www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4686178,00.html
金曜に、ナブルス北部のパレスチナ人の家屋が、ユダヤ人過激派と見られるテロリストに放火され、1才半の男児が焼死、兄と両親も重傷となった事件。
金曜、ハマスが、復讐に立ち上がるよう呼びかけて数時間後、西岸地区では、ユダヤ人の車両にパレスチナ人が発砲。また、パレスチナ人らは、復讐だとして、シェケム(ナブルス)にあるヤコブの墓(ユダヤ人が聖地の一つ)への放火をはかった。
西岸地区では、各地で暴動が発生。イスラエル軍と衝突した。その中で16才のパレスチナ人が死亡。その少年の葬儀でまた暴動となり、投石、火炎瓶など暴力的な暴動となった。
土曜日には、西岸地区の入植地エシュ・コデシュの近くに、農業をしに来たパレスチナ人に対し、ユダヤ人入植者たちが、「その土地はイスラエルの土地だ。」と主張して口論になった。
そのうち、暴動に発展。イスラエル軍が両者を引き離したが、双方が投石する騒ぎとなった。
エルサレムでは、神殿の丘や、旧市街イスラム地区で、パレスチナ人らが、治安部隊に石や爆竹を投げつけ、衝突となった。東エルサレムのシュアハットでも同様の暴動となった。
ガザとの国境では、ガザからはミサイルが2発イスラエルに向けて発射された。国境ではイスラエルへ侵入しようとしたパレスチナ人2人が、警告に従わなかったため、イスラエル軍に足を撃たれた。
こうした流れを沈静化するため、ネタニヤフ首相は、この行為はユダヤ人によるテロと認める声明を発表。事件発生の当日、イスラエル国内の病院で治療を受けているパレスチナ人の被害者家族ダワブシェさんを訪問。
ネタニヤフ首相は、家族、親族に対し、深い謝罪を述べ、イスラエル人を代表して、「イスラエルは、こうした暴力には断固反対している」と強調、力を尽くして犯人を追及すると伝えた。続いてリブリン大統領も、被害者家族を訪問し、謝罪を述べている。
国際社会からは、ユダヤ人によるテロ行為に対し、EUが、「全く受け入れられない。」とする厳しいコメントを発表したのに続き、アメリカ政府も「双方落ち着くように」とのコメントを出した。
その後、日曜朝になり、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、「今、(ユダヤ人によるテロで)パレスチナが、政治的な優位に立っている。それを逃さないよう、今はイスラエルに対する暴力を行わないように」と呼びかけ、各地にパレスチナ治安部隊を配置した。
<イスラエル各地で暴力反対の大規模ラリー> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4686335,00.html
暴力の波が続く中、イスラエル各地では市民による暴力断固反対とのラリーが行われた。
1)テルアビブ
金曜からエスカレートしている暴力の波に対し、土曜安息日明けの夜、テルアビブのラビン広場では、数千人が集まり、イスラエルはユダヤ人過激派に断固反対するとの大規模なラリーを行った。
今回は、パレスチナ人家族を襲撃したことと、ゲイ・パレードに斬り込んで6人を刺すという2つの事件が続けて発生していた。その双方とも過激なユダヤ教徒によるものだった。
群衆は、「直ちに平和を」と掲げたプラカードを掲げている。中には「入植地が暴力を呼ぶ」「入植地がイスラエルを破壊する」といった西岸地区を開拓する入植者たちへの攻撃的なプラカードもある。ゲイに対する偏見に抗議するプラカードもある。
ラリーではステージが設置され、被害者家族の兄ナセル・ダワブシェさんが、「暴力に賛成していない家族が静かに寝ているところ、焼き殺された。ネタニヤフ首相は遺憾と悔やみを述べたが、私たちがほしいのは治安だ。」ともう帰って来ない家族たちへの深い悲しみを述べた。
テルアビブでは、左派労働党のヘルツォグ党首や、メレツ党首なども、「暴力に反対する」とするコメントをそれぞれが述べた。
