怒るエチオピア系移民 2015.5.2

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4652484,00.html

木曜夜、エチオピア系移民(ユダヤ人ということ)ら約1000人が、エルサレム市内で、道路や路面電車の通行を妨害するなどして、警察の人種差別に抗議するデモを行った。

警察は前もってエルサレム市内のバスの経路を広範囲にわたって変えるなど、対策を講じていたが、やがてデモは、警察との暴力的な衝突となり、警察官3人を含む15人が負傷した。

エチオピア系の人々は、エルサレムでのデモだけでは効果があがらなかったとして、日曜には、同様のデモをテルアビブで行うことになっているという。

デモのきっかけは、先週、ベエルシェバで、私服の移民捜査官が、2年前にエチオピアから移住したワラ・バラチさんを呼び止めた時に、暴力を振るったという事件である。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4652339,00.html

これについて、警察は、バラチさんが、先に暴力を振るったと主張している。

ベエルシェバには、アフリカやアジアからの不法滞在者が少なくない。同じ黒人のエチオピア人は、ユダヤ人として合法的に移住していても、違法滞在者と間違われる事も少なくない。

移民局は、不法滞在者を摘発するため、私服で潜伏しているようである。バラチさんによると、呼び止められたとき、だれが呼び止めたのかわからなかったので、そのまま(目的地だった)労働斡旋所へ逃げ込んだという。そこへ押さえつけられて殴られ、車に押し込まれたと主張している。この時に数カ所、負傷している。

記者も、一度ベエルシェバで、移民捜査官に呼び止められたことがある。私服なので、捜査官とはわからず、「変な人」と思って、無視してそそくさと通り過ぎようとした。すると大声で「待て!」と怒鳴られ、あわてて立ち止まった。バラチさんも、最初は捜査官とは思わなかったのかもしれない。

<イスラエルとエチオピア系ユダヤ人>

数日前に、イスラエルを「成熟した民主主義の国」との記事を書いたところでこのような事件が発生し、読者も混乱されたかもしれない。

イスラエルは確かに、高度に民主的な国である。理論も制度も、民主的であることは間違いない。しかし、実際には、有色人種が下にみられるという、世界共通の白人優位の傾向までは、変えられないのである。同じユダヤ人であってもである。

それに加えて有色人種は、貧しいという傾向があり、教育も不十分であったり、そこから犯罪も発生する。すると人種差別に加えて、恐れからくる敬遠も出て来る。それはイスラエルにもある。

しかし、それでも、イスラエルは、他国に比べると、かなり民主的であると筆者は感じている。昨年のミス・イスラエルは、エチオピア系の女性だった。だいたい、中東にあって、こういうデモを行って、殺されないという事自体、民主主義だということである。

エチオピア系移民者は、エチオピア政府からの激しい迫害の中、1970年代から、イスラエル政府によって、奇跡的にイスラエルへ移住できた人々である。原始的な生活しか知らない彼らを教育し、近代社会にとけ込めるように助けたのがイスラエルである。

エチオピア系の人々は、通常は温和で、静かな人々である。しかし、移住から20年が過ぎ、エチオピア本国の本当の厳しさを知らない、イスラエル生まれの子供たちが、大人になってきた。そろそろイスラエル化しはじめたというところか。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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