、ウクライナ侵攻で、世界から非難を受けているロシアへの軍事支援を行っている。10日、ウクライナのオデーサのインフラが、ロシアからの大規模な攻撃を受け、極寒の中、150万人が停電の影響を受けることなった。

この時に使われたのが、イランのドローンであった。ゼレンスキー大統領は飛来した15機のドローンのうち9機を撃墜したと発表したが、それらはイラン製であった。

11日、アメリカの国家安全保障会議のカービー戦略広報担当調整官が、イランとロシアの軍事協力関係が急速に増大していると発表した。ロシアはそろそろ武器弾薬に不足し始めているのではないかと見られる中、イランが、ロシアに、数百機のドローンを提供したとみられている。今後、イランから弾道ミサイルがロシアに提供されたり、その量産をイランが担当するといったことも考えられるという。

その見返りとして、ロシアは、イランにヘリコプターや防空システムを供与し、さまざまな技術開発での協力していく可能性があるという。アメリカは、イランとロシアの連携が、周辺中東諸国(イスラエル含む)にとっての脅威になりうると警告した。

当然、イスラエルもそうした情報の中、イランだけでなく、ヒズボラの脅威にも備えているはずである。現在、北部国境には、防護壁が設置されているほか、地下からは、ガザのハマスのように、レバノンからイスラエル領内に続く攻撃用の地下トンネルも発見されているので、警戒が必要である。

なお先週、国連の代表団がこの地下トンネルを見学に来ていた。

www.cnn.co.jp/usa/35197235.html

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。