過越の祭り2023:神殿の丘暴動・ガザからミサイル・西岸地区でも衝突で治安部隊に休暇なし 2023.4.6

ネタニヤフ首相が4日にIDF関係者と行なった過越のセデル Kobi Gideon (GPO)

イスラエルと全世界で過越の祭りはじまる

イスラエル、また全世界のユダヤ人たちは、それぞれの地で、昨夜5日日没から、過越の祭りの特別な夕食、セデルを祝った。イスラエルでも家族親族が集まって、セデルを祝っている。

イスラエルでは、国会や官公庁、大手企業、学校などでは、この日から1週間の大型連休になる。大きなホテルでは、ダイニングでセデルを提供し、そのまま1週間、滞在してゆっくりのんびりする人もいる。海外にいる家族の元へ行ったり、この大型連休を使って、海外旅行に出る人も多い。

政府は、世界では反ユダヤ主義の高まりだけでなく、イランとの対立がエスカレートしており、海外で誘拐などの危険性があると警告しているが、そんなことで怯えるイスラエル人ではない。100万を超える人が出国したもようである。

神戸シナゴーグでのセデルテーブル

日本でも、東京、神戸のシナゴーグが、在日ユダヤ人とその家族、また観光客を招いてのセデルを実施した。神戸では、ラビの親族がイスラエルから来ていた他、イスラエルからの観光客や、在日ユダヤ人とその家族、友人など、250人が集まってのセデルであった。今年も、イスラエルに重荷のあるクリスチャンたち8人が、ごったがえすシナゴーグの中で、給仕のボランティアを行なった。

イスラエルでは、ネタニヤフ首相が、過越の休暇に入る前日の4日に、治安関係者とともに、前過越イベントを行なった。

お伝えしているように、イスラエルでは、ネタニヤフ首相が、ガラント防衛相を解任し、その後どうするのかを決めないまま、ガラント防衛相がなんとなく、そのままそのポジションを続けているという、非常に微妙な立場に立たされている。

この4日に行われた治安関係者の前過越イベントでは、ネタニヤフ首相とガラント防衛相が並んでいたことが注目された。

この時にもネタニヤフ首相は、ガラント防衛相の立場について言及することはなかったとおいう。こうした中で、イスラエルの治安維持は非常に難しい状態に直面しているということである。

*過越の祭り

聖書には、かつてイスラエル人がエジプトの奴隷となっていた時、その父祖の神に助けを求めたところ、彼らの神、主がモーセを遣わして、彼らをその奴隷から救出したことが書かれている。神は、エジプトの王ファラオが、イスラエルの民を、エジプトから解放するよう、エジプトに10の災いを与えて、ついにはイスラエルの民を解放させたと書かれている。映画「十戒」で有名である。

そうして、エジプトから脱出するにあたり、パンを準備する時間が十分になかったことから、まだ膨らんでないパン、種無しのパンを持って出たのであった。

過越のセデルではこの時の10の災いと、彼らを救い出した神の愛を象徴する食べ物を種無しパンとともに食べながら、この時のことをともに覚える。そうして、彼らが直面している現代の危機を乗り越えることをも覚える時となる。    出エジプト記12章

神殿の丘他で暴動・パレスチナ人350人逮捕

4日夜、数十人のマスクをしたパレスチナ人の若者たちが、神殿の丘にあるアルアクサモスクでの祈りの後、石や火炎瓶などの武器を持った状態で、ドアを閉じて立て籠った。イスラム教徒が、モスクに泊まるのが許されているのは、ラマダン最後の10日間だけなので、違法行為にあたる。

立て篭もりの目的は、5日から始まるユダヤ教の過越の祭りに合わせて、神殿の丘へ上がって、そこで子羊の犠牲をささげようとする強硬右派のユダヤ人に対抗しようとしていたとみられる。政府はこの過激右派たちの計画については、禁止している。

警察(国境警備隊)は、数時間かけて、モスクの扉を開けるよう指示したが、これに応じなかったため、モスク内に突入した。パレスチナ人たちは、石や火炎瓶などで抵抗した。しかし、警察は350人を逮捕して、これを取り押さえた。

www.timesofisrael.com/air-force-strikes-in-gaza-after-rocket-fire-350-arrested-in-al-aqsa-clashes/

モスク内部へ、イスラエルの治安部隊が突入するということは、イスラム教徒にとっては、戦いを正当化するいい口実になる。ガザ国境では、パレスチナ人たちが、タイヤを燃やすなどの暴動に出、ガザからイスラエル南部へのミサイル16発が発射された。

国内では、北部アラブ人地区ウム・アル・ファハムなど服数のアラブ人村で、若者たちの暴動になった。この時、未成年の若者5人を逮捕した。

ガザからのミサイル16発:ガザへ報復攻撃

5日夜明け前、神殿の丘で暴動になる中、朝7時、ガザからイスラエル南部に向けてミサイルが、16発発射された。8発は、アイアンドーム迎撃ミサイルが撃墜したが、1発は、イスラエル南部、スデロットの工場に着弾した。工場への被害はあったが、人的被害はなかった。ガザからは、さらに4発が撃ち込まれたが、どれも空き地に着弾した。

神殿の丘での暴動が発生する中、イスラエル空軍が、ガザへの空爆を実施した。イスラエル南部へのミサイルは、イスラム聖戦によるものともられているが、イスラエルが攻撃したのは、ガザを支配するハマスの武器庫などの拠点であった。ガザからの問題は、すべてその支配者ハマスの責任であるというスタンスからである。

ヘブロンで衝突:イスラエル兵1人負傷

エルサレム神殿の丘や、ガザ周辺で上記のような事態になる中、西岸地区ではヘブロンで、パレスチナ人とイスラエル軍の間で銃撃戦となった。イスラエル兵1人が負傷した。

なお、イスラエルは、過越の祭り期間の治安維持のため、西岸地区とガザ地区との国境を5日5時から8日まで閉鎖される。過越最後の11から12日にも閉鎖が予定されている。

世界の反応:国連安保理とアラブ同盟が、緊急会議

モスクへ警察が踏み込んだことから、ヨルダンはじめアラブ世界からは、大きな非難が出ている。特に神殿の丘へ突入したイスラエル治安部隊が、パレスチナ人をなぐる様子も報じられ、問題となっている。

6日、国連安保理が、イスラエル問題で召集されている他、UAEの呼びかけでアラブ同盟も緊急会議を開催している。

ネタニヤフ政権の極右政党のベン・グビル氏が、警察最高位という立場で堂々と神殿の丘入りを決行したことから始まり、この3ヶ月の間で、国連安保理が、パレスチナ問題を議論するのは、今回で4回目になる。

こうした点からも、強硬な右派政権が、イスラエルのあらゆる側面において被害を及ぼしているとの避難が出ている。

しかし、その国連安保理だが、順番から、現在、ロシアがその議長を務めることになっており、機能不全との指摘ももはやジョークとも言われている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。