イスラエルでもイスラム教の断食月「ラマダン」が始まった。イスラム教徒は、7月10日から8月10日まで(最後3日は特別な例祭)の33日間、朝、夜明け前に食事をすませた後、日没までは食事も水も飲まないという完全日中断食を行う。
今年は、過去33年の中で日が最も長いとされ、断食時間は1日16時間に上る。日中はかんかん照りの中東で、水も飲まないとはかなり厳しい。
しかし、日没後は、食べてもいいわけだから、家族親族が集まってごちそうを楽しむ。旧市街のイスラム地区は電飾で飾られる。断食とはいえ、ラマダンは日本でいえば、お正月に匹敵するほどイスラム教徒にとっては重要で、楽しみな例祭である。
ラマダンに備えて、国際ユダヤ・クリスチャン・フェローシップは、貧しいアラブ人家庭に3300食分(約3270万円分)の食料クーポンを、69のコミュニティに配布した。
<墓場で始まるエルサレムのラマダン>
エルサレムでは、儀式的に断食の終わりと始まりを告げる”大砲”が1日に2回、放たれる。・・といっても本物ではなく、大きな音のする打ち上げ花火のようなもの。この習慣は120年前、トルコ時代からはじまった。
ラマダン初日の10日は、その断食明けを知らせる大砲のスイッチを、エルサレムのバルカット市長が入れるという短いイベントがあった。市長は「ラマダン・カリーン(楽な断食を)!」とエルサレムと世界のイスラム教徒にあいさつを送った。
しかし、問題はその場所。旧市街のすぐ北にあるイスラム教徒専用の墓地の中で、大砲が打ち鳴らされるのである。昨日は、バルカット市長が来るのでメディアにオープンとなり入ることができたが、息がつまるかと思うほどに悪霊の圧迫があった。
しかもその墓場。ちょうど、イエスの復活の場所ともいわれる「園の墓」の真上である。観光で訪れるクリスチャンたちが「どくろにみえる」と言って写真をとる岩のまともに真上だった。
<緊張の1ヶ月・治安の確保>
ラマダン期間中は、イスラム教徒が一斉にエルサレムの神殿の丘での礼拝にやってくる。また、普段は西岸地区とイスラエルと離れている親族も再開することを希望する。
そのため、ラマダン期間中、イスラエルは特別に、パレスチナ人がエルサレムやイスラエルへ入ることを許可している。今年は寛大に門戸を開いたため、100万人規模でイスラム教徒のパレスチナ人がイスラエルに入ってくるという。ちなみに昨年は約85万人のパレスチナ人がイスラエル領内に入っている。
寛大とはいえ、①60才以上は無制限にエルサレム入りを許可、②金曜の神殿の丘礼拝には女性と40才以上の男性は無制限に入場を許可、③家族親族への面会希望者には特別許可証を出す・・などで、問題をおこしそうな若いイスラム男性にはエルサレム入りは赦されていない。
ラマダンでは、宗教的に高揚したパレスチナ人とイスラエル軍や治安部隊が衝突する可能性が高くなる。治安部隊は、パレスチナ自治政府警察とも連携をとりながら、治安の確保に万全の準備を行っている。
昨夜、旧市街イスラム地区に行ったが、約20-30メートルおきぐらいに数人のイスラエル兵が立っており、5分おきくらいにパトロールのイスラエル兵や警官にでくわした。
<混乱のエジプトもラマダン入り>
混乱しているエジプトでもラマダンが始まっている。デモで広場に集まっているムスリム同胞団支持者も、きびしい暑さの中、日中断食を行っている。昨日、暫定政権は、支持者らに立ち上がって戦うようあおっていたムスリム同胞団の指導者を逮捕した。エジプトはまだまだおちつく気配がない。