イスラエル軍は3日深夜、ガザ地区北部から撤退を始め、同日夕刻までには、一部南部ラファで戦闘中の部隊を残し、軍の大部分を地上侵攻直前までのラインに撤退した。合意なしの一方的撤退である。
さらに4日朝10時(日本時間午後6時)、7時間の一方的人道休戦を開始した。ケレン・ショムロンから物資をガザ地区へ搬入する。
ガザ地区の状況は悲惨を極めている。これまでの死者は1800人。負傷者は9000人に上る。病院はもはや対処しきれなくなっている。さらに、電気、水道、下水が機能していないため、伝染病の発生が懸念されている。
<南部ラファ付近では戦闘継続>
3日、イスラエル軍は撤退前”仕上げ”ともいえるトンネル摘発作戦を行い、残っていた南部のトンネルの破壊を実施。オートバイが走れるほどの大きなトンネルも摘発、破壊した。
このときの戦闘で、トンネルから多数の戦闘員が出て来て銃撃戦になっている。激しい空爆や戦車砲で、3日朝だけで40人が死亡した。この戦闘で、2010年にドバイでイスラエルが暗殺した武器調達交換の甥でハマス指導者のアフマド・マルホー(31)が死亡した。
また、4日にはイスラム聖戦のトップ指導者の一人で、諜報活動とロケット攻撃の首謀者ダニアン・マンソールが暗殺されたの発表があった。
ガザ地区では、南部で残っている部隊が今もトンネルの捜索を継続しているもよう。
イスラエルが撤退をはじめた後、ハマスは少なくとも55発のミサイルをガザ周辺とテルアビブにも飛ばして来た。イスラエル人一人が破片で負傷している。
<国連の学校(避難所)への攻撃で10人死亡>
3日、イスラエルのミサイルががラファで避難所(3000人)になっている国連の学校から10メートルの地点に着弾し、子供を含む少なくとも10人が死亡。多数が負傷した。国連の学校が犠牲になるのはこれで3回目。
これを受けて国連事務総長は「犯罪行為だ。」と激怒。アメリカもイスラエルを強く非難している。
BBCのインタビューで、イスラエルの首相府報道官は、ハマスがこの学校周辺から執拗にイスラエル軍に向かって攻撃していたと訴え、避難所がある地区を戦闘地域にしているハマスに責任を問うべきだと語った。
また、国家治安研究所のアモス・ヤディン氏は、次のように語った。
民間人の犠牲はハマスの戦略である。民間人が犠牲になればなるほど、ハマスが有利になる。イスラエルは民間人に避難するよう毎回伝えているが、ハマスがそれを阻止している。
これは戦争だ。イスラエルとしても自らの兵士を犠牲にするわけにはいかない。民間人そのものをターゲットにすることはないが、ハマスの周りに民間人がいるからといって、攻撃を控えるわけにはいかない。
INSSの法律専門研究員のプニナ・シャビット氏は、これは純粋に悲劇であり、イスラエルが望んでいることではないと強調した。
<誘拐と報じられたゴールディン中尉:死亡を確認>
ガザ南部で誘拐されたと伝えられていたハダル・ゴールディン中尉の両親と家族は、2日、「息子を奪回するまでは、イスラエル軍は撤退しないでほしい。」と訴えていた。しかし夜になり、遺体のDNA鑑定により、ゴールディン中尉の死亡が確認され、戦死と家族に伝えられた。
後でわかったことがだが、ゴールディン中尉は、ヤアロン国防相の近い親戚だった。ハマスに利用されてはならないため、メディアには伏せてあったという。3日、出身地クファル・サバで行われた葬儀には数千人が参列した。