ヒズボラとの戦闘はどうなる?アメリカ訪問中のギャラント防衛相の動き 2024.6.25

Ariel Hermoni IMoD)

北部緊張の現状

イスラエルとヒズボラとの対決。6月中旬に、ヒズボラの最高位レベルの指導者、タレブ・アブドラが死亡して以来、緊張だけでなく、攻撃の応酬は、急速に激化してきた。

こうした中、ヒズボラの背後にいるイランは、21日、「ヒズボラは、ヒズボラ自身とレバノンを防衛する能力を持っている。最終的に大負けするのはイスラエルだ」との声明を出した。

June 22, 2024. (AP Photo/Hussein Malla)

その2日後の22日、ヒズボラが、対戦車誘導ミサイルを2発発射し、北部国境の町、メトゥラに着弾。地元警備員二人が負傷し、1人は重傷となった。イスラエル軍も、ヒズボラ拠点複数に向けて反撃を行っている。

www.aljazeera.com/news/2024/6/21/israel-will-be-ultimate-loser-in-war-with-hezbollah-iran-says

北部での戦闘が迫る中、ネタニヤフ首相は、ガザでの戦闘をなんとしても早く終えて、ヒズボラとの対立に備えようとしているというのが現状である。

今懸念されていることは、北部が戦争担った場合、電力供給が深刻な打撃を受けることである。ハマスは、ドローンによるイスラエル上空からの映像をすでに確保しており、ハイファにある、最も重要な電力供給施設を狙ってくる可能性があるという。

もし電力が72時間途絶えたら、壊滅的な打撃になると電力を担当するサウル・ゴールドステイン氏が警告を発している。

www.timesofisrael.com/as-war-with-hezbollah-looms-concerns-over-vulnerability-of-power-grid-generate-unease/

なお、イスラエルの目標は、ヒズボラ殲滅ではない。ヒズボラがリタニ川以北にまで、撤退し、イスラエル北部への直接の脅威でなくなり、避難している北部住民が帰宅できるようになる事としている。

アメリカとの調整:ギャラント防衛相訪米中

この緊張の中、アメリカの武器支援が微妙になっていたようで、ネタニヤフ首相が公にアメリカ政府に、公に苦言を表明。ギャラント防衛相が、現在、アメリカを訪問して、調整を試みている。

アメリカは基本的に、イスラエルとヒズボラの戦争を阻止しようとしている。ブリンケン国務長官は、ギャラント防衛相に、ヒズボラへの大規模な攻撃は控えるようにと伝えたとのこと。攻撃したら、イランが介入してくる可能性があり、アメリカがどこまでそれを阻止できるかはわからないと警告したとのこと。

一方で、ヒズボラに対し、イスラエルが攻撃を開始したら、アメリカはそれを止められないと警告を発している。

ヒズボラとの戦争を阻止する方法として、アメリカは、ガザでの戦闘が終わることと考えている。ヒズボラが、今イスラエルを攻撃しているのは、ハマスを支援することだけが目的だと言っているからである。

June 24, 2024. (Ariel Hermoni/Defense Ministry)

このため、ブリンケン国務長官は、イスラエルに対し、ガザでの戦争をどう終わらせるのか、戦争後の計画と復興に関する考えを出すよう言い続けている。

ここで問題になるのが、今のネタニヤフ首相の徹底的なハマス殲滅の目標は変えないという姿勢である。

ネタニヤフ首相は、人質交換とともに一時的な停戦には合意すると入っているが、結局ハマス殲滅という最終目標は変えておらず、ハマス抜きの戦後しか考えていない。

アメリカはもはや、どうにもしようがないのだが、ヒズボラとの戦争になれば、同盟国として、イスラエルを助けないわけにはいかないだろう。そのこともギャラント防衛相には伝えたもようである。

ギャラント防衛相は、本日、続いて、オースティン国防相と、イスラエルへの武器支援について、話し合うことになっている。

www.timesofisrael.com/meeting-gallant-blinken-calls-for-avoiding-further-escalation-on-lebanon-border/

ヒズボラ(レバノン)との大規模戦争は、もし始まれば、3回目になる。果たして戦争になってしまうのだろうか。

今回は、これまでとは違うレベルの戦闘になると予想されており、破壊と死者は膨大になると懸念される。阻止にむかう要因はどうにもみつからないが、どうにか、戦争にならないことを祈るのみである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。