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イスラエル・アメリカ・エジプト・UAE・バーレーン・モロッコの歴史的初サミット
28日、イスラエルのネゲブ地方、スデ・ボケルにて、アブラハム合意参加国(UAE、バーレーン、モロッコ)、エジプトとイスラエル、アメリカの外相(国務長官)が、歴史的なサミットを行い、世界にむけて、永久的継続的な中東でのフォーラムを結成すると発表した。
フォーラムの目標は、地域の安定と繁栄を目指すことで、中東の脅威となっているイランなど危険な動きを牽制する勢力になるということである。まずは、この枠組みで、昨日ハデラで発生したISによる警察官2人の殺害テロを非難した。
あれほど憎まれたイスラエルの地で、エジプトとたとえ一部であったとしても敬虔なイスラム教徒の国である湾岸署国が一同に、しかも、イスラエル建国のベン・グリオン初代首相の墓がある場所に会して、中東の平和を共に語り合うなど、これまでの情勢では全くもって考えられないことであった。
UAE外相:イスラエルをもっと知りたい
特にUAEのアブダラ・ビン・ザイード・アル・ナヒヤン外相のコメントは本当に驚くような内容で、感動した。以下はそのまとめ。
・・・このような機会のホストを提供してくれたイスラエルに、またこの歴史的な瞬間に感謝したい。
43年前、エジプトはイスラエルと和平を結んだが、私たちはそれに続かず、残念なことに、43年の遅れをとった。イスラエルはもう長くこの地域にいるのに、私たちはあまり知らないでいる。
イスラエルには、今回初めてきたが、イスラエルには興味いっぱいだ。もっと知りたいと思う。これまでの流れを変えて、これからもっと知り合い、よい関係を築き、子供たちと孫たちにに未来と希望を残したい。
(国交正常化)からイスラエル人が3万人UAEを訪れた。ドバイでの万博にあるイスラエル館には、(UAE住民など)200万人が訪問した。これは人と人との関係づくりである。そうしてビジネスや化学、教育においても共に働くことこそが、憎しみやテロに対抗することになる。困難はあるだろうが、私たちは必ず勝って克服する。
アブダラ・ビン・ザイード・アル・ナヒヤン外相は、最後に、43年前に中東諸国に先駆けて、イスラエルと和平をむすんだエジプトのリーダーシップに感謝し、我々もそれに続いていくと述べた。また、ブリンケン国務長官に向かって、この場にアメリカがいてくれたことにも感謝を述べた。
ブリンケン米国務長官は、このサミットについて、「かつて不可能であったことが、可能になった」とのコメントを出した。
その後、ブリンケン国務長官は、ラピード外相とともに、イスラエル建国を実現へと導いた総司令官で初代首相ベングリオンの墓を訪ねている。
結果分析:さまざまな不一致の中で
サミットの中心事項は、アメリカがすすめているイランとの核合意(JCPOA)でアメリカが、表明しているような制限緩和や、イラン革命防衛隊のテロ指定を取り下げるかどうかなどであった。
このサミットの直前に、サウジアラビアとUAEは、イエメンのフーシ派(イラン傀儡)の攻撃を受けていた。モロッコも、隣国アルジェリアのイラン系勢力の脅威の下にある。エジプトは、ウクライナでの戦争で深刻な食糧危機を懸念している。
こうした問題に、アメリカがあまり対処しようとせず、中東から手を引く様相で、逆にロシアの存在感が高まっていることから、中東諸国がアメリカ離れを見せ、アメリカからに石油増産などの要請が出ても協力しなくなってきているというのが現状であった。
しかし、今回、ブリンケン国務長官との直接、しかも5カ国と共に会うことで、アメリカも中東を無視できないということを自覚したであろうと言われている。また、イランとの交渉においても、一定のブレーキ効果になりえたかもしれないとも期待される。
パレスチナ問題については、簡単に理解し合えるものではないが、今回、ハデラでの銃撃テロでイスラエル人警官が殺害されるという事件が、ちょうどサミット直前に発生。イスラエルも被害にあっているということも印象深くなり、サミット全体で非難できたということも、一定のプラス効果があったと期待されている。
www.timesofisrael.com/at-negev-summit-allies-calmed-somewhat-by-us-recommitment-to-the-region/
石のひとりごと
UAEのアブダラ・ビン・ザイード・アル・ナヒヤン外相が、これまでイスラエルを知ることがなかった43年を、失われた時間だったと呼び、祖父たちの時代のUAEとは全く違う姿勢になっていることに、ほんとうに驚かされた。世代が変ったのであり、これまでの中東とは、大きく変わってきていることを、改めて実感させられた。
イスラエルでも同様。若いベネット首相とラピード外相が、それぞれの役割を果たしながら、協力して国を導いている。互いに足を引っ張る様子は、見えない。これまでの一人の英雄、ベン・グリオンの時代からはまた違う世代に入っているのだろう。
そういう意味では、若く、情報発信に長けている若いゼレンスキー大統領に対して、プーチン大統領のやっていることは、どこか時代遅れなのかもしれない。
新しい時代と社会、文化、価値観、これまでとは違う世界になっているということを覚え、皮袋を大きく、理解の幅を大きくしながら、世界をみていきたいと思う。
また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことをすれば、新しいぶどう酒は、皮袋を張り裂き、ぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになってしまいます。新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません。また、だれでも古いぶどう酒を飲んでから、新しい物を望みはしません。「古い物は良い」と言うのです。(聖書・ルカの福音書5:37-38)