3カ月ぶりガザからロケット攻撃で反撃:イスラエル国内労働ビザ2000人発給増保留へ 2022.6.19

イスラエルの攻撃翌日、すでに立て直した監視塔 June 19, 2022. (Dadi Fold/Courtesy)

3カ月ぶりガザからロケット弾

18日(土)午前3時、ガザからロケット弾が発射され、アシュケロン周辺地域にサイレンが鳴った。迎撃ミサイルが撃墜したので、被害はなかったが、イスラエル軍は、報復として、数時間後に、ガザのハマスの武器製造施設や、国境付近にあった監視塔など4箇所を空爆した。

ガザから、ロケット弾が飛来するのは、4月下旬以来である。この前日、イスラエルは、昨年5月のガザとの戦闘以来、最も平穏な1年であったと発表。

この結果を踏まえてか、イスラエルは、ガザ市民へのイスラエル国内での労働ビザを新たに2000人増やして1万4000人にすると発表したところであった。

ガザからの攻撃を受けて、イスラエルは、この新たに予定していた2000人分の労働ビザ発給は保留にすると発表した。

イスラエルは、最終的には労働ビザを3万人まで増やし、ガザ市民の生活を改善することで、テロを防いでいく計画である。

Times of Israelの記事によると、ガザ市民の失業率は50%で、仮に仕事があったとしても、日給は60シェケル程度(2400円)だが、イスラエルで働くと、日当は最大400シェケル(1万6000円)まで可能だという。

www.timesofisrael.com/israel-freezes-move-to-allow-in-2000-more-gaza-workers-after-rocket-attack/

しかし、パレスチナ人からすると、生活が改善するのはありがたいのではあるが、イスラエルに感謝ということにはならないようである。

新たな労働ビザ発給が発表されたと同じ日、西岸地区では、イスラエル軍とのジェニンでの衝突でパレスチナ人が3人死亡していた。ハマスからの声明はないが、この件への報復とみられている。

なお、この数時間後、パレスチナ人は、破壊されたとみられた監視塔に戻り、ハマスの旗を掲げた。この監視塔は、アシュケロンに近いところにあり、イスラエル人の住むネティブ・ハアサラを見下ろす位置にある。住民たちは、なぜもっとしっかり破壊しなかったのかと、軍に不満を訴えている。

www.timesofisrael.com/terrorists-watching-us-hamas-lookout-hit-by-idf-had-long-worried-border-residents/

西岸地区で増加する衝突とそれによる死者3カ月で19人

西岸地区では、イスラエル軍とパレスチナ人武装勢力との衝突が最近、激化している。イスラエルがガザの市民2000人にビザを発給すると発表したその17日(金)にも、西岸地区ジェニンで、衝突が発生。

パレスチナ人が車中から、イスラエル軍に銃撃してきたため、イスラエル軍が反撃したところ、車中で3人が死亡していた。車は文字通り縦断の穴だらけであった。ハマスによると、そのうちの1人、バラ・ラフロウは、ハマスメンバーであった。

この後、3人が収容されていた病院周辺に数百人のパレスチナ人が集まり、「神は偉大だ」と叫んだとのこと。ジェニン周辺は特に、イスラエルとの衝突の拠点になっている。今回の死者を加えると、3月以降、3カ月の間に、衝突で死亡したパレスチナ人は19人に上っている。

www.timesofisrael.com/three-armed-palestinians-said-killed-in-clashes-with-idf-in-jenin/

*とはいえ、4月から5月にかけての1月強の間に、パレスチナ人のテロで犠牲になったイスラエル人も19人に昇っていたことも忘れてはならない。

なぜ西岸地区で衝突が増えているのか:パレスチナ人記者説明

東エルサレム在住、パレスチナ人ジャーナリストS氏によると、これまでは、パレスチナ自治政府が、ハマスなど武装勢力の活動を、イスラエルとの協力で抑え込んでいたのだが、最近、自治政府が、それを効果的に行えなくなったので、イスラエル軍が自ら、活動するようになったとのことである。

S氏は、イスラエルが、西岸地区やガザ地区のパレスチナ人に労働ビザを発給することを高く評価する。しかし同時に、ハマスへの支持も表明する。ハマスのイスラエルへの攻撃で新たに2000人のビザがキャンセルになったにもかかわらずである。

S氏によると、パレスチナ人は、パレスチナ自治政府アッバス議長のファタハの腐敗政治に、もううんざりしており、今では、ハマスを支持する人が増えているという。そのハマスの行動で、ビザが発給されなくなり、困るのはガザ市民、西岸地区市民なのだが、それでもハマスを支持するとS氏。

なんとも矛盾に聞こえるのだが、パレスチナ人にとっては矛盾ではないらしい。要は、イスラエルが敵というのが、基本なので、その憎い国から経済的な支援があっても、それは、感謝ではなく、そうしてあたりまえ、義務といった理解のようである。

ハマスの攻撃でビザがおりなくなることもわかっているが、それでも、パレスチナ自治政府があまりにも腐敗していることは誰の目にも明らかなので、もはや、自治政府を支持できないということである。

一方、ハマスは、イスラエルを敵視するという点においてはブレていない。少なくとも、効果的にその方向でのメッセージ(プロパガンダ)を発しているので、たとえ、ハマスによって、生活が壊されたとしても、市民がこれを支持するようになっているということである。

どうにも論理的でないように聞こえるのだが。。。やはり、作戦においては、特に論理的に考えるイスラエルとパレスチナは、立っている場所が違いすぎるのかもしれない。。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。