4回目総選挙決定(3月23日):7ヶ月で統一政権終了 2020.12.26

(左から)ラピード氏、ベネット氏、ネタニヤフ首相、サル氏、ガンツ氏 出展:Times of Israelhttps://www.timesofisrael.com/whoever-wins-well-be-a-fundamentally-changed-israel-when-this-election-is-over/

4回目総選挙決定

イスラエルでは、2020年の予算案で政権内の合意が得られず、伸ばしに伸ばして12月23日となっていた。予算が決まらない場合、国会は解散、総選挙ということになる。ネタニヤフ首相と、ガンツ防衛相は連立政権を維持する必要があるとして、期限を再度2週間延期することで、異例の合意に達したと発表していた。

しかし、国会がこれを拒否した。このため予算案の期限は、予定通りの23日となり、ぎりぎりまで審議が続けられたが、予想通り、22日深夜までに予算案をまとめることができなかった。これにより、波乱万丈であった、右派左派同居の統一政権は、発足7ヶ月で崩壊することとなった。

今後、コロナ対策や治安問題など、火急のことについては、今の政府が、臨時政府として対策をとっていくが、それ以外の議論中であった案件は、しばらく棚上げになってしまうことになる。

その政策とは、マリファナの合法化、国会議員の給与減額、超正統派の徴兵制、住宅と鉄道の建築プロジェクトの保留などである。

www.ynetnews.com/article/Bkqr111WTD

3回目ロックダウンによる経済への打撃とともに、4回目総選挙にかかるコストを考えると、イスラエルには相当な打撃になることは間違いない。

政界の中の渦:群雄割拠でまとまりなし

HaarezIllustration. Credit: Amos Biderman

2年間で4回目となる総選挙は、国会解散から90日後にあたる来年3月23日に行われる。ネタニヤフ首相は、今度こそ圧倒的過半数を目指したいところであろうが、なかなかそうはいきそうもないという様相になっている。まるで群雄割拠にようになのである。

1)ガンツ氏終了へ・・・

この7ヶ月の間で起こったことといえば、まずは青白党ガンツ氏の没落であろう。政権発足時33議席であったが、今の予想獲得議席は5−6議席で、もしかしたら、次の選挙で政界から消えることになる可能性も出てきている。

新進ガンツ氏は、ヤイル・ラピード氏とともに世俗派の声を代弁する青白党を立ち上げて、連立政権にまでこぎつけたのであった。しかし、最終的には、ガンツ氏が、ネタニヤフ首相に取り入る形で防衛相になり、政界に入ったことから、かつての同志、ヤイル・ラピード氏が、青白党から離脱する。

その後も、ネタニヤフ首相に兜を脱いだとみられることが何度か重なり、UAEとの国交正常化においても、まったく、かやの外扱いにされていた。そんなガンツ氏の様子から、左派世俗派たちの心が離れていったのであった。

www.timesofisrael.com/gantz-said-planning-to-remain-atop-party-but-those-below-looking-elsewhere/

2)首相の座ねらう面々

ネタニヤフ首相のリクードは今も過半数ではないものの議席数では最も多いのだが、リクードからも出て行くものが出るなどして、ネタニヤフ首相の議席が減り、まるで群雄割拠のようになっている。

これらは皆、ネタニヤフ首相を政権から引きづりおろしたいのではあるが、そのためには、互いに手を組まなければならないのだが、それが実現するとは思えないということで、群雄割拠なのである。

ILTVが封じた現時点でのネタニヤフ首相の予想獲得議席は26議席。その他の議員たちは以下の通り。

①ギドン・サル氏(ニューホープ党)右 22議席

リクードの2番手ギドン・サル氏は、党首選に立候補してネタニヤフ首相に挑戦したが、敗れることとなった。このため、サル氏は、リクードを離脱。自ら党首となって、新しい党ニューホープを立ち上げた。サル氏の目標は、打倒ネタニヤフ氏で自分が首相になること。

つづいてショッキングなニュースは、リクードで、ネタニヤフ首相の側近とみられていた、ゼエブ・エルキン氏が、リクードを離脱。ギドン・サル氏に合流すると発表した。これはネタニヤフ首相にとっては冷水をかけられたようなものとも言われている。

www.timesofisrael.com/zeev-elkin-quits-likud-to-join-saar-accuses-netanyahu-of-destroying-party/

ギドン・サル氏は、ネタニヤフ首相にとっては最大の脅威である。

www.jpost.com/israel-news/saar-cuts-likuds-lead-in-half-poll-653243

②ナフタリ・ベネット氏(新右派党)右 15議席

ベネット氏も、ネタニヤフ首相にさんざん振り回された結果、最終的に自分が党首の新右派党を立ち上げている。ベネット氏も首相を狙う一人。

www.timesofisrael.com/bennett-is-israels-next-pm-or-saar-or-maybe-netanyahu-for-sure/

③ヤイル・ラピード氏(未来がある党)中道左派 15議席

ガンツ氏が期待はずれに終わるとしたら、もともと青白党のリーダーでもあったラピード氏に期待が高まるということになるが、そうでもなさそうである。未来がある党の右腕、オフィル・サレー氏が、ラピード氏が党首選挙に応じないとして離党。自分の党を立ち上げると発表した。

ラピード氏は、青白党の残党を取り込むなどして中道左派をまとめあげ、リクードを中心とする右派政権を打倒したいところだが、なかなかそうはいきそうもない。

www.timesofisrael.com/mk-ofer-shelah-says-hes-leaving-yesh-atid-to-start-his-own-party/

④アビグドール・リーバーマン氏(イスラエル我が家党)右 7議席

リーバーマン氏は、今回も、サル氏、ベネット氏、ラピード氏に手を組んでまずは、ネタニヤフ首相を打倒しようと呼びかけている。

www.timesofisrael.com/liberman-said-to-urge-alliance-against-netanyahu-with-saar-lapid-bennett/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。