日本外務省が8日に発表したところによると、パレスチナ自治政府のアッバス議長が、この14日から17日の日程で日本を訪問し(4回目)、安倍首相にも会う予定になっている。
アッバス議長は、頓挫しているイスラエルとの直接交渉に関して、多国間協議を行うよう、国際社会に働きかけており、今回の訪日もその協議に日本も参加するようアピールすることが目的とみられる。
これに先立ち、毎日新聞が、西岸地区ラマラで、アッバス議長への直接インタビューを行った。それによると、アッバス議長は、イスラエルとの交渉を望むが、イスラエルが入植値を拡大をし続け、占領行為をやめないので、実現しない。それで若者が希望を失い、ナイフでのテロに走っていると訴えている。
アッバス議長は、暴力では何事もなし得ないという考えを明確にし、ISISやアルヌスラ(アルカイダ系)は、破壊行為で人々の希望を損なっている。私たちは非暴力の道を行くとの決意を強調している。
インタビュー日本語字幕あり:毎日新聞:http://mainichi.jp/articles/20160213/k00/00m/030/094000c
<多国間協議について>
アッバス議長は今なぜ、多国間協議を目指しているのだろうか。
1月21日に記者会見を行った元パレスチナ自治政府閣僚のアシュラフ・アジュラミ氏は、これまでイスラエルと調節交渉をしてきたが、すでに国として成り立ち、経済も軍備も確立しているイスラエルと、パレスチナ自治政府が、同じ土俵に立って交渉していたとは言えない状況だったと語る。
そのために、一時はまず、国として国際社会に認めてもらい、少しでもイスラエルと同等の立場に立とうとした。しかし、それもならず、結局、以後その話は進んでいない。
一回だけ、オルメルト首相の時に、土地を2つに分ける合意直前まで話が進んだが、オルメルト氏は、合意に至る前に、汚職疑惑で失脚してしまった。オルメルト氏以外の首相は、皆、結局パレスチナにゆずる土地はまったくないと考えているので、話は少しもすすんでない。
*エフードオルメルト元首相はこの汚職疑惑で、いよいよ今週、刑務所入りになる予定。
www.m-central.org/#!Palestinian-Political-Strategies/c1skh/ijsd8noq18
今、アッバス議長が行っている多国間協議へのアピールは、少しでもイスラエルと対等に立った上で、イスラエルとの交渉に臨みたいとの思いのようである。
しかし、多国間協議となると、今度はイスラエルの方が不利になる。アメリカ以外に、イスラエルの立場を理解する国はないからである。
先月、フランスが、イスラエルとパレスチナの和平交渉再開をめざす国際会議の開催を提案した。パレスチナ自治政府は歓迎したが、イスラエルは拒否した。
<パレスチナ自治政府にビジョンはない?>
アジャラミ氏は、アッバス議長のこの試みも、最終的には、実現しないか、しても成果は上がらないだろうと見ている。アッバス議長自身もそれはわかっていると思うとアジャラミ氏。
パレスチナの国を立ち上げることで合意したオスロ合意(1993年)以来、20年たってもまだ国になっておらず、アッバス議長の支持率はかなり低くなっている。何かしないと、国内からの批判が高まってしまう。パレスチナ自治政府が転覆する可能性を示唆する推測もある。
アジャラミ氏は、自治政府の転覆は否定するものの、パレスチナに大きなビジョンと勝算があっての動きではないと語る。
しかし、パレスチナ人は、2回のインティファーダで、暴力では自分も苦しむだけだということを学んだ。だらら暴力を支持していないことは確かであると強調。アッバス議長を支持しないとはいえ、その他のハマスなどを支持する人は多くないため、自治政府は倒れそうに見えても倒れないとも予測する。
では、ここからどこへ向うのか、ということになるが、パレスチナ自治政府には、もう使える手がなく、明確なビジョンはないとアジャラミ氏は語る。しかし、ともあれ、アッバス議長は今、国際社会にアピールを行っており、日本に来るのもその一環ということである。
毎日新聞によると、日本は、基本的にパレスチナ国家建設による2国家共存を支持しており、昨年1月の時点で、「多国間協議が開催されれば、参加する用意がある。」と表明している。
アッバス議長の日本での滞在は実質2日ほどになると思うが、イスラエルにもよい顔を約束している安倍首相。どのような対応をするのか。
しかし、日本は今、北朝鮮問題と、急速な円高と株の変動で、経済が大きくゆさぶられており、パレスチナ問題どころではないかもしれない・・・・