最高裁権限を制限する諸法の可決進む:政府の招集に応じる予備役兵57%まで減少 2023.3.23

The Knesset Plenum (Photo: Alex Kolomoisky)

司法制度改革法案が次々に出されて、国内からの激しいデモも続いているが、政府はあくまでも方針を変える様子はない。4月5日を前に、1回目の審議を可決で通過した法案について、2回目3回目の審議が始まっており、最終的に可決されて法律となるケースがで始めた。

民主主義の崩壊の様相になりはじめたとも言える様子から、イスラエル軍の招集に応じないという形で政府に反対の意思表示をする予備役兵たちが予想を超えて急増している。

最高裁権限弱体化:政府にふさわしくない人物を却下する権限失う

1)最高裁は首相に退陣を命じられなくなる法律:実質ネタニヤフ首相保護

GPO

強硬右派のネタニヤフ政権。司法制度改革で、最高裁の権限を著しく弱体化する法案を次々に打ち出している。そうした中、これまでに国会での審議後に行われた1回目の採択で可決となっていた法案の2回目、3回目が始まった。

その中で、国会は、最高裁が、首相を不適格として辞任を命じる権限をなくす法案について、22日から23日朝にかけての夜を徹した審議を行い、白熱した議論の後、採択を2回を行い、結果賛成61、反対47でこれを可決した。

これにより、首相の休職、別の言い方では辞任にむけた動きは、最高裁の権限ではなく、国会4分の3(90人)の賛成で決まるとされる。

ネタニヤフ首相は現在、汚職で起訴されている立場にあり、ミアラ司法長官は辞任を要求する可能性もあるとみられていた。しかし、ネタニヤフ首相を支持するという民意も確かにあるために、これを実行することができないまま、差し止められた形である。

2)最高裁の判断を却下して前科者を閣僚に戻す法:アリエ・デリ氏の閣僚復帰を実現

これに続いて、審議の2回目、3回目が行われるのが、同じく汚職で刑務所にまで入った、ユダヤ教シャス党のアリエ・デリ氏の閣僚復帰を実現する法案である。デリ氏は、政権の中で内務相、保健相に任じられていたが、最高裁が、ふさわしい人材ではないとして、これを却下されていた。

次に審議される法案が通れば、デリ氏は、最高裁からの却下にもかかわらず、大臣職に戻ることが可能になる。

www.timesofisrael.com/knesset-passes-law-shielding-netanyahu-from-recusal-in-61-47-final-vote/

司法制度改革法案の中心事項・最高裁裁判官に関する法案:来週2日に2回目3回目審議へ

最高裁裁判官の任命に政府の意向が反映する形に変更する法案は、1週間前に1回目可決が終わっている。この法案は、まさしく司法制度改革の中心的な法案で、裁判官を決めるのが、実質的にはその時の政府政権ということになる法案である。

政府は、この法案の2回目3回目採択は、来週4月2日、過越休暇入りの3日前に行うと発表した。上記2項目と同様、国会では、与党連立が過半数を確保しているので、離反者が相当でないことには、この法案も可決してしまう可能性が高い。

www.timesofisrael.com/knesset-panel-to-resume-vote-on-reservations-to-judicial-appointments-bill-on-sunday/

まさに、イスラエルが独裁のような国に変わるのではないかとの懸念が高まる様相である。この週末、また日曜にかけて、相当大きなデモになると予想される。

Israeli reserve soldiers, veterans and activists rally outside the Supreme Court in Jerusalem February 10, 2023. (Times of Israel)

また、これに反発して招集に応じない予備役兵が増えていることはすでにお伝えしてきたが、以下の記事によると、通常なら招集されたら90%応じるところ、現在57%にとどまっているという。

予想では78%とみられていたため、予想をはるかに超えて、従軍しない予備役が増えていることを表している。

予備役というのは、すでに義務の兵役を終えたベテランたちで、将校レベルの人が多い。今敵に、攻め込まれたらどうするのか。この政治的分断が、だんだん深刻な事態になりはじめているようである。

www.timesofisrael.com/as-more-reservists-refuse-to-serve-idf-said-seeing-drop-in-troops-reporting-for-duty/

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。