ヨム・キプール:ユダヤ人の底力 2018.9.20

イスラエルでは、9月9日、角笛(ショーファー・らっぱ)を吹き鳴らして新年を迎えた。新年とはいえ、日本の新年とは趣がかなり異なる。

ユダヤ教では、この日、らっぱの響きとともに、神の前でいのちの書が開かれると考えられている。そこに名が記されているのは、義なる者たちだけで、そこに名があれば、来年も生きる。しかし、ほとんどの者は、そこに名がない可能性が高いと考えられている。
このいのちの書は、10日後のヨム・キプール(贖罪の日)まで開かれており、この間なら、そこに名が書き加えられる可能性があると考えられている。

www.aish.com/h/hh/yom-kippur/guide/ABCs-of-Yom-Kippur.html?s=mm

このため、ユダヤ人たちは、新年からの10日間、昨年中の自分自身を振り返り、神の前に悔い改め、赦しを請う。

この悔い改めの期間は、「スリホット」と呼ばれる。アシュケナジー(欧米系)は、ローシュ・ハシャナ以降だが、スファラディは、エルルの月がはじまってからひと月近くを、スリホットの期間と定めている。

この間、エルサレムのかつての神殿の至聖所に最も近いと言われる嘆きの壁とその広場は、毎夜、端から端まで人で埋め尽くされ、いっせいに悔い改めの祈りを捧げる。一斉に神に祈るその大合唱は、まさに終末の様相である。この祈りはヨム・キプールまで続けられる。

<スリホットが意味するもの>

ユダヤ教では、神の前に赦しを請う前に、自分が傷つけた人を思い出したなら、まずその人に謝罪し、人間どおしの関係が回復してからに限ると教えている。

これはまた、人に傷つけられ、不条理な目にあわされた人々にとっては、大きなチャレンジの時となる。しかし、自分を傷つけた人を赦すことを選び取り、うらみを捨て去って、新しく前を向くことを決意する。赦すことで解放され、自分自身がクリーンになり、神に近づけるとユダヤ教は教える。

www.aish.com/h/hh/video/Yom-Kippur-The-Three-Levels-of-Forgiveness.html?s=rab

また、昨年中の失敗を認め、二度と繰り返さないように、どう改善できるのかを考える時でもある。イスラエルでは、常に何かが変わり、改善しているが、それは、失敗はマイナスではなく、次に活かすためのものと考える習慣ができているのである。

<ヨム・キプール:贖いの完成>

こうして10日後に来るのがヨム・キプールで、この日、いのちの書が閉じられる。すなわち、悔い改めの終わった罪に対する贖いが実施されるのがこの日である。

イスラエルでは、普段は安息日にも店を開ける世俗派のファラフェル屋さんも、コシェルを守らないレストランも、この日だけは閉店。断食して神の前に出るべき日と考えている。普段は安息日にもニュースはあるが、この日はニュースも止まる。テレビも日没が開ける午後8時まで放送停止である。

国全体が、聖書が命じる通りに、実際にこのような日を設けている国は、イスラエル以外にはない。イスラエルはこのように、聖書の神に敬意を示し、その存在を世界に証している。

こうしてヨム・キプールが、日没で終わるやいなや、さっさと最高の喜び、仮庵の祭りの準備に入る。町の広場には次々にスッカがお目見えし、スーパーには、ルラブなどが売りにだされている。イスラエル人の切り替えのよさにはいまだに関心させられる。

今年の仮庵の祭りは、23日の日没から30日の日没までで、その後シムハット・トーラーと続くことになる。今年も様々なクリスチャンの国際カンファレンスが目白押しである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。