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ロックダウンの先は?
イスラエルでは、18日2時からロックダウンが開始され、警察・兵士7000人が配置された。日没後には、道路はかなり空っぽとなり、日が暮れると、シナゴーグの外、通路にはみ出す形で集まって祈っている人々の姿がみられている。
I24ニュースによると、このロックダウンにより、経済的な損失は最も軽く見積もっても、30億ドル(3300億円)。あらたに10万人が職を失うと予測され、経済的困窮や、隔離による精神状態の悪化から自殺する人が増えると懸念されている。
しかし、ロックダウンが功を奏して治るかどうかは疑問視する人も多い。もし、この大きな損失を伴うロックダウンがうまくいかなかったらどうなるのか。もう取るべき道は残されておらず、必然的にスウェーデン式に、犠牲を受け入れて、集団抗体の形成を待つしかない。
しかしイスラエルの場合、医療崩壊となり、犠牲者の数が恐るべき数になる可能性もあり、この道に進むにはリスクが大きすぎるといわれている。この最後のロックダウンが、どうにか功を奏するよう祈るべきだと言われている。
秋の例祭はオンラインか否か
ユダヤ教には、最も律法に厳しいユダヤ教超正統派、近代文化にある程度は合わせて律法を守る保守派、改革派などいろいろ宗派がある。基本的に、安息日や、例祭日には、シナゴーグに集まって、礼拝や祈り、特別な食事をとるという形は同じである。
しかし、今年は、すでに春の過越の祭の時に集まることができなかった。秋の例祭までには終わると思われていたが、イスラエルではロックダウン、アメリカ、ヨーロッパでも、例年のように集まることが難しくなっている。
今、どのように例祭を守り、互いの関係を維持していくのか、それぞれの宗派で、違いが明確になってきたと指摘されている。
集まる超正統派
基本的に超正統派も保守派、改革派も、安息日やその他聖日には働いてはならないという原則から、撮影もコンピューターの使用も禁じられている。このため、超正統派たちは、ロックダウン下でも、シナゴーグにあるだけの部屋に加えて、屋上や庭などに分室をしつらえてでも、集まって共に礼拝と祈りを捧げている。
ここで問題になるのが、角笛を吹く際に、飛沫が飛び散るという問題である。政府は、角笛をどう吹くかの指示を出している。角笛を吹くのは明日になるが、多くは屋外、または窓から外に向けてということになる。室内で吹く場合は、先にマスクを装着するようにと指示されている。
*神戸のユダヤ教シナゴーグ
日本には東京と神戸にシナゴーグがある。神戸のラビ・シュムエルさんは、35歳とまだ若いが、イスラエルから妻と3人の幼い子供をつれて、7年前から日本で活動している。
ラビ・シュムエルさんは、超正統派ハバッド派で、日本在住のユダヤ人やその家族、旅行や仕事で来日するユダヤ人たちに安息の場を
提供している。ここではコシェルで安息日を守ることもできる。若いが人望のあるおおらかな人である。
ここでの新年祭には、100人以上が出席していた。
ラビ・シュムエルさんは、コロナ対策の一環として、シナゴーグの男性たちとともに、屋上にすでにスッカ(仮庵)を設立し、トーラーも移動させていた。明日日曜には、その屋上のスッカで皆で祈り、角笛も吹くことになっているとのこと。
ズーム72時間継続オンラインで礼拝と祈り:アメリカのシナゴーグ300件
欧米のユダヤ人に多い保守派、改革派のラビたちは、この現状に鑑み、聖日中にカメラをまわし、オンラインで礼拝することは律法に違反しないとする決断を下した。ここで使われるのは、ズームである。ズームであれば、礼拝とともに、出席者と話や交流も可能である。
しかし、問題は、ズームの場合、最大でも24時で自動的に接続が切れてしまうという点。スイッチのオンやオフは働きと考えられるので再びオンにすることはできない。新年祭2日後の角笛は聞くことができないということになってしまう。
この問題を解決したのが、アメリカで、ズームのストリーミング担当で、自身もカリフォルニアのシナゴーグに所属するユダヤ人、ミッチ・タリカさんであった。
タリカさんは、所属するシナゴーグのラビ・ヘラーからの依頼を受け、72時間接続を維持できるプログラムを開発することに成功。これにより、アメリカの300のシナゴーグが、律法に違反することなく、オンラインで、共に礼拝、祈り、また角笛の音を聞くことが可能となった。このプログラムは、27−28日のヨム・キプール(大贖罪日)でも使われる予定である。
