ウクライナでは、今、国外に脱出したウクライナ人たち数十万人が、ウクライナに帰国しているとみられている。しかし、悲惨な破壊状況とともに、ロシア軍の執拗な攻撃で停電も続いている。
ウクライナでは、ユダヤ教超正統派の中でも、離散したユダヤ人コミュニティに重荷を持つハバッド派が、90ヶ所にラビを派遣して、ユダヤ人3万人への支援活動を続けている。コミュニティから離れて暮らすユダヤ人たちに、過越しに必要なものを配布した。
また、まだ攻撃が続いていたり、コミュニティが離散してしまって、過越をできない地域のユダヤ人たちのために、シナゴーグを解放し、セデルの夜を共に過ごすことができるようにしたとのこと。しかし、通常のセデルが夜遅くまで続くところ、ウクライナでは夜9時半ごろには終わっていたようである。
Times of Israelによると、激戦地となったウクライナ東部、ハリコフでは、集まってのセデルが不可能であるため、ユダヤ人数十人が、キエフに来て、そこでのセデルに参加したという。
キエフのラビ・モスコヴィッツは、「出エジプトの様子は、ウクライナと重なる。私たちはこの戦争を終わらせ、戦争から脱出しなければならない。」と語った。
ウクライナでは、戦場で壮絶な経験をしている兵士たちもおり、ウクライナ人たちのトラウマ、心へのダメージが、懸念されている。
イスラエル人のラビ・グリツベスカヤは、いわゆるキリスト教宣教師のように、イスラエルから現地に赴いて、ユダヤ人の例祭開催の手伝いをしたり、イスラエルからオンラインで、子供たちのユダヤ教教育を行なっている。
ラビ・グリツベスカヤは、ウクライナ人にとって、過越はリアルに自分達の経験と重なってくる。今年は、特に過去の出エジプトから、トラウマからの回復ということを学べるかどうかだと語っている。
<ロシアとイランの攻撃から守られたマッツア(種無しパン)工場>
ウクライナのドニプロには、最大のマッツァ工場がある。マッツァとは、ユダヤ人たちが7日間食べるようにと命じられている種無しパン(イーストを使わず、膨らんでないクラッカーのようなパン)のことである。過越を守るユダヤ人にとっては、なくてはならない食べ物である。
そのマッツアを供給する最大の工場が、ウクライナ東南部、原発があり、激戦地でもあったザポリージャに近い、ドニプロにある。先週水曜午後10時、この地域にロシアとイラン製の自爆ドローンによる攻撃があった。ほとんどは撃墜されたが、一機が、この工場に激突し、工場が燃え始めた。
この時点でマッツア製造完了していた数百キロのマッツアが工場にあったため、燃えてしまう前に、急ぎ運び出す作業を始めた。しかし幸い、消防が火災を鎮火して、工場は守られた。その後も稼働を続け、ウクライナ全国の5万世帯にマッツアを提供できているとのこと。
キエフにあるマッツア工場は、停電の影響を大きく受けて生産が低下していたが、今年は、発電機を購入したことで、マッツアの生産が行われている。しかし、通常なら、250トン製造するところ、100トンにとどまっているいるとのこと。