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1日感染者数さらに更新:3514人
イスラエルでは、先週、1日の感染者が3000人を突破し、今週に入って7日、さらにその数字を更新して、これまでで最悪となる3514人を記録した。検査数に対する陽性率は8%である。
回復者を除いた現在の陽性者総数は、2万9000人を超え、入院を要する人は936人、このうち重症者は454人、人工呼吸器依存者は168人と危機的なまでに急増している。死者は、6日1000人を超えたすでに1040人。
特記すべきクラスターは報じられておらず、感染者は、ほとんどが、アラブ人地域とユダヤ教超正統派地域である。大人数の結婚式や、食事を共にする生活様式、宗教行事が原因と考えられている。
赤40地域1日遅れで8日夜から夜間ロックダウン開始
政府は、感染拡大が著しい赤地域40地域に対し、7日午後7時から翌朝5時までのロックダウンを実施すると発表していた。しかし、赤地域でありながら、ロックダウンを受け入れないと表明する市町村があったため、どの地域でロックダウンを適応するのか合意できず、結局この日にロックダウンを開始することができなかった。
結局7日夕刻には実施することができず、ロックダウンは、8日午後7時から、翌朝5時までの夜間のみ、実施期間は1週間ということで、予定されていた40地域で開始された。
全国のアラブ人居住区、超正統派地域のほとんどが含まれており、チャンネル12によると、ロックダウンの影響を受けているのは、130万人に上る。特に日本人読者にも馴染みのある町としては、以下の町が含まれている。
①ユダヤ人地区
エルサレムの超正統派エリア(ラマット・シュロモー、ラモット、サンヘドリア)、アシュケロンの超正統派エリア、ベイトシェメシュの超正統派エリア、ブネイ・ブラック、ベイタル・イリット、スデロットの超正統派エリア、エイラットの超正統派エリア
②アラブ人地区
東エルサレム(ベイト・ハニナ、アトゥル、シュアハット、イスフィアなど)、ウム・アル・ファハン、ダリアット・エルカルメル(ドルーズ)、クファル・カナ、ナザレ、イスフィア、アララなど
これらの地域では、午後7時から5時までの間、家から500メートル以上離れてはならないとされる。この時間レストラン等は閉店。スーパー、薬局など、エッセンシャル以外のビジネスは、日中も閉鎖。学校も休校になっている。赤地域への出入りは禁止ではないが、感染者の出入りなどを監視する警察の体制は、強化されるとのこと。
www.jpost.com/breaking-news/coronavirus-in-israel-new-record-high-of-3392-new-cases-641463
ハアレツ紙によると、最新のデータで、コロナ陽性となった学生は1817人。隔離になっている学生は、2万4780人。この1週間で42校が休校、150の幼稚園保育園が休園になった。
超正統派の反発:エルサレム市長も疑問視
ユダヤ教超正統派地域が、「超正統派地域だけのロックダウンは将来の差別につながる。やるなら全国的にするべきだ。」と訴え、反発した。エルサレム南部のベイタル・イリット(6万人)市は、「何を根拠に超正統派地域をロックダウンして、どのような効果が出るのかを提示し、納得できるまでロックダウンは受け入れない。」と怒りを表明した。
エイラットは当初、町全体のロックダウンと言われていたが、市の反発を受け、部分的なロックダウンにとどまった。
エルサレム氏のモシェ・リヨン市長は、保健省の指示には従うとしながらも、夜間だけのロックダウンに疑問を表明している。リヨン市長は、「エルサレムでの主な感染拡大の原因は、大人数の結婚式であったことがわかっている。
ロックダウンとされたラモット地区には5万5000人が住んでいるが、夜間に出歩くのはこのうちの300人ほどだ。論理的に考えれば、この町での夜間だけのロックダウンになんの意味があるのか。」と疑問を語る。
8日夜、ロックダウンが開始されるのあたり、特に超正統派地域で反発があるのではないかと、警察が警戒したが、今の所、衝突は報告されていない。
www.timesofisrael.com/police-gear-up-to-enforce-nightly-curfew-ultra-orthodox-town-may-resist-order/
対立・混乱する与野党:予防ロックダウン案も
コロナ対策については、イスラエルでも賛否両論で、ほんとうに難しい対処がせまられている。素人ながら、ガムズ教授の対策は、あまりにも細分化しすぎて、そこまで確実な地域分けはできないのではないかと思われるところである。
たとえば、エルサレムでは、サンヒドリアと別の地域は道ひとつで分けられているので、人の動きをきっちりとは分離できないだろう。また、確かに特別な地域だけ、しかも夜間だけ閉じるというのも、そうきっちりとは難しいだろう。
また、アラブ人地域、ユダヤ教超正統派地域で感染するのは、主にイシバなどの若年層なので、重症化しにくく、致死率も低い。この人々を介して、他地域の高齢者に感染が拡大していくのを防がなければならないわけである。
となると、ロックダウンするなら、むしろ、感染流入を防ぐために、感染がすすんでいない地域の方を閉鎖するのはどうかとの意見もある。たとえば、感染拡大が指摘されているブネイ・ブラックをロックダウンするのではなく、逆に、感染拡大が著しくないテルアビブ全体を隔離するというということである。
この他、ネタニヤフ首相が、連立政権を維持するために、超正統派政党の主張を重んじているので、コロナ対処がすすまないのではないか。コロナ対策が政治的な理由にふりまわされているとの批判も高まりつつある。
このように、ガムズ教授、政府への批判が高まる中、ネタニヤフ首相は、野党リーダーのヤイル・ラピード氏、ナフタリ・ベネット氏、アビグドル・リーバーマン氏、アラブ政党のアイマン・オデー氏に、「国民の一致を妨げている」と非難する手紙を出した。
するとリーバーマン氏は、国民に対し、「政府の指示に従うのではなく、それぞれの常識に基づいて行動してほしい。」と反論。
ラピード氏は、「感染拡大が止められていないだけでなく、いまだに100万人近い人が失業したままで、今年中には7万社が倒産するとみられている。今の政権は失敗を認め、早く辞職すべきだ。」とツイートした。
ベネット氏は、「ネタニヤフ首相は、国民の苦悩がわかっていない。国民は、早く明確な方針を聞きたいと願っているのに、それが出てこない。これはリーダーシップではない。」と非難しつつも、リーバーマン氏の発言については、法治国家でするべきことではないと批判した。
石のひとりごと
UAEとの国交など華々しいニュースの背景で、イスラエル国内では、解決どころか、徐々に混乱が深まっており、どんどん深みに入って行っているような重苦しい感じを受ける。この深みから、イスラエルを引き上げてくださるように祈らなければならない。
政府は与野党で互いに非難しあうばかりである。こうなると、国民は、文句を言う暇があったら、それぞれがサバイバルモードになるしかない。
数日前、ガイド学校の仲間たちが、エルサレムで夜に同窓会をしていた。赤地域でないところのレストランだが、席は屋外。少なくとも1.5メートルづつ離れた形で座っていた。
観光ガイドは、今仕事がない。預金していた人はよいが、それぞれが、新しい生活、特に新しい収入源についての模索を始めているようであった。市民たちは、不自由な中、なんとか折り合いをつけつつ、それぞれ前を見据えつつ歩んでいるようである。