毎年この時期には、ニューヨークの国連本部で、総会が行われ、各国首脳が演説を行う。今年も、北朝鮮問題、イラン核問題、シリア問題、ロヒンギャ問題、地球温暖化による異常気象など、ますます議題は満載である。
もっとも注目は、トランプ大統領で、19日の総会初日に初演説の予定。ネタニヤフ首相も19日。アッバス議長は水曜となっている。
<ネタニヤフ首相の論点はイラン>
弾道ミサイルに水爆の実験までしている北朝鮮に対して、国際社会は効果的な対処をとることができていない。これで危機感を募らせているのがイスラエルである。
2001年の同時多発テロのときに、ブッシュ元大統領は、イランと北朝鮮は悪の枢軸と呼んだ。まさにその通りで、北朝鮮が行っている核開発は、そのままイランのものになるだろう。2015年に、イランが国際社会と合意した核開発保留の期限が過ぎれば、イランもすぐに核保有国になるだろう。
また、シリアで、ISISが領地を失うに連れて、そこにヒズボラや、シリア政府勢力が入り込み、そこにイランの革命軍が入ってくることへの懸念も訴えるとみられる。
ネタニヤフ首相は、演説でこれらの点を強調し、国際社会に、2015年のイランとの合意を破棄するよう訴えるものと思われる。
しかし、実際には、イスラエルとは同盟関係にあるアメリカ、イスラエル寄りと言われるトランプ大統領ですら、いったん締結されたこの合意から抜けることは、国際法に照らしても、不可能とみられる。
そこで、イスラエルが狙うとすれば、できるだけ、イランに関するアメリカの危機感をあおって、イランへの査察を強化するよう、IAEAに圧力をかけてもらうこと。また、中東で唯一民主主義のイスラエルの軍備を増強してもらうなどが、実質的な目標地点になるとも言われている。
<ネタニヤフ首相とトランプ大統領会談(今年3回目)>
演説に先立ち、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領と18日、直接会談を行った。ネタニヤフ首相は、上記、イランの核問題に関する合意をアメリカには放棄してほしいということ、また、中東、特にシリアにおいてイランが勢力を拡大しており、イスラエルの北部国境が緊張していることへの懸念を伝えた。
パレスチナ問題の解決については、トランプ大統領と同様に、アラブ諸国との和平と同時進行になるとみていると伝えた。トランプ大統領は、後日、アッバス議長とも会談予定である。
ネタニヤフ首相は、のちにトランプ大統領との会談では、両国の結束を確認でき、満足できるものだったとツィートしている。