超正統派が1日に1万人級葬儀2回決行 2020.2.1

政府が新型コロナとの戦いを進めている中、イスラエル人たちは、いつまでもおとなしくしているだけではない人たちも少なくない。この週末、超正統派、世俗派、どちらもが、群衆となって葬儀やデモを行った。

これらへの対処方に一貫性がないとして、政治的な意図があるとの批判があがっている。イスラエルでは来月3月23日に、総選挙があるので、ネタニヤフ首相の足を引く要素になりうると指摘されている。

超正統派ラビの葬儀に1万人の大群衆

政府が慎重に感染対策をしているが、それとは全く別に動いているのが超正統派である。先週も、感染対策取り締まりにやってきた警察隊と、過激な超正統派の衝突をお伝えしたばかりであった。

その後の31日、エルサレムの超正統派地域メア・シャリームで、ラビ・メシュラム・ドビッド・ソロヴェイチック(99)が、新型コロナに感染して死亡。その葬儀にみわたすかぎり、黒服の超正統派男性1万人が参列した。マスクを着用している人は少ない。あまりに大群衆なので、警察も手出しできなかったとのこと。

さらに同日、これに続く2回目の葬儀が行われ、8000人が参列した。2回目の葬儀は、やはり新型コロナで死亡したラビ・イツハク・シャイナー(98)の葬儀であった。

これほど大勢の参列者があったのは、2人のラビがどちらもイシバ(ユダヤ教神学校)の学長であったからである。しかし、超正統派地域以外では、かなり厳しい感染予防対策の取り締まりを行う警察がほとんど動いていなかったことが注目された。

世俗派:反ネタニヤフ首相デモでも群衆

この前日30日に、エルサレムで行われた反ネタニヤフ首相デモ(32週連続で毎週実施)には、「クライム・ミニスター運動(犯罪(汚職)首相)運動」の世俗派たち約1000人が参加した。警察はデモを感染予防対策の一環から、約1ヶ月ぶりに放水車を出して、取り締まりを実施したのであった。

警察の放水により、顔面に直撃を受けた1人が負傷。病院に搬送された。エルサレムはこの日気温9度の寒さであったため、放水は極めて危険と思われるが、警察から放水車の出動の予告はなかったとのこと。このほか、小さい衝突が発生し、警察官1人が負傷。2人が逮捕された。

この日、テルアビブ、ネタニヤフ首相私邸があるカイザリヤでも同様のデモが発生していた。

www.timesofisrael.com/anti-netanyahu-protesters-pm-holding-israel-hostage-bowing-to-ultra-orthodox/

このように、反ネタニヤフ首相デモの取り締まりに、厳しい感染予防対策を強いているのに、1万人の葬儀をする超正統派には手を出さなかったことへの不公平感とともに、ネタニヤフ首相の対策には政治的な矛盾があるのではとの批判が高まっている。

国会で紛糾:ロックダウン延期と罰金倍増で可決

1)5日半のロックダウン延長

イスラエルでは、厳しいロックダウンの期限が1月31日であった。これについて、ネタニヤフ首相が、延長を主張するのに対して、ガンツ氏(中道左派)が、感染以外の経済への重すぎる影響や、心理的な影響を鑑みて、延長に反対する以降を表明した。

このため国会での論議は紛糾し、週末前に結果を出すことができなかった。このため、論議は今週に持ち越された。ネタニヤフ首相とガンツ氏は、空港と陸路国境の閉鎖については、1週間延長で、問題なく合意した。

しかし、国内のロックダウンについては、5時間にわたって紛糾した。ネタニヤフ首相は、死者が今月だけで1000人を超えていることと、ワクチン接種を今のままスムーズにすすめることが最優先だとして、1週間の延長を主張。ガンツ氏と1週間ではなく、微妙に5日半の延長で妥協した。ロックダウンの期限は、5日朝7時までとされた。

www.timesofisrael.com/ministers-meet-to-extend-lockdown-as-virus-shows-no-signs-of-abating/

2)感染予防対策違反罰金を倍に

特に超正統派たちの間で、感染予防対策が徹底できていないことから、違反に対する罰金を強化すべきだとの意見が出されていた。この点も論議され、現在違反につき5000シェケル(15万円)から倍の1万シェケル(30万円)にすることで可決した。

主に超正統派を念頭に置いたものである。当初罰金を2万シェケルにとの意見もあったが、さすがにこれは通らなかったとのこと。

感染予防対策の主なものは以下の通り。*非常に細かい指示がだされている。

www.gov.il/en/Departments/Guides/ramzor-cites-guidelines?chapterIndex=1

①不要不急以外の外出は自宅から1キロまで、②障害者を助けるなど以外で他人宅の訪問禁止、③教育機関閉鎖(教師には制限つきで出勤可能)④屋内集会は5人まで、屋外は10人まで、葬儀、結婚式、割礼式は、直系家族までで、式場ではなく、自宅で行う事。

⑤宗教的な集会は、屋内5人まで、屋外10人まで。⑥モール、レストラン閉鎖(テイクアウェエイは不可。デリバリーはOK) ⑦図書館、動物園、国立公園閉鎖。

開けて良いのは、①食料店、薬局、ホーム電気店、ランドリー、スマホ店、フットボール、バスケケットボールのプロの練習、郵便局、特別な理由での長期滞在を受け入れているホテルなど。

なお、これらの感染対策が、どうにもいい加減だとの批判もある。警察のとりしまりも、かなりいい加減であることも十分予想される。イスラエル人たちは、これらをうまくすり抜けながら、毎日を過ごしているようである。

石のひとりごと:コロナはロシアンルーレット!?