ラビ・ヘラーのシナゴーグでは、75人で共に礼拝、祈りを行うが、その後、4−5つのグループに分かれてズーム・ミーティングを行い、親交を深めるという。
www.timesofisrael.com/one-zoom-employee-saved-high-holidays-streaming-for-us-300-synagogues/
この他、例祭中、ユダヤ教超教派の団体などが、新年祭2日間の間、礼拝だけでなく、コンサートやセミナーを次々に提供していて、これまでとは違った可能性も引き出している。
www.myjewishlearning.com/article/my-jewish-learnings-rosh-hashanah-program-schedule/
オンラインなので距離があっても問題はならないため、様々んプログラムに参加することで、長年会っていなかった古い友人たちに再会するなどの新たな可能性も出始めている。
イスラエルでは、ベイト・アビハイという組織が、40に上る著名な講師によるレクチャーや、ミュージカル、コンサートを提供している。
www.timesofisrael.com/high-holiday-content-goes-online-for-the-jewish-new-year/
*エルサレム・アッセンブリーオンライン礼拝と祈り
エルサレムでは、人々の外出が自宅から1キロまでとなり、また全員オンライン礼拝に逆戻りとなった。今日土曜日、ユーチューブで礼拝に参加したあと、ズームでの分かち合いを行った。
外出が1キロまでなのだが、メノー牧師とスタッフ数人は、”仕事”ということで、教会まで来ることが許可されたということであった。
まず教会に通っている中国人留学生が一人、陽性となりコロナ・ホテルに隔離されている中からの礼拝参加であった。この他、教会員の隣人Jさんが、コロナで危篤、イエロハム在住の知人kさんは一家全員陽性で、その友人家族は隔離と、次々にコロナ関連の知人がいることがわかった。一方で、隔離していたが陰性だったとプレイズレポートもあった。やはり、コロナがかなり身近になっていることがわかる。
メノー牧師は、コロナホテルに一人で入っている中国人学生はじめ、特に一人暮らしの人々に、経済も含め、困った時は、恥ずかしがらずに、24時間7日、いつでも教会に電話するよう、何度も伝えていた。家族がいる人はまだよいが、一人暮らしの人にとっては、3週間のロックダウンは精神的にも非常に厳しいからである。
オンラインでの礼拝、ズームでの会話は、一人暮らしの人、コロナホテルにいる人にとっては、まさに命取りといってよいほどのものであっただろう。
一方、子供ミニストリーは、かなりオンラインで成功している。ストーリーの読み聞かせや、ゲームも行っている。来週には、ユース世代の子供達を持つ親たちの特別なミーティングが行われるとのことで参加が呼びかけられていた。
世界で再拡大が懸念されるパンデミック
人類に未知である新型コロナパンデミック。いよいよ秋から冬に入ろうとしている。パンデミックが再拡大する様相になっているのは、イスラエルだけではない。特にスペイン、フランス、イギリスで感染者が急増する傾向にあり、局地的なロックダウンも検討されている。
www.bbc.com/news/world-europe-54189575
石のひとりごと
日本では、東京で微妙に増える傾向にある中、幸い、まだ感染拡大とまではなっておらず、制限が緩和される流れになっている。しかし、これから秋冬に入るので、油断は禁物だ。
こうした中、新しい菅首相は、「行政の縦割り打破、既得権、前例主義をうち払って、規制改革を進める。」と打ち出し、デジタル庁の設置を急いでいるとのこと。日本も、いざというときのために、デジタル化を様々な分野で進めておくことは、ぜひ急がなければならい優先課題である。
私たち市民もオンライン化に馴染んでいかなければならない。子供達へのデジタル教育も必要だ。同時に、PCがない、ネット環境がない子供たちをどうするかが課題になる。
キリスト教会でも集まるかオンラインかで、牧師たちは大きな決断をせまられたことと思う。オンライン化ができないで、日曜礼拝をやめてしまうしかなくなっている教会も出てきていると聞く。
無論、超正統派のように、実際に集まる以上の祝福はない。しかし、将来、集まれない時が来るかもしれない。その時に備えて、まだ感染拡大が欧米にようになっていない今、なんとかして、高齢者も含めて、オンラインで集まる準備だけでもしておいたほうがいいのではいないかと、これは個人的な意見である。