ナザレの市長候補ら3人襲撃で負傷:ガンツ氏がベングビル国家安全保障相解任を要求 2023.8.29

現場の様子

イスラエル国内のアラブ人地域では、犯罪による殺人が激増しており、今年に入ってからだけですでに160人が殺されている。こうした中、28日、イスラエル国内では最大のアラブ都市ナザレでも銃撃事件が発生した。

襲われたのは、ナザレ市長選挙(10月31日投票予定)に立候補しているムサブ・ドゥカン氏(写真)と、その兄、いとこの3人であった。いずれも軽症とのこと。

ムサブ・ドゥカン氏は、ひと月前にも自宅で銃撃事件に遭っていたが、この時は負傷者はなかったとのこと。

www.timesofisrael.com/anti-crime-mayoral-candidate-two-others-shot-in-nazareth/

これに先立ち、イスラエル北部アブ・スナンでは、一度に4人が殺されている。このうち、3人は、ドルーズ人で、同じ一族のいとこどうしであり、犯罪に関係しないのに、殺された可能性が高い。このうちの一人はやはり、市長選挙への候補者でもあった。

この後、アラブ人社会からは、イスラエル警察がアラブ人地域の治安警備をいっこうに強化しないしないことへの不満が爆発し、犠牲者3人の通夜には、1000人が参加し、デモやストも行われた。

ネタニヤフ首相は、国内でのテロをとりしまる組織シンベトを捜査に加わらせると発表。

シンベトは、スパイ的な動きをする組織であることから、国内市民に対して動くことには物議もあったが、これが功を奏してか、24日、警察はこの事件の容疑者2人を逮捕した。2人は国外へ出ようとしていたところ、空港で取り押さえられたという。

www.haaretz.com/israel-news/2023-08-24/ty-article/.premium/two-more-suspects-arrested-in-quadruple-murder-as-funerals-held-for-slain-arab-israelis/0000018a-290f-d700-a7ef-fbffca8c0000

ようやく、イスラエル政府も重い腰を上げた感じだが、その直後にナザレ市長候補が襲撃されるという、失態であったということである。

ナザレでの事件後、野党国民統一党のベニー・ガンツ氏は、ベングビル氏は、国家安全保障相の役割を果たしていないとして、解任を要求する声明を出した。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。