新型コロナが現れてからもう1年になる。来年の今頃は何を言っているだろうか・・・と昨年の今頃にも同じ事を言っていたことを思い出す。

コロナ禍の難しい点は、同じことに直面しているのに、危険だと思う人と、そうではないと思う人に分かれている点である。それぞれ、命がかかっているだけに、自分が正しいと思うと妥協できないのである。

ある学者が、コロナは、ロシアンルーレットのようだと説明していた。たいがいは当たって死ぬことはないのだが、一発あたってしまえばそれでその人は終わる。おそろしいことであり、おそろしくなくもある。90%は大丈夫だからである。しかし、完全に防ぐ手立ては、基本的に存在しない。

この状況下でどう生きるかは、それぞれ違っているので、社会的な分断にもなり、潜在的な社会の問題があぶり出される結果になる。そこから、世界全体が影響を受ける事態にもなっている。

日々、イスラエルのコロナ対策を追いかけていると、どうしても日本の反応との違いが目についてしまう。どちらがいいとか悪いとかではなく、民族性の違いであり、神がそれぞれに、何かを見せておられるようでもある。

イスラエル人はアクティブなので、家で1年もこもっているなど、ありえないだろう。その流れか、イスラエル人は、自分を守るより、集団でラビの葬儀に出ているし、政治的にネタニヤフ首相は退陣するべきだという人が、デモをしに、外に出てくる。それが感染につながろうがなんだろうがお構いなしである。一言で言えば、とにかく外であり、元気ありすぎなのである。

一方、日本では、独居でひとり寂しく孤独死する人が増えている。無名で誹謗中傷し、その被害にあった人が自殺する。無論、急増するホームレスの人々へのケアに奔走するような、心ある人もいるが、社会全体としては、やはり「マスク警察」みたいな人の方が問題である。

もしかしたら、神は今、コロナを通して、人にはコントロールできないこともあるということを示すとともに、それぞれの社会に潜在する問題をあぶりだしておられるのかもしれない。それは国だけでなく、それぞれの個人の心を見る事にもつながっている。

コロナがいつまで続き、どのように終わっていくのかがまだ見通せない、このどうしようもない困難な時代にどう生きていくのか。ホロコースト時代のユダヤ人から学んだことを思い出している。

ユダヤ人は、ホロコーストの時代ですら、社会性なしでは生きているとは言えないという感覚があったようで、何か社会に役立つこと、社会の中で自分は何ができるのかと考えた人が少なくなかった。

たとえば、看護師は、その役職を使って、ゲットーのユダヤ人の子供達を救出した。役者は、ゲットーでシアターを提供して、餓死寸前の人たちを楽しませた。歴史家は、ホロコーストの証言を集めたり証拠を集めをするとかである。それがあったからこそ、彼らは生き延び、また死ぬ事を恐れることもなかったのである。

聖書は、すべての人は、その役割をもって神から命を与えられたと言っている。それぞれが、今、自分が生物として生き延びることだけでなく、何のために生かされているのか、自分は周囲の人々のため、社会のために何ができるのかを考える。そしてそのために、生きることを考えたらどうかと思うのである。それはコロナが終わった後への準備にもなるだろう。

今、誹謗中傷などという卑劣きわまりないことをしようとしている人は、本来の自分の使命、生きている意味を見失っているのではないかと思う。今の日本に巣食うこの罪を主の前に悔い改め、福音を受け取り、ぞれの使命を発見できるようにと祈る。

*申命記8:2−7

あなたの神、主が、この四十年の間、荒野であなたを歩ませられた全行程を覚えていなければならない。それは、あなたを苦しめて、あなたを試み、あなたがその命令を守るかどうか、あなたの心のうちにあるものを知るためであった。

それで主は、あなたを苦しめ、飢えさせて、あなたも知らず、あなたの先祖たちも知らなかったマナを食べさせられた。それは、人はパンだけで生きるのではない、人は主の口から出るすべてのもので生きる、ということを、あなたにわからせるためであった。

この四十年の間、あなたの着物はすり切れず、あなたの足は、はれなかった。あなたは、人がその子を訓練するように、あなたの神、主があなたを訓練されることを、知らなければならない。

あなたの神、主の命令を守って、その道に歩み、主を恐れなさい。あなたの神、主が、あなたを良い地に導き入れようとしておられるからである。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。