クルーズ船乗船中イスラエル人の家族:政府に救出を要請 2020.2.15

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横浜沖クルーズ船の現状とイスラエル人乗客15人

COVID-19と命名された新型ウイルス。いまだ治療もワクチンもない中、中国での死者は、12日に242人の死者が出て、14日現在、1380人となった。感染者は、6万4000人とされる。

日本でも、国内に死者1人。重症4人(2人は呼吸器装着)を含む11人が肺炎を発症して入院中である。検疫官の感染に続き、和歌山では、済生会有田病院の医師が感染したことがわかり、病院外来診察を当面停止するまでになっている。

また、感染経路がまったく判明できない感染者もあり、中国より、今は日本で市内感染に発展しないか懸念が広がり始めている。

headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200214-00000035-mai-soci

横浜港沖に停泊中のクルーズ船からは、14日までに218人の感染者が確認された。このうち、20人が発病しており、病院で治療を受けている。すみやかに全員のウイルス検査ができないということで、まるで発症を待ってから検査、下船、入院といった後手後手状態である。

海外からの批判もあり、現在、80歳以上で、感染が認められず、持病のある人から19日を待たずに下船する準備がすすめられているとのこと。

こうした中、フィリピン、日本、台湾、グアム、香港からも入国を拒否されたアメリカのクルーズ船ウエステルダム号(2257人)を、カンボジアが人道上受け入れると発表。14日、乗客の下船が始まり、405人はすでに帰国の途についている。カンボジア政府は、下船者に、国内での観光を奨励しているという。

headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20200215-00000000-ann-int

なんとも極端な対処の違いだが、今後、日本のクルーズ船への対処にも圧力がかかってくる可能性がある。

横浜沖に停泊中の乗船中のイスラエル人は15人。10日、イスラエル人女性1人が発熱し、病院に収容された。ウイルスに陽性かどうかはまだ検査中か、その後の情報はない。

www.timesofisrael.com/dozens-more-coronavirus-cases-confirmed-on-cruise-ship-with-israelis-aboard/

現状も対処の方針も明らかでない中、事態が悪化する一方であることから、11日、乗船中のイスラエル人の13家族の子供たち、孫、ひ孫らを含む152人が「実験の材料にされたくない。」として、イスラエル政府に、乗船中の家族たちを帰国させた上で、イスラエル国内で隔離するよう、陳情書を提出した。

www.ynetnews.com/article/rJ3YHVbQL

イスラエル健康相:イスラエル人保護のための代表団を日本へ派遣

家族らの要請を受け、カッツ外相は、12日、イスラエルの日本大使館に、これを打診した。しかし中村大使は、外務省の方針として、「現時点では、乗客を下船されるわけにはいかない。」として、理解を求めるとの回答を出した。

カッツ外相は、これに理解を示し、無理にイスラエル人救助に出ることはなかったが、イスラエル人乗客が下船ししだい、特別機でイスラエルへ連れ戻る計画をすすめているという。その際の費用は、保険会社が支払うことになる。

www.timesofisrael.com/foreign-minister-defends-japans-refusal-to-release-israelis-on-coronavirus-ship/

現在、東京のイスラエル大使館が、クルーズ船に、薬やコシェルの食物を届けているが、リッツマン健康相は、副事務総長を含む代表団を日本へ送り、イスラエル人乗客の保護に当たらせると発表した。

www.jpost.com/Israel-News/Katz-Ill-make-every-effort-to-bring-home-Israelis-on-coronavirus-cruise-617452

東アジア諸国からイスラエルへの入国制限について

イスラエル保健省は、イスラエル到着前14日間の間に、中国に滞在した外国人の入国を拒否している。イスラエル人の場合は、2週間の隔離とされる。

また、イスラエル人が中国につづいて、タイ、ベトナム、日本、香港、シンガポール、マカウ、韓国、台湾への渡航を控えるようにとの警告を出した。しかし、これについて、外務省は、これほど広範囲の渡航延期警告を出している国は他にないため、イスラエルが一番にこの措置をとることで、外交関係を損ないたくないとの意見も出している。

www.ynetnews.com/article/BJvrKFaMI

現在のところ、イスラエル到着前14日以内に、中国、タイ、日本、香港、シンガポール、マカオ、韓国を訪問した外国人で、38度以上の発熱、呼吸器症状がある場合、入国前に、ただちに最寄り医療機関を受診できるよう、連絡することが義務付けられている、というレベルである。

