目次
今回のバイデン大統領の訪問は、アメリカとイスラエル、湾岸アラブ諸国との一致を確立することになることにあるとみられている。そのため、バイデン大統領は、イスラエルに到着以来、アメリカとイスラエルの深い同盟関係をかなりアピールしてるようにみえる。
パレスチナ側からは、15日にバイデン大統領が東エルサレムと、ベツレヘムを訪問する前から、すでに失望と不満が表明されていた。
以下は、パレスチナ側を訪問したバイデン大統領の動きとパレスチナ側の反応である。
www.timesofisrael.com/visiting-bidens-dismissal-of-two-states-likelihood-in-near-term-angers-pa/
東エルサレム・オリーブ山の病院訪問:1億ドル支援を約束
15日、バイデン大統領の車列は、すべてイスラエルの国旗を取り外して、まず、東エルサレム、オリーブ山にあるオーガスタ・ビクトリア病院を訪問した。
この病院は1907年から1914年、オスマントルコが弱体化しつつあり、外国人が地域に入れるようになった時代に、ドイツのビクトリア皇后により、キリスト教ルーテル派(プロテスタント)宣教師がはじめた病院である。東エルサレムでパレスチナ人に医療を提供している6つの代表的な総合病院の一つである。
バイデン大統領は、パレスチナ人への医療支援を行うとして、オーガスタ・ビクトリアを含む6つの病院に1億ドル(140億円)を約束した。
しかし道中には、アメリカに反旗を翻す人々によるデモの列がみられた。
「Palestinian life matter(パレスチナ人の命は大事だ)」とのプラカードを挙げているひとがいたが。これは、バイデン大統領が友好関係をアピールしているイスラエルとの衝突で、大勢のパレスチナ人が、死亡していることえを訴えるものである。
また、西岸地区でのイスラエル軍との紛争で死亡したパレスチナ人ジャーナリスト、アクラさんの件で、アメリカが、明確にイスラエルによるものと言わなかったことなどへの反発を表明していた。しかし、平和的なものばかりで、幸い、紛争にはならなかった。
*バイデン大統領はイスラエル関係者同行要請を却下
イスラエルは、東エルサレムを含む東西エルサレムを首都と主張している。このため、イスラエル側からの同行者なしにバイデン大統領が、」オーガスタ・ビクトリアを訪問すると、まるで東エルサレムは、イスラエルではなくパレスチナの領域であると認めるかのような動きにもなりうる。
このため、イスラエルは、イスラエル政府からの同行者を加えるようアメリカ側に要請した。しかし、アメリカは、オーガスタ・ビキトリアへの訪問は、バイデン大統領のプライベートの位置付けであり、病院も民間病院なので、公式とは考えていないとして、これを却下していた。
ベツレヘムでアッバス議長と会談:国家設立はまだ遠いとバイデン大統領
1)バイデン大統領から経済支援表明
ビクトリア・オーガストを出たバイデン大統領一行は、そのままベツレヘムへ向かった。
ベツレヘムではアッバス議長と会談。アメリカ大統領としてははじめて、1967年の国境を軸にしたパレスチナ国家を目指すことに支持を表明したが、いまのままでは、その実現は難しいと率直な意見を述べた。
また、パレスチナ自治政府は、その透明性を改善し、政治形態を改革しなければならないとも述べた。パレスチナ人記者アクレさんの件については、死の原因を徹底的に解明すると述べた。
しかし、パレスチナ市民の生活は苦しいとして、3億1600万ドルの経済支援を約束。さらには、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)へ2億ドルを支援すると約束した。
しかし、ベツレヘムでも、西岸地区でユダヤ人入植地が拡大していることなどを訴えるパレスチナ人のデモが行われた。以下はデモの様子とバイデン大統領のベツレヘムでも演説。
2)イスラエルの入植活動等訴え
アッバス議長は、バイデン大統領に、イスラエルの入植地拡大政策を止めるよう、またイスラエル軍が、突然雪崩れ込んできたり、テロリストの家だとして破壊していくと訴えた。
バイデン大統領は、アメリカ領事館の再開、PLO(パレスチナ解放機構で、自治政府の基盤)をテロ組織指定からはずして、ワシントンDCの事務局を再開させてくれるよう、要請を出した。
3)ベツレヘム生誕教会でギリシャ正教司祭らキリスト教徒訴え
ベツレヘムには、イエス・キリストが生まれたことを記念する生誕教会がある。ここで、ギリシャ正教司祭をはじめ、キリスト教徒司祭たちが、バイデン大統領と顔合わせした。
司祭たちは、イスラエル政府を非難しないものの、宗教シオニストの中の過激なユダヤ人たちが、旧市街のクリスチャン地区を含めて、東エルサレムにいるクリスチャンを追い出そうとしていると訴えた。
悪質な落書きをされたり、暴力で襲われたり、また、ヤッフォ門近くのホテルをあえてユダヤ人に売るなどしているというのである。バイデン大統領の反応は不明。
www.timesofisrael.com/meeting-biden-christian-leader-described-attacks-by-israeli-radical-groups/
予想されていた通り、大きな成果といえるものはなく、支援金を積み上げても、パレスチナ人がアメリカに感謝をするような動きはない。結局のところ、パレスチナ自治政府を信頼しているパレスチナ市民はほとんどいないといってもよいぐらいで、その献金がどうなるのかもわからないといえる。
確かにバイデン大統領がいうように、まずは政府体制を改善しなければ、何も先にすすまないのかもしれない。
今回の訪問では、神殿の丘などで紛争が発生することも懸念されたが、幸い、紛争もなく、バイデン大統領のパレスチナ訪問は終わったのであった。
www.timesofisrael.com/in-west-bank-biden-endorses-two-states-but-says-ground-is-not-ripe/