今週は、イスラエルを支持する人々とイスラエルを批判する人々の様子が同時に報じられた週だった。
<ニューヨークのイスラエル・パレード> http://www.haaretz.com/blogs/west-of-eden/.premium-1.659048
5月31日、51回目となるニューヨーク、マンハッタンでの親イスラエル派の「イスラエル・パレード」が行われた。主催は50以上のユダヤ系団体。参加者は、主催者によると、ニューヨーク知事や市長を含む4万人のイスラエル支持者が5番街をマーチした。
参加団体の中には、アメリカのボーイスカウトや、イスラエルのユースムーブメントのグループもいた。マーチのあとは、セントラルパークでのコンサートとなる。
多数のシナゴーグの人々がカラフルなTシャツや、旗、バナー、マーチングバンドを伴って歩いている。参加団体のリストを見ると、日曜ということもあるのか、”イーグルズ・ウイング”というクリスチャン・シオニスト以外にクリスチャン団体の参加はない。
ほぼ100%ユダヤ系団体イベントだが、4万人も集まるとはさすがニューヨーク。http://celebrateisraelny.org/parade-video/
<BDS(イスラエル・ボイコット運動)最近のトレンド>
2日、イギリスでは、大学学生連合が、イスラエルが西岸地区とガザ地区で武力行使をしていることや、西岸地区にユダヤ人入植地を拡大していることに反対するとして、組織として、BDSムーブメントに加盟することの決議を行い、賛成19、反対12で、加盟する事を決めた。
*BDS/ Boycott(ボイコット), Divestment(投資停止)and Sanctions(制裁) against Israel
今後、学生連合として反イスラエルデモやボイコット運動を行ったり、1947年11月29日に可決された国連の分割決議に抗議するとして、この日を記念日として、全国でデモ活動を行うことなどを予定している。
なお、イギリスでは、昨年、ロンドンの名門校キングズ・カレッジがすでにBDSに加盟している。
BDSは、代表者や本部があって組織的に動いているわけではなく、今の所、特にヨーロッパでひろがるいわば草の根ムーブメントである。アメリカにもあるが、アメリカにはユダヤ人社会や、キリスト教福音派の存在が大きいため、ヨーロッパよりは拡大がゆっくりしているという。
イスラエルやユダヤ人社会、21世紀のシオニズムなどの動向を研究し、影響力も大きいとされるレウト研究所(テルアビブ基盤のNGO)のエラン・シャイソン氏によると、最近、BDSの動きが変わって来ているという。
今のところ、BDS運動によって、実際にイスラエルやユダヤ企業が倒産するという事態にはなっていないのだが、「イスラエルの悪いイメージ(デモナーゼーション/ 悪魔であるという宣伝)を拡大、定着させる」という目的は達成しつつあるというのである。
例えば、イスラエル軍は、地震などの災害時には医療部隊を派遣するが、そこでイスラエルはその善行の背後で、原住民から移植に使う臓器を集めているという疑いがかけられた。
ここで、たとば日本やアメリカであれば、そういう疑いはまずかからないところだが、イスラエルの場合は、「イスラエルならありうる。調査が必要。」ということになったというのである。
また、最近までは、BDSが、実際のパレスチナ人に直接働きかけることはなかった。それが最近、西岸地区でデモ活動を行ったり、国際社会でロビー活動を始めるなど、パレスチナ人を巻き込む”政治活動”になり始めているとシャイソン氏は指摘する。
その一つが、FIFAにパレスチナ代表が、イスラエルの参加停止を訴えていたことである。この訴えは直前になってパレスチナ側から取り下げることになったのだが、シャイソン氏は、背後でヨーロッパのBDSグループが働いていたと分析している。
こうした”イスラエルに対する憎しみを拡大する”動きが最終的に落ちつく先は、イスラエルを非合法化して存在を抹殺するといいう国際社会の姿だとする悲観的な分析もある。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4663436,00.html
ところで、日本にもBDSはある。その代表が、イスラエルのアハバ化粧品への攻撃である。日本の活動家らは、アハバの工場がパレスチナ人地区にあるとして、ボイコットを呼びかけ,2012年、アハバは日本から撤退している。http://palestine-forum.org/ahava/
しかし、日本から撤退してもアハバにはなんの影響もないし、逆に、日本政府は、今、イスラエルとの技術提携を国をあげて推進しているところである。