国際司法裁判所:即時停戦は命じず「ジェノサイド」の可能性は否定せず 2024.1.27

ドナヒュー裁判長Jan. 26, 2024. (AP Photo/Patrick Post)

国際司法裁判所がジェノサイド問題で暫定措置発表

国際司法裁判所(ICJ)では、南アフリカが、イスラエルがガザでジェノサイド(民族大量虐殺)を行っているとして、即時停戦を命じるよう訴えたことについて、1月11-12日に公聴会が行われていた。

これについて、26日、15人の判事(1人はイスラエル人判事)は、イスラエルがガザでパレスチナ人に対してジェノサイド(大量虐殺)を行っていると訴えたことについて、15対2で、「妥当性」がある、つまり、あり得ると認めた。

その上で、「イスラエルはジェノサイドにならないよう、最善の措置を講じなければならない。」とし、イスラエルに対し、次の項目を履行することを求め、1か月後に状況を判断するという暫定措置を発表した。イスラエルに課された内容は以下の通り。

①イスラエル軍はジェノサイド(大量虐殺)をしないと保証すること、②イスラエル政府内の閣僚による大量虐殺を先導するとも取れる発言に処罰を与えてこれを阻止すること、③ガザの厳しい人道状況を改善する緊急措置を講じること、④ジェノサイドに関する証拠隠滅をしないこと、⑤これらについてひと月後に報告すること。

しかし、イスラエルが最も懸念していた、即時停戦を命じられることはなかった。

即時停戦への圧力にはならなかったが、ジェノサイドの可能性については肯定された形であったため、南アフリカはじめ、ハマス、パレスチナ自治政府、トルコ、イラン、サウジアラビアはじめ、アラブ諸国はこれを歓迎する声明を出した。

以下はICJの暫定措置を受けて、喜ぶ南アフリカ政府の様子。「パレスチナに解放を」と叫んでいる。

イスラエルに対する影響

イスラエルにとっては、最も懸念していた、即時停戦すべきとの示唆は含まれていなかったので、ガザでの戦闘は継続できる見込みとなった。この点については、概ね、安堵の様子で伝えられていた。

またICJのジョーン・ドナヒュー裁判長は、10月7日の虐殺に言及するとともに、今もガザに人質がいることを挙げ、即時全員釈放する必要があると述べたことから、ハマスに対するイスラエルの自衛権を認めたとも取れる形であった。

しかし、イスラエルがジェノサイドを行っている可能性については否定せず、具体的な対処まで命じて、1か月後に、再びイスラエルに対して厳しい判決を出す可能性も残したことについては、屈辱であるとともに、これから国際社会におけるイスラエルのイメージは悪化を辿るのではないかとの懸念もある。

国際社会におけるジェノサイド条約は、ユダヤ人に対して行われたホロコーストを土台に設立されたものである。そのユダヤ人の国であるイスラエルが、今、ジェノサイドを行っている可能性があると言われた状態で、今後、審査され続けていくことになったのである。

これは、イスラエルにとっては、あまりにも受け入れ難い状況であるといえる。皮肉にも、この暫定措置が発表されたのは、国際ホロコースト記念日の前日であった。

www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/192/192-20240126-ord-01-00-en.pdf

www.timesofisrael.com/eu-urges-implementation-of-icj-ruling-s-africa-hamas-turkey-welcome-decision/

今後の動き

ホロコーストでイスラエルを援護する必要性を感じているのか、ドイツは、南アフリカの訴えに対抗する形で、国際司法裁判所に、10月7日の虐殺についてを提示し、イスラエルの自衛権と人質解放の必要性を訴えるとみられている。

また、来週、国連安保理の会議が行われる見通しとなっている。国際司法裁判所の指示に実効力はないので、安保理がそれを付加しようとする動きである。提案はアルジェリア。しかし、アメリカは、イスラエルがジェノサイドをしているとは認めていないので、拒否権を発動するとみられ、何かが決まるかどうかは不明である。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。