ロックダウンで新年祭はじまる 2020.9.18

ロックダウンの必要性と述べるネタニヤフ首相 出展:GPO

今日からロックダウン開始

イスラエルでは、今日日没(日本時間で夜0時)から、ローシュ・ハシャナ(新年祭)が始まる。先週から感染が急拡大し、今週火曜日に24時間の新規感染者が5500人を超えたことから、学校、幼稚園はすでに17日から基本的に閉鎖。今日午後2時(日本時間午後8時)からは、少なくとも3週間の予定で、全国のロックダウンに入る。

しかし、2度目のロックダウンが経済に与える影響は計り知れず、反対意見も多い。政府は木曜夜中まで審議を続けた。その結果、自宅から外出できる範囲は500メートルから1キロまでと軽減されることが決まった。

ただし、全国88箇所を赤ゾーンと指定し、この地域については、さらに厳しい制限が課されるとのこと。木曜夜に政府が発表した地域は、以下の地域を含んでいる。アシュドド、アシュケロン、ベエルシェバ、ベイトシェメシュ、ブネイブラック、ロッド、ネタニヤ、ツファット、ペタフティクバ、リションレチオン、エルサレムの一部など。

www.timesofisrael.com/cabinet-eases-movement-restriction-to-allow-travel-1-kilometer-from-home/

なお、最新のデータでは、新規感染者は、24時間で5238人(検査5万6986件)、入院している人は1190人。このうち、重症者は577人。このうち、これまでの最大、153人が人工呼吸器依存となっている。死者は、8人で合計1169人。これまでのイスラエルの感染者累計は17万5000人を超えた。これは、総人口の2%にあたる。

意味ある?批判多いロックダウン

学校、幼稚園はすでにほとんどが昨日から休校、休園になっている他、今日からは、デリバリー以外のレストランも閉まる。ミュージアムなど文化施設も閉まるし、ジムや、プールも閉まる。ヤドバシェムからも再度閉鎖の知らせがあった。

しかし、1回目のロックダウンと違い、今回は、人々の受け止め方が違っているようである。外出制限の例外としてあげられているケースが多すぎることと、地域による制限の格差から、人々が矛盾と感じること。また、ロックダウンそのものへの疑いもあり、人々が、どこまで政府が出した制限に従うのかも不明である。

外出制限の例外としてあげられているのは、仕事に行く(軍基地に行く)、食料、医薬品を買いにいく、支援物品の受け取り、高齢者など困窮者の支援、国会に行く、デモに参加する、献血する、裁判に出席する、同居家族との運動、葬儀、割礼式の参加・・など。

さらには、空港も閉鎖にならない。外国人の出入りはまだ認められていないが、イスラエル人の出入りは可能だからである。出国先が、安全として指定されているグリーン国であれば、帰国時に2週間の隔離も免除となっている。

西岸地区、ガザ地区からの出入りについては、新年祭(18−6日夜)、ヨムキプール(27日−28日夜)、仮庵の祭り(10月1日から3日夜)閉鎖となる。これも例年通りで、例祭の間の出入りは認められている。

こうした中、レストランや中小企業の中には、これ以上のロックダウンでは、倒産してしまうと、政府の指示に従わず、開業するとの動きもある。

www.jpost.com/israel-news/govt-approves-high-holy-day-regulations-lockdown-starts-friday-642581

政府は警察官6000人、イスラエル軍兵士1000人を動員して、違反者をとりしまるとのこと。とりしまりの対象は、個人というより、主には、違反して開店している店や、大きな集会などをとりしまる方向になるとみられる。違反者には罰金が課される。

新型コロナでは、多くの人が軽症で終わるので、どこまでの危機感を持つべきかが難しい。しかし、感染して死亡する人は確かにいるので油断することはできない。

最近の死者の中には、35歳のラビ・ピンハス・ワルドステインさんが含まれていた。ワルドステインさん一家は、2年前に、1歳の子どもを癌で亡くしており、今、続いて父親を失ったことになる。残された家族は妻と7人の子ども。最年少は6ヶ月の子が、コロナで父親を失った。

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/287129

感染者激増に対処:地下駐車場病棟再開へ

緊急用地下駐車場病棟(ミサイル攻撃、放射能、毒ガス攻撃にも対応)ランバン・ホスピタル

イスラエルでは、先週火曜、24時間の感染者が5500人を超えた。ロックダウンに入るとはいえ、家の中で家族がともに過ごすことになり、家庭内感染を防ぐことはできないだろう。

病院では、すでに収容人数を超えた患者数が入院を必要とする事態になっているころから、ミサイル攻撃に備えて、地下駐車場から病院に早変わりする施設を再開し、コロナ患者を受け入れることとなった。

準備されたのは、ハイファのランバン病院、ペタフ・ティクバのベーリンソン医療センターの2箇所。

ランバン・ホスピタルの通常の病棟には、コロナ病床が70床設置されているが、現在65床が埋まっており、満床が近づいている。このうち、23人が重傷、10人は人工呼吸器、1人はエクモに依存している。

ランバン・ホスピタルにある緊急時地下駐車場病棟では、まず110床の準備を始め、最大770床まで受け入れが可能となる。人工呼吸器も170人まで受け入れ可能である。この病院では、施設だけでなく、人員の配置の準備も整えられている。

2週間以内に準備は整うとのことで、準備が整い次第、コロナ病棟全体が地下に移行する。

ベーリンソン・ホスピタルの地下病棟では、最大206床、人工呼吸器200基の稼働が可能である。すでに40人のコロナ患者が地下病棟で、治療を受けている。

www.timesofisrael.com/hospitals-open-underground-wartime-wards-to-ready-for-surge-in-covid-19-patients/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。