例祭中のテロ:元気印の男性(45)が犠牲に 2018.9.20

それにしても、ユダヤ人に課されたチャレンジはあまりにも大きい。ヨム・キプールの2日前の16日、エルサレムから南、ベツレヘムに向かって30分程度の入植地グッシュ・エチオンで、パレスチナ人によるテロが発生した。

犠牲になったのは、アリ・フルドさん(45)。グッシュ・エチオンのショッピングモールの外駐車場で、パレスチナ人のカリル・ジャバリン(16)に、背後から上半身を刺された。

アリさんは、振り向いてカリルともみ合い、逃げようとするカリルの足を撃った。続いて近くにいた市民もカリルを撃ち、走れないようにした。その後駆けつけた警備員らが、カリルを取り押さえた。アリさんが、負傷しながらもカリルの足を撃っていたことで、さらなる犠牲者を出すことがなかったとみられている。

病院に搬送されたアリさんは、病院に到着した時にはすでに心肺停止で、まもなく死亡が確認された。テロ犯のカリルは、病院に収容されたが、軽症と伝えられている。

<右派シオニストの旗印:アリ・フルドさん>

このテロで犠牲になったアリさんは、アメリカ生まれのユダヤ人で、移住後はイスラエル軍の戦闘部隊に所属。今は予備役兵だった。

右派で親イスラエル派シオニストであることを公にしており、インターネットを通して、トーラーを教え、イスラエルの近況を伝える、よく知られたコメンテイターだった。ガザ国境に駐留するイスラエル兵たちに差し入れをするなどの活動もしていた。恰幅の良い元気そのものの男性である。

アリさんは、グッシュ・エチオン近郊のエフラテに在住。妻のミリアムさんと子供たち4人が父親を失った。翌日行われた葬儀には、数千人が参列し、多くが悲しみの中、「彼はヒーローだった」とコメントしている。ネタニヤフ首相はじめ、数人の閣僚が遺族を慰問した。

www.timesofisrael.com/thousands-mourn-at-funeral-as-hero-ari-fuld-buried-after-terror-attack/

テロ犯のカリルはヘブロン近郊のパレスチナ地区ヤタに住む少年。防犯カメラによると、アリさんを刺すまでゆうに1分もかかっており、ためらった挙句の行為であったようである。

今回、事件のあったグッシュ・エチオンのショッピングセンターには、ベツレヘム、ヘブロンのパレスチナ人も買い物に来る場所で、テロ事件も頻発する場所。警備員の他、イスラエル兵も警備に立っている。

カリルが怪しかったため、スーパーマーケット前の警備員らは、中に入れなかったのだが、この時の荷物検査で、カリルの服のポケットに入っていたナイフを見落としていた。

ハマスは、カリルを「ヒーロー」と賞賛するコメントを出した。パレスチナ自治政府は、今後、カリルの家族に”手当”として、1400シェケル(約350ドル)を支給する予定だという。

www.timesofisrael.com/pa-daily-reports-israel-shot-arrested-child-over-claim-he-killed-ari-fuld/

<石のひとりごと>

テロのたびに思うが、アリさんはまさか自分がこの日、夜までに自分が亡き者になっているとは、まったく想像もしなかったであろう。遺族たちは、これから始まるヨム・キプールと、お父さんのいない楽しいはずの秋の例祭を、いったいどのようにすごすのだろう。

おそらくは、アリさんがもう二度と帰ってこないということもまだのみこめていないだろう。いつもながら、事件の2日後、もうアリさんのニュースはなくなっている。社会は何事もなく日々を追いかけているが、その中にいるはずのアリさんはもう、どこにもいない。二度と帰ってこない。あまりにも酷い現実だ。

一方、テロを起こしたカリルもわずか17歳である。パレスチナの大人から間違った教育をされ、純粋にそれを信じて、ユダヤ人を殺した。これもまた悲しすぎる現状である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。