ゼレンスキー大統領外交全開:G7広島訪問の前に中東アラブ連盟にも対面出席 2023.5.20

Arab summit in Jeddah, Saudi Arabia, May 19, 2023. (Saudi Press Agency via AP)

ゼレンスキー大統領のアラブ連盟(サウジアラビア)サミット訪問

昨日から広島で始まっているG7。当初はオンライン参加予定だった、ウクライナのゼレンスキー大統領は、今日にも来日し、明日のG7のセッションに参加して、今後の支援、特にF16戦闘機の供与が、具体的になるとみられている。

そのゼレンスキー大統領は19日、サウジアラビアで開催されているアラブ連盟の年次総会に、主催国からの招待を受け、対面で出席していた。アラブ連盟は、中東、アフリカ大陸のイスラム諸国、パレスチナ自治政府み含め、21カ国からなるアラブ連盟である。

今年は、内戦で除籍措置に置かれていたシリアの復帰が決まり、今回の総会からは22カ国となっていた。

中東諸国は、ロシアへの依存の現状もあり、今に至るまで、ウクライナへの支援を行うと同時に、ロシアを非難せず、制裁にも参加しないという、中立の立場をとりつづけている。

今回、主催国を務めるサウジアラビアは、ウクライナへの資金援助を約束しているが、同時に、ウクライナを攻撃するドローンを、ロシアに共有し続けているイランとの国交も正常化したところである。

さらに、イランとロシアに支えられているシリアをアラブ連盟に復帰させたのも、サウジアラビアの影響が大きかった。サウジアラビアのムハンマド皇太子(MBS)は、両サイドと関係を続けながら、仲介者になろうとしているとの分析もある。

www.timesofisrael.com/zelensky-to-address-arab-leaders-in-saudi-arabia-including-russia-backed-assad/

そんな、非常にややこしい、サウジアラビアとアラブ連盟の首脳陣を前に、ゼレンスキー大統領は、サウジアラビアの支援に感謝は表明しつつも、大胆に「残念ながら、ロシアの不条理に目をつぶっている人々もいる。」として、ロシアの圧力に屈しないよう求めた。

www.nytimes.com/2023/05/19/world/europe/zelensky-arab-league-saudi-arabia.html

ゼレンスキー大統領は、この後、フランスの航空機で、日本の広島へ向った。

明日のG7セッションでは、西側首脳陣に、F16戦闘機供与など、さらなる武器支援の具体化が進められる予定である。バイデン大統領との個別会談、岸田首相とも個別会談が予定されている。

*ウクライナの反転攻撃は成功するか:ロシア・ウクライナ情勢まとめ

2014年、ロシアはクリミア半島を制圧。昨年2月24日には、本格的にウクライナ東北部、首都キーウへも信仰を開始した。しかし、予想に反してゼレンスキー大統領が、降参することなく、首都キーウにとどまり、全軍と国民を率いて抵抗を続けた。

一時は、ロシアがマリウポリを制圧。ウクライナの大規模な軍事拠点であったアゾフスターリ製鉄所もロシアに投稿するなど、ロシアが優勢となっていた。ロシアは、9月にウクライナ東部4州(ドネツク、ルガンシク、ザポリージャ、ヘルソン)の併合を発表。ロシア化を進めた。

しかし、EUとアメリカ、日本を含むG7などは、ロシアへの経済制裁を行うとともに、ウクライナへの資金援助や、人道支援、間接的な軍事支援を続けた。時間の経過とともに、欧米諸国からの武器支援もすすみ、ウクライナが各地で反撃。武器支援は、ドローンから戦車、今、戦闘機供へと、どんどんレベルアップしている。

これに対し、ロシアはミサイルで、インフラ設備や市民の居住地への攻撃を行うなど非常に意地の悪い作戦を続けた。最近では、通常のミサイルもそこをついたのか、音速ミサイルを含む高度なミサイルを多数ウクライナに撃ち込んでいる。しかし、大半は迎撃しているとみえ、ウクライナからの大きな被害のニュースは多くない。

また、ロシアは、正規軍と民間軍事組織ワグネルを動員している。しかし、その後兵役が不足しているとみえ、国民に兵役動員をかけて兵力の維持を続けているが、各地でまとまりなく、訓練も不十分で戦死者が続出しているもようである。

最近では、ドネツク州のバフムトからも一部から撤退した?といった情報も入っている。今、冬が終わり、春となったこともあり、ウクライナは反転攻撃に入ったか、間も無く入るとの見方が広がっている。

ゼレンスキー大統領は、ウクライナ領土からのロシアの完全かつ、無条件撤退だけでなく、クリミア半島奪回が目標だと言っている。今、勝負どき。外交でもできる限りの動きをしているということである。

www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-21/RQFMQTT0AFB401

石のひとりごと:国際社会に乗り出す?G7議長国としてゼレンスキー大統領を迎える日本

今日本でG7が行われている。思えば、外務大臣として世界中をかけめぐり、英語も堪能、しかも自身が広島出身という岸田首相は、今この時に、まったく当たり役の首相であったかもしれない。不可能と言われる中、G7前に、ウクライナを緊急訪問したりと、岸田首相の本気度も伺える。

今、世界は、ロシアやイランの核兵器開発、使用示唆という危機を前にしている。実際には、世界からの核の放棄などは、およそ不可能ではあるが、それでも、世界唯一の被爆国で、世界第3位の経済大国、日本が果たせる役割は、非常に大きいといえる。

スクリーンショット

個人ごとになるが、少し前から、映画「永遠のゼロ」で、ゼロ戦に乗った日本兵役の岡田准一さんが、飛び去りながら、笑顔で敬礼するシーンが頭から離れなくなっていた。妙な話だが、その岡田さんが、岸田さんに見えた瞬間があった。

その後の先月、イスラエルに行き、全世界に散らばったユダヤ人たちが、大きな痛みを共有しつつ、壮大なイスラエルの歴史を世代を超えて引き継ぎながら、今もその中にいることに感動させられた。

その時に、私もまた、今という時代に、日本という船に乗っているのだということを、強く自覚させられた。日本という国の顔が初めて見えたような気がした。

首相官邸HPより

日本は、もちろん長所はあるが、弱点も多い。偶像礼拝の国で、まだほとんどの人が主を知らない。しかし、そうした欠点も含め、主は日本という国もまた、創造された一つの国として見ておられる。存在の意味は絶対にある。

岸田さんが操縦する日本は、今、世界に大きく貢献しようとしている。もしかしたら、今これから、日本は、これまで以上に、国際社会に出ていく時代に入ったのだろうかとも思う。奇しくもアメリカのTime誌もそういう予測の記事を出していたのである。

Time誌は、岸田首相にインタビューし、当初、「岸田総理大臣は、平和主義だった日本を軍事大国に変える」とのタイトルで記事をホームページに出していた。

しかし、この表現は内容と一致しないと日本政府がクレームを出したため、「岸田総理大臣は、平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を持たせようとしている」に変えていた。

www3.nhk.or.jp/news/html/20230512/k10014064991000.html

今日、日本は、ゼレンスキー大統領を迎え、明日は、世界G7の首脳たちとともに、ロシア、ウクライナ問題を話し合う。世界の課題に日本も貢献できるように。今日から明日、特に日本と岸田首相の上に、主のお導きと祝福を祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。