今回は、パレスチナ人への暴力だけでなく、ゲイの人々に対する暴力も問題になっている。テルアビブのメイール広場では、特にゲイ・パレードに対する暴力に集中して反対するラリーも行われた。
メイール広場では、ペレス元大統領が、「このような地獄のさたになったことが信じられない。これは右派あと左派の分裂ではない。良心のある者とない者との衝突である。」と語った。
2)エルサレム
暴動がすぐ近くで発生し、ゲイパレードでの事件が発生したエルサレムでは、パレスチナ人への暴力に反対するとともに、虹色の旗を掲げ、「憎しみは殺し、愛は勝利する。」といったゲイ関係の訴えもめだった。
エルサレムでのラリーでは、リブリン大統領は次のように語った。
「金曜日に、被害者家族に会った。(昨年の3人のユダヤ人少年がテロで殺害された事件)など、様々なテロの苦しみを知っている国でありながら、このような(加害者になる)事件が発生したことについて、その恐ろしさにただただ恥じるばかりだった。
暴力の炎、憎しみの炎、間違った炎が、イスラエルに広がろうとしている。トーラー、律法、そして道徳、イスラエルへの愛の名のもとで流血になった。
イスラエル市民の皆さん、イスラエルは、ユダヤの国で民主国家。民主国家でユダヤの国である。今日、目覚めなければならない。私たちは熱心党ではない。弱いものいじめをするのではない。無法な国になってはならない。」
3)ハイファ
ハイファでは、約500人がラリーに参加。ハイファでは、むしろ右派系の政府を批判する声がめだった。「これは国が支援するテロだ」「ホモ嫌悪と人種差別は同じ種類の暴力だ。」と訴えた。
アラブ人とユダヤ人が共存するハイファでは、パレスチナ人の旗を持ったアラブ人たちが「占領をやめよ」と若干ずれたプラカードをふりかざしていた。
ラリーに参加したハイファ市長は「ハイファは、寛容な町だが、こうした差別は根こそぎにしていかなければならない。」と語った。
<イスラエルの新しい時代>
イスラエルという国は、シオニズムによって建国された。しかし、その後67年が経過し、建国当初には想像もつかなかったほど多様な国になっている。国内で生まれ育ったアラブ人もいる。この人々はアラブ人だがイスラエル人なのである。
そうした中、ユダヤ人が2000年たってイスラエルの地に戻って来たことを歌う国歌ハティクバがもう時代遅れだという論議があがっている。現代イスラエル社会には、シオニズムに同意しない市民も多くいるからである。
この論議は、あるアラブ人が裁判官に任命されるにあたり、ハティクバを歌う事を拒否したため、裁判官になれなかったことから始まった。
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一方で、神殿の丘に第三神殿を建てようとする、宗教シオニストたちの数は増え、その活動も活発化している。すでに第三神殿の設計図まで発表しているのである。
迫害によって、その思いがより強化されるのが、人間の心理である。今回の過激派宗教シオニストのユダヤ人の暴力行為による反動で、ゲイや左派的な考えの者はさらにその考えを主張するようになるだろう。
一方で、社会から疎外されればされるほど、宗教シオニストの熱心もさらに強化され、右派であっても”生温い”政府に対する不信と反抗も高まると思われる。
こうした時代にあって、クリスチャンのシオニストたちを、イスラエル社会にとっての迷惑と見るユダヤ人が増えて来ていることは知っておくべきである。
「イスラエルを愛するクリスチャン」は、もう決して珍しい事ではない。そうした右派支持のクリスチャンに対し、左派のユダヤ人は嫌悪を示し、右派たちは賢く利用するか、一般的には物笑いにされるかである。
イスラエル社会は変化が早い。10年前のイスラエルとはまったく違って来ている。イスラエルに対する支持は、時と場合、相手をよく見極めて、賢く表現しなければならないと思う今日このごろである。