ガザ戦闘81日目:シンワル強気発言・ネタニヤフ首相は平和への3D 2023.12.27

December 26, 2023. (Israel Defense Forces)

ガザ戦闘81日目:戦闘拡大するイスラエル軍

GPO

ガザでのハマスとの戦闘が始まって80日を過ぎ、イスラエル軍はさらに戦闘を強化拡大する動きに出ている。ネタニヤフ首相は、ガザ北部を訪問し、兵士たちを力つけた。

ハレヴィ参謀総長によると、ガザ北部ではまだ戦闘が続いているが、ハマスの解体が完了する日も近い可能性がある。

このため、南部、カン・ユニスでの作戦を継続しながら、ガザ地区中部への攻撃にも拡大を始めており、前線は7ヶ所に及んでいるという。

昨日、ガザ地区中央のデイール・エルーバラへの攻撃を前に、民間人に南部へ避難するようにとの警告を発している。空軍は地上軍を支援する目的で空爆を行っているが、一晩で100発もの空爆したとの報告もある。

イスラエル軍は、地下トンネルや、大量の武器、子供用自爆ベルトなども発見しているが、ハマス幹部や人質につながる報告はない。ガザにいるイスラエル人の人質は129人で、このうち22人はすでに殺されている。どこにいるのか、手がかりはまだない。

こうした激しい戦闘の中、クリスマス週末に14人が戦死したが、続いて月曜日2人、火曜3人、水曜も3人と次々に戦死が報告され、地上戦が始まってからの戦死者は164人となった。負傷兵も新たに874人出ている。

www.timesofisrael.com/3-more-troops-killed-as-idf-hits-hamas-in-central-gaza-battles-al-bureij-battalion/

一方、国連によると、ガザでは23-26日の間に858人が死亡。24日のデータで死者数は計2万424人を数えた。一昨日は1日で70人が死亡。昨日は、80人が死亡したと国連は伝えている。

シンワルが嘘の報告:ハニエが停戦への3段階を発表

Gaza City, on April 30, 2022. (AP Photo/Adel Hana, File)

25日、10月7日以降、始めてヤヒヤ・シンワルが、ハマス指導者らにあてて送ったメッセージが公開された。シンワルは、激しい戦闘にあることをみとめたが、イスラエル軍5000人のうち1500人を殺して、鎮圧を図っていると嘘の情報を語った。

またシンワルは、ハマスがイスラエルの軍用車両750台を破壊、またはダメージを与えたと報告しているが、イスラエル軍によると、修理不能なまでにダメージを受けた車両はほとんとないとのこと。それにしてもシンワルはいったいどこに隠れているのか。

イシュマエル・ハニエ November 1, 2023 (screenshot, Hamas Telegram channel)

また、ハマス政治部門のイシュマエル・ハニエは24日、停戦交渉にむけてエジプトを訪問中である。ハニエは、停戦への3段階を提示している。

①2週間の停戦(3-4週間に延長可能)でイスラエル人人質(女性と子供、高齢男性)を解放する。イスラエルはパレスチナ人120人を解放する。
②エジプトの仲介によるファタハ主役のパレスチナ自治政府とハマスの間で、ガザ再再建に向けた会議を行う。
③残りのイスラエル人人質と、10月7日の攻撃で逮捕された者を含むパレスチナ人の交換を行う。

イスラエル国内では、今すぐに人質を取り返すこと最優先すべきだと訴えるデモが国会の中でも行われた。しかし、上記のような条件をイスラエルが飲むことは不可能だ。ネタニヤフ首相は、もはや停戦に応じる気配はなく、最後まで戦闘を続けるとの意思表示を国内外に行っている。

ネタニヤフ首相の平和への3D案

ネタニヤフ首相の報道官は、3つのDとする案を提案した。

①Destruction:ハマスの解体

ガザにいるハマスは完全に解体する

②Demilitarization:ガザの非武装化

ガザからの攻撃が2度と発生しないように、ガザに武器が入らないようにする。特にエジプトとの国境を厳しく監視する。戦争後のガザの治安維持はイスラエルが担うものとする。

③Deradicalization: ガザ市民の非過激化

ガザ地区だけでなく、西岸地区においても10月7日のイスラエルへの残虐な奇襲を支持する市民の割合はかなり高くなっている。イスラエルに侵入して残虐な行為をした者の中には、ガザの民間人もかなり含まれていたのである。そのことにショックを受けている生存者は少なくない。

実際のところ、UNRWAの学校でも、イスラエルを非難し、攻撃するよう教える教科書が使われていたことが明らかになっている。ハマスメンバーでなくても、すっかり洗脳されている民間人は、ハマスメンバーと言ってもいいぐらいなのである。ネタニヤフ首相は、この問題を語るとき、非常に険しい顔になっていた。

こうしてみると、世界は停戦せよとイスラエルに訴えているが、接点になりそうな点はまったく見当たらない。ネタニヤフ首相もガラント防衛相も、ハマスを解体するまで戦いを続ける決意を明らかにしている。ハレヴィ参謀総長は、戦争は少なくとも月単位で長期戦になるとの見方を語っている。

www.timesofisrael.com/in-first-public-message-since-oct-7-sinwar-says-hamas-wont-surrender/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。