イスラエル保健省方針govextra.gov.il/ministry-of-health/corona/corona-virus-en/

イスラエルのエルアル航空は、北京へのフライトを停止。加えて3月20日まで、香港行きフライトも停止した。バンコックへのフライトも週に2回まで「削減した。日本との直行便就航は3月11日に予定されているが、これについては、今の所、変更は計画されていない。

www.jpost.com/Israel-News/El-Al-expects-revenues-to-drop-by-30m-due-to-coronavirus-617361

先日、飛行機で日本は入ったが、隣にすわった男性が、心配そうに「中国から来たのか?」と聞いてきた。「日本」と答えたが、不安はぬぐえそうもない顔だった。エルサレムのヘブライ大学では、中国人の学生が数人に囲まれて、「コロナ、コロナ」と囃されたとのニュースもある。

イスラエルでは、他のニュースで忙しいので、このニュースはまだ優先順位が低いが、それでも徐々に影響は広がりつつあるようである。なお、イスラエル国内では、12日までに140人のイスラエル人が検査を受けたが、今の所、全員陰性とのこと。

武漢の現状:教会から緊急の祈り要請も

武漢は人口1100万人の大都市である。(東京都約1400万人)そのほとんどが、家の中でこもっているわけである。中国当局の統制がどれだけ厳しいかを思わされるとともに、終末の様相だとも言われる。

テレビニュースによると、肺炎で死亡した人の遺体はすぐに火葬されるらしく、まだ別れも十分できていないのに火葬場へ連れ去られていってしまうとのこと。走り去る霊柩車に向かって、「お母さん!お母さん!お母さん!」と泣き叫ぶ女性の声が忘れられない。

治療にあたる医療従事者のウイルスの拡散を防ぐためとして、頭を丸刈りにして現場に向かう看護師たち(笑顔とガッツポーズ!)の写真があった。またSNSでは、コロナウイルス患者の病院に向かう若い医師が、涙する妻に「さようなら」と言っている様子もあげられていた。覚悟の上での出勤であろう。

今日、友人から、武漢の2つの教会の教会員たちの多くが感染し、重症になっているので、緊急に祈ってほしいとの連絡が来た。集まって礼拝もできない状況で、教会はどう働いていくのだろうか。教会に集まれない日が来た時、個人のクリスチャンそれぞれの信仰が試されることだろう。

日本のための祈りとともに、さらに困難な状況に置かれている武漢の人々を覚えて祈りが必要である。

石のひとりごと

3000人以上も乗船しているクルーズ船の対応は、かなり難しそうである。疑問なのは、諸外国に比べて、なぜ検査にそんなに時間がかかるのかということ。またなぜいちいち決断が甘く、かつ遅いのかということだ。

日本は、何か実際におこらないと何も動かない国だ。警察ですら、何か実際の被害がでないと動けない。国が強いようで、実は思い切ったことはできない国というのも現状だろう。基本的に責任のがれの国だからかもしれない。ハラキリ文化の影響だろうか。

失敗を避けようとするあまり、まずは、”確実な”過去の成功例を実施しようとするので、どうしても場当たり的な対処になり、新しい事態に間に合わず、後手になってしまい、さらに泥沼に入っていく。それが、戦争中の日本の姿であったが、今、ウイルスという敵に対しても同じ対応をしているようにみえる。

無論、人口1億以上の国と人口わずか900万のイスラエルを比べることはできないのだが、まだ見えない先を読んで新しい方法をどんどん進めるイスラエルを見てきたので、日本の危機管理能力が、危機的なまでに弱いということを実感させられている。

この中で、日夜、クルーズ船のために働いている医療従事者や検疫官らも葛藤があるのではないだろうか。彼らを覚えての祈りも必要だ。

一方で、カンボジアの思い切った対処は興味深い。人道支援上、クルーズ船の受け入れを断行し、国内での観光まで進めている。中国への気遣いだとも分析されているが、これが今後どう出るのか。感染が広がらないようにと思うが、国というものは、それぞれなのだとも実感させられている。

横浜沖クルーズ船には、57カ国もの人々が乗船している。すでに、ロシアからは、日本の場当たり的な対処はカオスだとか、アメリカからは、日本の対処は甘すぎるといった指摘も出始めている。

日本での感染が広がらず収束するようにと祈るとともに、日本の信頼が落ちないよう、政府が、乗客と国民にとって、日々最善の決断ができるよう祈る。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。