イランと世界の核交渉中断後:イランがイラクの米・イスラエル関係地点攻撃 2022.3.14

イランとの核交渉(JCPOA)中断

イランとの核交渉(JCPOA)は、昨年6月にイランで新ライシ政権が発足した後、しばらく中断されていたが、11月、アメリカが間接参加の形で、ウイーンで再開されている。イスラエルが懸念を表明する中、イランと先進諸国は、イランの核開発制限と経済制裁緩和に向けた合意に至り、署名のための書面ももう準備できたという段階になっていた。

ところが、その直前になって、ロシアがウクライナへ侵攻を開始し、世界がいっせいにロシアへの厳しい経済制裁を開始した。するとロシアは、イランとの合意に署名はするが、その後にロシアとイランの間で行われる経済活動については、制裁の範疇からはずすことを要求すると言ってきた。

これは世界が一致しておこなっているロシアへの経済制裁に大きく水をさすことになるため、世界諸国が受け入れることはできない点である。その後、論議が行われたが、結局、仲介役であるEUは、11日、イランとの合意に関する論議は一時中断すと発表した。

www3.nhk.or.jp/news/html/20220312/k10013527481000.html

これを受けて、フランス、イギリス、ドイツは、ロシアに対し、イランとの合意そのものが危うくなると警告している。

www.reuters.com/world/europe/france-uk-germany-say-iran-deal-could-collapse-russian-demands-2022-03-12/

イランとの合意について、イスラエルのベネット首相は、非常に甘いとして、合意に反対する声明を出している。したがって、イランと世界諸国が合意に至らなくなるというのは、イスラエルにとっては好都合かもしれない。しかし、同時に、イランに時間を与えることにもなり、核兵器に近づいていくということも、また現実とれなければならないだろう。

イランがイラクのアメリカ領事館・米軍拠点を攻撃

こうした中、イスラエルは、ロシアの黙認の元、シリアに進出してくるイラン軍関係を大胆に攻撃している。最近ではこの7日早朝、ダマスカス近郊の複数地点を、レバノン上空からミサイルを発射。迎撃ミサイルが多くを撃墜したが、複数は着弾して、シリア一般市民2人が死亡したと、シリア国営放送が伝えた。イスラエルはノーコメントである。破壊されたのは、イラン武装組織の武器庫であったとのこと。

イスラエルは、2月24日にも同様の攻撃をシリアに対して行い、この時はシリア兵3人が死亡している。

www.timesofisrael.com/syria-says-two-civilians-killed-in-israeli-airstrikes-near-damascus/

こうした中、13日、イランが、イラク北部のイルビルに向けて、少なくとも12発のミサイル攻撃を実施。先週のイスラエルによるダマスカスへの攻撃で、イラン革命軍将校2人が死亡したことへの報復だったと攻撃を認める声明を出した。

攻撃を受けた場所には、イルビルにあるアメリカ領事館も被害を受けており、イスラエルの諜報機関がなんらかの拠点を置いていた可能性があるという。アメリカとイスラエルが協力する場所であったということである。

しかし、これについては、イスラエルとアメリカへの嫌がらせ、もしくは警告?だったようで、イスラエルとアメリカが反撃してこないレベルであったとニューヨークタイムスは伝えている。

これが、上記、JCPOA中断となんらかの関係があったかどうかは不明だが、ロシアは、イスラエルがシリアでイランを攻撃することを黙認していることと、JCPOAとイランとの合意にイスラエルが反対していることに、いわば協力した形でもあり、背後にロシアとイスラエルの間でなんらかの合意があったのか・・?とは、かなりの考え過ぎか。

www.nytimes.com/2022/03/13/world/asia/iran-missiles-us-consulate-iraq.html

いずれにしても、世界中で、今、戦争と戦争の噂があることは間違いない。。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。