キエフに近づくロシア軍:ウクライナに残留のイスラエル人は1400人 2022.3.11

Rescuers work among remains of buildings damaged by an airstrike, as Russia's attack on Ukraine continues, in Dnipro, Ukraine, in this handout picture released March 11, 2022. (photo credit: Press service of the State Emergency Service of Ukraine/Handout via REUTERS)

ロシア軍キエフへ進軍:トルコでのロシア・ウクライナ外相会談で進展なし

ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから2週間。ウクライナ市民の死者は、NHKによると、子供37人を含む516人。一方、ロシア軍兵士の死者数は、正確な数字は不明だが、アメリカ国防省は4000人とも6000人とも推測している。

ウクライナ側は、NATOへの非加盟を含めた妥協案を出したもようだが、ロシア側は、「ウクライナが悪い。ロシアは防衛しているだけだ」と主張。対話は続けるとしながらも、停戦に向けた結果を、なにも残すことができなかった。

その翌日になる今日、ロシア軍がキエフに向かって、進軍を開始。道中で、ウクライナ軍との激しい衝突になっている。しかし、ロシア軍は、キエフへ近づき、町を包囲しているもようである。

BBCによると、キエフの総人口260万人の半数以上は、避難したが、今も残っているのは、徹底抗戦を望む男性たちと、高齢などで逃げられない人々である。多くの人々が家族との厳しい別れを経験している。

Times of Israelの記事では、キエフに今も避難できないでいる85歳のホロコーストサバイバー、ルドミラさんのことが出ていた。ケアをするのは、アナさん(40)。アナさんを派遣しているのは、ホロコーストの時代にもアメリカからユダヤ人への支援を続けたジョイントと呼ばれるユダヤ人組織、JDCである。

www.timesofisrael.com/i-can-stay-alive-and-believe-in-brighter-days-says-kyiv-bound-holocaust-survivor/

キエフでは、神戸のラビ・シュムリックの兄もラビとして、ユダヤ人たちの脱出の支援を行っていると聞いている。しかし、最後の一人まで、逃げられない人がいる限り、ラビはそこにとどまるとのことであった。

南部マリウポリ(総人口44万)は、すでに包囲されていたが、昨日、産科病院が空爆されて、子供や女性が死亡したことから、世界中がロシアへの非難の声を上げている。しかし、ロシアはひるんでいない。そのままマリウポリの包囲を継続している。

マリウポリでは、食料や水が不足し、電気も止まっており、人々が非情な寒さの中、脱水と飢えに陥っている。ウクライナの副首相によると、マリウポリで死亡した市民は1300人。

最初にロシア軍に陥落したヘルソン(総人口30万)では、まだユダヤ人130家族が出られないでいるという。ここにもJDCのオフィス8ヶ所あったが、どれも閉鎖となっている。ヘルソンの内部では、ウクライナ人らがロシア軍に反発し、400人が逮捕されたとのこと。

www.timesofisrael.com/no-way-out-for-130-jewish-families-who-want-to-leave-kherson/

ロシア軍の進軍に先立ち、キエフやマリウポリからは、ここ2日ほどの間、非常にきわどい人道回廊のニュースが報じられていたが、この2日間で、避難できたウクライナ人は、8〜10万人だけである。

www3.nhk.or.jp/news/html/20220310/k10013524501000.html

イスラエルから1万5000人退避:残っているのは1500人

ロシア軍の侵攻が始まってから国外へ脱出したウクライナ人は230万人を超えた。これまでにウクライナから退避したイスラエル人は、外務省によると、1万5000人。まだ1500人が残っている。

残っているのは、自分の意志で残ると決めた人と、ウクライナ国籍もあるのか、18-60歳男性は出国禁止となったことで、出られない人でいる人もいるとのこと。しかし、まだモルドバ、ハンガリーとの国境から逃れてくるひともいるとのこと。

なお、イスラエル人は、ロシアにもベラルーシにもいる。外務省は在留届を出すよう指示し、ベラルーシ在住者には、南へ近づかないよう指示したとのこと。

www.timesofisrael.com/foreign-ministry-says-nearly-11000-israelis-fled-ukraine-some-1500-remain/

ゼレンスキー大統領がエルサレムの国会でビデオ・アピールか

ウクライナには多くのユダヤ人がいる。ゼレンスキー大統領もユダヤ人である。まったくの他人ではない国であり、すぐれた軍事的能力を持つイスラエルに、ゼレンスキー大統領は、これまでからも軍事的な支援を期待する声をあげていた。

しかし、イスラエルは今の所、迎撃ミサイルすら、ウクライナに提供することを拒んだままである。考えてみれば、早くから迎撃ミサイルがあれば、ウクライナに甚大な損害を与えたミサイルや空爆による被害は、かなり防げた可能性かもしれない。

しかし、これを提供すると、いよいよロシアに敵対したことを意味する。今回は、どの国もが、この問題で、ウクライナを助けられないのである。

今、戦闘機を要請しているウクライナに対し、ポーランドとアメリカが、どこからどのように戦闘機がウクライナに届くかの交渉がまだ続いている。

それによって、ポーランドかアメリカかが、ロシアに対し銃口を向けることを意味するようになるからである。

ゼレンスキー大統領は、欧米からの実質的な軍事支援が受けられないことにいらつきを表明している。

先にイギリス国会で話たように、次は、ビデオ通話で、イスラエルの国会でも話をさせてほしいと要請してきた。イスラエル国会は、最初、ズームによる個人的な対話なら、などと言っていたが、どうもここ数日のうちに、国会でのアピールになりそうな流れである。

www.timesofisrael.com/zelensky-slated-to-address-knesset-members-in-coming-days-says-speaker/

イスラエルは、これまでのところ、どちらかといえば、ロシアよりと思われてもしかたがないような動き方をしてきた。

ベネット首相が、プーチン大統領に会って、ゼレンスキー大統領に届けたメッセージは、いわば、ロシアに降参するしかないといった内容であった。

それが良いのか悪いのかはわからないが、イスラエルは、これはイスラエルの意志ではないが、と何度も強調しなければならなかった。この欧米にもロシアにもかなり気を遣うベネット政権のどちらつかずの政策に懸念を表明する分析もある。

石のひとりごと

ウクライナ情勢を見ていると、日本が島国であることの特別な守りを思わされる。同時にまた、今の平和な日常は、決して当たり前ではないということも実感させられている。

しかし、今日は3月11日で、東日本大震災から11年目の記念日であった。テレビに出てくる当時の写真や映像を見ると、その破壊の凄まじさは、今ロシア軍に攻撃されているウクライナと、どこか似た感じもないではない。

日本には、戦闘機やミサイルは来にくいのかもしれないが、自然災害に、家族や日常を突然奪われるがあるということなのである。

ウクライナの人々と国が今、大きな破壊の中にいる。この破壊をどうかとめてくださるようにと天地創造の神の前にへりくだる思いである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。