ウクライナ問題について、中立を継続してきたイスラエルだが、10日、ラピード首相は、「市民を標的にしたロシアの攻撃を強く非難する。」と公式に表明する声明を出した。ラピード首相はまた、犠牲者の家族とウクライナの人々に心からお悔やみ申し上げる。」と述べた。
すると、在イスラエルのロシア大使館のイエブゲン・コミチャック大使が、その数時間後に「ウクライナがドンバス地方でテロ行為をしていたとき、イスラエルは何もしなかったではないか。」と反発声明を出した。
いいかえれば、イスラエルは、ロシアの行為を非難しているが、ウクライナの行為は一回も非難したことがないと非難し返したということである。
ロシア大使館はまた、「イスラエルは、この8年間、ウクライナのテロリストらが、ドンバス地方の市民を攻撃していた間、見ないふりをしていた。ハリコフで難民が虐殺された時も、クピャンスクやその他のウクライナの町で、ネオナチのアゾフ部隊が、避難民たちにひどい大虐殺を働いた時も見ないふりをしていた。
ロシア人ジャーナリストのダリヤ・ドゥジーナが殺されたことや、クリミア橋でのテロ行為、キーフでの犯罪行為にも何もしなかった。」と並べ上げたとのこと。プーチン大統領からの声明はない。
www.timesofisrael.com/russia-in-retort-to-lapid-israel-stood-silent-in-face-of-kyivs-terrorism/
<石のひとりごと>
イスラエルがこれまで、ウクライナ問題で中立を保ってきたが、その理由は、シリアでイランを攻撃することをロシアに黙認してもらうこと、また、ガザへ軍事支援を続けるイランに睨みをきかせておいてもらうためであった。
しかし、今、そのイランが国内での反政府デモで、これまでにない混乱状態となっている。国際社会との核合意再建も頓挫している。イスラエルを攻撃するどころではなくなっている可能性もある。
そういう中で、レバノンのヒズボラへの支援もどうなっているのか。レバノンとの海上国境合意もまもなくとの報道が入っているが、これもイランの動向と関係があるかもしれない。
ラピード首相が、表立ってロシアを非難したのは、こうした新しい状況を見ての決断であったかもしれない。非常に難しい駆け引きであり、タイミングを逃すことも許されない。
こんな火急な時に、イスラエルでは、まもなく総選挙である。ネタニヤフ元首相が返り咲くのか、ラピード首相が続投か。相変わらずイスラエルの歴史は激動である。