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広島でG7が行われると同時に、G7を牽制するかのように、世界では別の枠組みからなる国際会議が、開催されている。
G7開始と同じ18日、中国が開催しての中国・中央アジアサミット(カザフスタン、キリギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)が開催された。ロシアにさらなる制裁とウクライナへの武器支援をアップグレードしようとするG7への牽制と言われている。
中東では、19日、アラブ連盟(復帰したばかりのシリアを含めて中東22カ国)が、サウジアラビアで、年次総会を開催した。この総会にゼレンスキー大統領が出席したことは別記事で紹介した通りである。
サウジアラビアの態度の変化:アメリカ・イスラエルと距離
サウジアラビアは、近年、イスラエルとの交流に乗り出し、今ではその上空をイスラエルの民間機が飛べるまでになっている。イスラエルととしては、サウジアラビアがアブラハム合意に参加することへの大きな期待があった。特にネタニヤフ首相は、かつて、イスラエル首相として、初めてサウジアラビアを電撃訪問までしていたほどである。
しかし、今、サウジアラビアは、イスラエルの敵であるイランと国交の正常化を交わした他、強硬右派政権になったイスラエルからは、距離を置く気配にある。サウジアラビアはアラブ連盟では最強であるので、こうなると他のアラブ諸国にも影響が出始めている。
サウジアラビアの態度に変化が出始めたのは、アメリカのバイデン大統領が、アメリカ国籍記者カショギ氏の殺害以降、サウジアラビアに冷たい態度をとったことがきっかけになったとも言われている。アメリカはもはやあてにならない。。サウジアラビアは、アメリカのライバルであるロシアや中国に接近することになっていくのである。
予定されていた、ネタニヤフ首相のUAE(アラブ首長国連邦)訪問は保留とされ、ネゲブサミット(バーレーン、エジプト、モロッコ、UAE)の再会も、モロッコが参加が難しいとして、開催するめどが立っていない。サウジアラビアは、このサミットの名前から、いかにもイスラエルを連想させる“ネゲブ”を変えるように言っているとのこと。
また、19日のアラブ連盟で、サウジアラビアのMBS皇太子は、イスラエルとの関係前進を期待するイスラエルとアメリカに対し、イスラエルとの関係前進のためには、パレスチナ国家設立が主な議題になると明言した。
西岸地区を併合しようという野望が見え隠れするネタニヤフ政権に大きな釘を刺すこととなった。
変わる中東勢力図:イスラエルへの影響は
パレスチナ国家設立という考え方は、一般的に、人道的にもそうであるべきと世界では、考えられている。しかし、現地をみれば、それがいかに不可能であり、かつ成り立たないかということも明確である。
イスラエルは、もう50年以上、それに向かって努力もしてきたが、結果、今のイスラエルとパレスチナの関係は、交渉すらしないというほどに切れてしまっている。
パレスチナ人たちの間には、イスラエルが全部立ち退くまでは満足しない過激な組織が多すぎるのである。今、イスラエルで、なぜ強硬右派政権が支持されるようになったのかといえば、もはやパレスチナ人に何を提示しても意味はないと考える人が増えたからである。
しかし、イスラエルの右傾化を中東アラブ諸国がそのまま受け入れることもまた不可能である。イスラエルに接近しつつあった湾岸スンニ派諸国は今、アメリカ、イスラエルから離れて、イラン、ロシア、中国の側に流れつつある。これは、イスラエルがまたひと昔前のような孤立に向かうということでもある。
側近の課題で言うなら、サウジアラビアがイランとの国交を正常化し、シリアがアラブ連盟に正式に復帰したことで、イスラエルは、これまでのように、自由に、シリア領内に駐屯するイラン軍を攻撃しにくくなるかもしれないということである。
とはいえ、裏表あり、ころころ変わるというのも中東の難しいところである。イスラエルは諜報活動を活発に行っていることだろう。